それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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彼女は成長する、その成長の先は誰もわからない


世界を見通し始める少女

修復と改修が終わった新生ナデシコにて、本日より業務を再開しようというタイミングで来たヘリアンからの通信、何かまた起きたのか、と繋ぐことにするユノとオモイカネ。

 

映像が開けば先ずヘリアンが今ユノが居る場所を直ぐに気付き、ふむと軽く唸ってから。

 

《確認だがそこはナデシコ、で合ってるか?》

 

「はい、すみません、一週間のつもりだったのですが私が少し無理言ったせいで伸びてしまいましたが、本日より運転を再開、今から監視の任に着こうかと思ってたのですが」

 

「もしかして何か問題でも?あ、分かった、上層部が約束と違うじゃないか~って怒ってんでしょ、アイツラ本当に好き勝手に物事を言うよねぇ」

 

オモイカネの何の遠慮もない物言いにユノは流石にマズイってと焦るのだがヘリアンは今は私しか居ないから問題ないと伝えてから、それはそれで問題ないのかなぁと思いながらも彼女の話を聞くために体制を直す。

 

聞けばどうやら上層部云々ではないらしい、システム面の大幅な改修で時間がかかることはどうやらペルシカが説明していたらしく向こうも納得しているとかなんとか、では要件はとなり漸く本題に入り、その内容を聞けば、だとすればと副官であるナガンも呼び出され、彼女にも再度説明、それからオモイカネが

 

「D08の新任が適応障害、ねぇ……新人に無理言ったんじゃないよね上層部」

 

《まぁな、前任であったタカマチ指揮官が優秀だったこともあり比べられ、そしてって言う流れだ。従って話はもう付いているが彼を再度前線基地の指揮官になってもらった》

 

《しかし、アヤツには家庭があるじゃろうて、子供も居る、向こうは比較的平和と言えど未だよく思ってない者たちはごまんと居るぞ、確かに指揮官として戻したいのは納得するがもし何かあれば……》

 

ナガンの懸念も確かである、言ってしまえば彼女等は特殊な存在、故にそれが人類のためになるとしても受け入れられずに排除しようという存在は嫌でも現れる。

 

向こうだってそう簡単に殺られる者たちではないと分かってはいるがそれでもナガンとしてはやっと平穏に暮らせていたものを危険地帯に再度、呼び戻すというのは過去の経験からあまり快く思ってなかったりする。

 

《あぁ、その辺りはIOPとしても理解している。だから、という訳では無いが……一つ案が出てきた》

 

「ナデシコによるD08地区の情報支援、ですね?」

 

《呵々、老人共め、せめてもの嫌がらせか。わしらが断れるはずもないと分かって言いおってからに》

 

ユノだって伊達に今日まで指揮官をしていないし、此処最近では会話から先の流れを読むという今まではしてこなかったことをヴァニラやカリーナ、人形達、または偶に他の基地とのやり取りから勉強をしていたし、自分の役目を考えれば

 

「最初にナデシコの状況を聞いたのもありますからね、流石に読めました」

 

「うわぁ、なにそれ基地の修復費を正当な方法で貰われたからってこと?最近この基地への当たり強くない?」

 

《……それに関しては済まないと思っている、我々もそろそろ行動を起こすべきだと思ってはいるがな》

 

《言うて簡単な問題でもあるまいて、まぁそれは良い、して指揮官、この件はどうする、但し無理ならば》

 

彼女が言葉を言い切る前にユノは大丈夫だと答える、その顔は強がっているわけでも見栄を張っていると言うわけでもない。

 

確かに前身のナデシコだったらS地区の監視に追加してD08もと言うのは少し難しいといったかもしれないが、今のナデシコならば

 

「問題ありません、D全体ではなくD08だけならば特に問題なく視れます、って言葉だけじゃ信頼になりませんよね。オモイカネ、D08をモニターに、領域は境界ギリギリまで設定してね」

 

《何をするつもりだ?》

 

「まぁ見ててよ、上級代行官殿。監視領域を追加、指定エリアD08……領域設定完了、監視対象は?」

 

「D08は鉄血と言うよりも人の方が厄介だね……かと言って比重は崩せないし、とりあえず『両方』をモニターへ、その後微調整していこう」

 

両方をモニターへ、その一言でヘリアンが待てと言い掛ける。唯でさえS地区の監視に彼女の脳は負担を掛けているというのにそこに更に負荷をかける真似を上官たる彼女が見逃せるはずもなかった。

 

しかし、その言葉が出る前に作業をしながらユノが口を開く

 

「大丈夫ですよヘリアンさん。今回の改修でそこも手を加えましたから、なのでエリア指定で一つ増えるくらいなら問題にもなりません、しかも自分も完全同調させましたから負担らしい負担はもう掛かってませんし、よし、ここから野盗っぽいのとかをピックアップしていけばいいかな」

 

《君は本当に、その道を選んだのか》

 

ヘリアンの声に悲しみが混ざっていた、後悔も混ざっていた、上級代行官としては彼女の選択は正しいと理解している、だが先生として彼女に様々なことを教えた身としては生徒である彼女がその選択を取ってしまったことが胸に重く伸し掛かってきた。

 

「……それが、もう後悔しない選択の一つだと思ったから取りました。それに私は私です、『ユノ・ヴァルター』なのは変わりません」

 

その気持を理解できたからユノはヘリアンに笑みを浮かべながらそう伝える、声には一切の後悔も何も混ざっていない、演技なのではとヘリアンは考えてしまうが、そうとも見えない彼女の姿に小さく、向こうにバレないように溜息を吐いてから

 

《分かった、上層部には監視はD08のみならば可能だと伝えておく、向こうにも私から伝えてはおくが、もしかしたら連絡が来るかもな》

 

《心労掛けるなヘリアン、どうじゃ、今度此処に呑みに来ぬか?中々にいい酒やツマミが揃っておるぞ》

 

《そうだな、機会があればお邪魔しよう、では失礼する……無理はするなよ、お前に何かあれば私も、何よりもペルシカも思い詰めかねんからな》

 

最後の言葉には探らずとも分かるほどに心配の色が現れておりユノもおおきく、力強く頷いてから勿論だという旨を返せばヘリアンは笑みを一つ浮かべ映像が途切れる。それから彼女たちは業務を開始する、コレまでよりも遥かに性能が上がったナデシコにより各地の鉄血の動きも手に取るように分かり、野盗などの動きもまだ不慣れ故に多少の遅れなどは出てしまうが警戒を飛ばしたりと戻ってきた慌ただしい日々が始まる。

 

所変わり、通信を終えたヘリアンは考え込むような顔をしていた、それは

 

(彼女は、どうやって人間を探知している?あれは元々鉄血だけだったという話だ、それはペルシカも奴も、アーキテクトも確認している、何から彼女はそこまでの探知を……明らかに個人の眼とナデシコ以上の物が働いているとしか思えん)

 

彼女が発揮し始めている超高速演算の産物か、と考えるがそれでも全ては説明できない、得も言えぬ違和感にヘリアンは思う。

 

(あれは、本当に鉄血だけを考えられた物なのか……?)

 

唐突なその考え、だがありえないと言えない彼女のこめかみ辺りから冷や汗が一つ流れるのであった。




IOPとしては彼女の所にこういった要請飛びそうだよなぁって。まぁほら、受けた恩は返す基地で、そうじゃなくてもユノっちは独自にやりかねないし多少はね?

それはそれとして新生ナデシコについて語ってないやんけお前!?まぁ要は全体的にスペックが跳ね上がったって事よ。

なのでぶっちゃければもう一つ地区増やされても今の彼女なら普通に捌けます、それ以上になるともう一人欲しいかなってなりますがね。

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