それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

485 / 794
ノアちゃんのカウンセリング


守る?護る?

医務長であるPPSh-41がペンライトを手に今回で5回目となる診断者であるノアにまずこれから行うことを話してから左目の視界外から点灯させたペンライトを移動させ瞳孔に光を当てて収縮を観察、それから

 

「では、次に視力検査をします、コレで右目を抑えて左目だけで見てくださいね」

 

「おう」

 

と言っても何か特別なことではなく、簡単な視力検査であり数回のやり取りで行われた後、その結果を紙に纏め、前回前々回の結果と見比べてから、ノアと向き直る。

 

対してノアは首を軽く捻りながら身体の調子を見ながら彼女の検査結果を待つのだが正直に言えばもう大丈夫だろと思っているのでぶっちゃければ退屈なのだがそれをはっきりと申し上げれば目の前の医務長からありがたく長いお説教が開幕されるので黙っておく。

 

「ふむ、もう視力は戻っているようですね」

 

「だから昨日から言ってるじゃねぇか、霞んでたり見えなかったのは初日とか翌日だけだっての」

 

「それはそうでしょうけどね、潰れた左目を再生したから大丈夫です何で言われても流石に診断も何もしないのは出来ないのよ」

 

SOCOMの言葉もノアも理解できなくはない、更に言えばその左目の再生も医療に精通してるものが行ったというのならばまだ此処まで頻繁に診断されることではなかったのかもしれないが、ノアは精通してるとは思えず、素人である彼女が行ったというのだから今回の診断回数となっている。

 

しかも初日は本当に形だけの再生だけで視力も何も無かったのでPPSh-41としても放っておけることではなかった。

 

「改めて質問しますが、現状で違和感などは無いんですね?」

 

「無いな、今だったら百発百中も狙えるくらいだな……もう大丈夫だろ?」

 

「まぁ、そうですね。診断はもう大丈夫です、が少しお話しましょうか」

 

その言葉と同時にSOCOMが二人にコーヒーを差し出す、とりあえず受け取るのだがノアとしては話ってなんだよと思いながらPPSh-41を見るのだが向こうはリラックスした様子でコーヒーを一口飲んでいるのでノアも貰ったからにはと飲んでみれば程よい甘さが口の中に広がり少し笑みが出てしまう。

 

「じゃなくてだ、話ってなんだよ」

 

「クフェアさんについてです、今回の戦いにて少し、いえ、かなり酷くメンタルが乱れました」

 

PPSh-41の予想だにしてなかった言葉に目を見開いてから、何があったんだと言いかねない勢いで立ち上がろうとした彼女を後ろに居たSOCOMがそっと肩を掴んで留める。

 

しかしノアとしては気が気でない話であり、早く続きを言えと言う視線を飛ばせば

 

「その原因は、恐らくは貴女ですよノア」

 

「……アタシ?」

 

「はい、乱れた瞬間は貴女が左目に重傷を負ったという時」

 

彼女の言う通り、ノアのその事を聞いた時の彼女は誰が見ても焦燥としており、直ぐにでも駆け出しそうになっているほどだった、それを見ていたPPSh-41はノアのあの時の戦術に関しては割と怒っている、自分を大切にしないのもそうだが、理由は早く基地に戻ってクフェアを守ろうとしてから、と云うのも聞いてしまったのもある、だって

 

「ノア、貴女は守るためにそのような手段を使ったようですが逆にあの娘を追い込んでいたんですよ」

 

「追い、込んでた……?アタシが、か?」

 

「ペーシャ、ノアちゃんだって考えてのことよ」

 

「そうでしょうけど、無意識の行動というのならば今回ばかりは劇薬が必要です。そう、貴女が重傷を負ったと言うだけであの乱れようです、もしこれが帰らぬ人、ないし意識不明の重体とかだったとしたら……」

 

間違いなく廃人になり、リセットが必要な所まで砕けたと思われます。無慈悲に、ただ医者として事実を述べるPPSh-41の言葉にノアは思わず自分の左目を抑える、コレくらいなら死なない、死なないからアイツを守れる、そんな考えで行ったあの方法で何よりも大事な人を危うく亡くすところだったと。

 

守る為の行動で逆に傷つけていたという事実が彼女を襲いそして思った。

 

「アタシは、間違ってたのか?」

 

「戦場の状況などを見れば間違いとは言えません、貴女の能力を考えれば戻ってゲーガーに手を貸せば確実なものになったでしょうからね。ですがもしクフェアさんを守る、と言うのならば自身を必要以上に傷つける手段は推奨できません」

 

「あの娘のメンタルはね、貴女以上に脆いのよ。それこそノアに少し深いくらいの依存があって維持してるくらいにはね」

 

SOCOMの言葉通り、彼女にとってノアという存在はそこまで大きくなっている、それはノア自身も気付いており、あの日、互いに好きだと伝えた時から更にそれが深まったのも感じていた。

 

だが同時に、此処最近の彼女は自分が常に側に居なくとも基地の誰かと笑い、話し、楽しげに暮らしていた、だからこそ自分よりもメンタルが脆いということに驚いてしまったと同時に気付けなかった自分が嫌になった。

 

「もし、貴女が今後も彼女を守りたいと思うのならば、それは決して彼女に身体的怪我が無いと言うだけではなく、貴女自身も無事に帰ってくることが前提にあるということを念頭に置くようにして下さい」

 

あぁと一言告げてからノアは医務室を後にし、ただ先程の事を考えながら基地の中を歩いていく、因みにPPSh-41はあの後にSOCOMから貴女のカウンセリングは本当にストレート過ぎるのよと軽く説教されてた模様。

 

(アタシはクフェアを守ろうとしてた、アイツが無事ならって思ってた、それが……間違いだった?)

 

「ノア?」

 

(あぁ、そうだな、間違いだったかもな、ははっ、何だよコレじゃアイツのこと大事にとか思ってたのに、何も考えてなかったってことじゃねぇか)

 

「……」

 

「(でもあの時あの手段を取らないでもし、クフェアに何かあったら……「ノアッ!!!!」きゃあああああ!!??」

 

どん詰まりの考え事に耽っていたノアを襲ったのはさっきから呼びかけているのに反応が全く無い事に怒ったクフェアの叫び、思わず初めて聞いたかもしれないという少女らしい悲鳴を上げながら振り向き

 

「な、何だよ」

 

「何だよじゃないです、呼んでるのに全く反応もしないから、何か考え事ですか?」

 

何でも無い、と言い掛けてからクフェアを見つめる。彼女は今こうして気にかけてくれた、だと言うのに自分は

 

気付けばポンっと手をクフェアの頭の上に乗せ、それから思わず抱き締めてしまった

 

「の、ノア!?あの、ほら、他の人見てますから、ね!?」

 

「……ごめん、アタシ馬鹿だった」

 

まだ本当の意味での守るは分からない、でもノアはその日、少しだけ理解できたものがあった、今度からは彼女の笑顔が曇らないように戦おう、と。




まるで続くような最後だけど、続くかはわからない、もしかしたら忘れた頃にこの話がまた浮上するかもしれない、つまりは

考 え て な い !!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。