それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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日溜まりと繋ぐ手の持ち主との出会い


放浪少女 キャロル・エストレーヤ

パチパチ、焚き火の音が森の中で小さく響く、その側には火の様子を見つめては弱まりそうならば枝を投げ入れたり位置を調整して、まるで火の番をしているかのようなキャロル・エストレーヤの姿。

 

彼女はまだ旅をしていた、世界を識る。何とも壮大なようで、もしかしたら難しくなくても良いのかもしれないという姉からの命題を胸に放浪をしていた彼女だが、今は一人というわけではなかった、『一人よりも三人の方が楽しいし目的が見つかるかもよ!』とキャンピングカーで自分と同じ様に、だが彼女と違って確かな目的のために旅をしていた女性二人が同行、と言うよりも

 

(半ば強引にそのキャンピングカーに連れ込まれた気がするんだが……)

 

抵抗しようと思えば出来た、がその連れ込んだ女性の不思議と嫌ではない雰囲気と、もう一人の女性が『もしかしたらさ、一人じゃ切っ掛けも探せないかもしれない、でも誰かと居ればなにか発見はあるかもね』穏やかな笑みを浮かべながら促すように言われれば無碍にも出来ずに、更に言えばS地区のとある街で出会ったお人好しの技術屋に調整されたテレポートも使える回数が残り一回となり節約もしたかったのもあり、こうして同行している。

 

最初こそ、適当な所で別れるかと思っていた彼女だが気付けば三日目、正直に言えば誰かと居るということで此処まで発見が増えるものなのかと驚いていた。

 

(やれやれ、俺も丸くなったものだ……だが、そうだな、悪くはない)

 

焚き火を見つめながらフフッと笑みを少しこぼした時、彼女の背後でガサガサと誰かが草をかき分けながら歩く音が耳に届いてガントレットを構え、警戒態勢に入るが現れた人影と声を聞いてその警戒を解く。

 

現れたのはくせっ毛と異常なまでの活発さ加減が特徴的なキャロルを自分達の旅に同行させた張本人である【ロペラ】と名乗った彼女はもう真夜中だというのに眠りもせずに火の番と見張りをしているキャロルを見ると

 

「あれ、まだ起きてたのキャロルちゃん!?」

 

「叫ぶな、森と言えど響いて野盗にバレる、それと言っただろう、俺は眠り必要がないと、ならば火の番と見張りは俺がするのが妥当だろ?」

 

彼女に見向きもせずに火の様子を見ながら枝を投入していくキャロルにロペラはむぅと何とも子供らしい反応を見せてから、あっと何かを閃いたのか悪い顔をしながら

 

「そうだけどさ、でもほら寝ないと成長しないよ?」

 

「俺はもう伸びようがないから無問題だな」

 

反撃するもキャロルの反応は変わらずにバッサリと一刀両断、自分の体は自分がよく知っているし、そもそもにして遺体であり、エアハルテンが突然変異した利便上キャロルはこれを【エテルネル】と名付けたナノマシンのお陰で全てにおいて変化を拒否してしまうので伸びようがないという現実である。

 

「……で、お前は何しに出てきた、いくら強くとも慢心は褒められんぞ」

 

「うーん、キャロルちゃんを一人にさせるのは何か悪いかなぁって」

 

「元々は一人旅だったんだ、寂しいとも思わん、寧ろロペラ、貴様は寝るべきだろう、俺と違うのだからな」

 

人間は寝なければ体調を崩しやすくなる、この世界じゃ薬だって安くはないのだからそのようなリスクは避けるべきだと伝えればそうだよねぇと納得したふうに頷き、少し考えてからキャンピングカーに戻ったのを見て聞き分けは大人だから良いのは助かるなとキャロルがまた火の番に戻ろうとした時

 

「はい、あったかいものどうぞ」

 

「寝たのではなかったのか」

 

「え、ううん、ココア淹れに行ってただけだよ?ほら、キャロルちゃん火の近くなのに手が凄く冷たかったしさ」

 

言われあの一瞬で手を触られてたことに気付かなかった自分に驚く、先程も言ったが自分の身体は遺体であり、体温調整などはオミットされている身、なので身体は常に死体のそれと変わらない温度、なので基本的には他人には触らせなかった。

 

しかし彼女はそれに触れ、だが変に勘ぐらずにこうして温かいココアを用意してくれた

 

「何も、思わなかったのか」

 

「?」

 

「いや、すまん、助かる」

 

ニコニコ笑顔で小首を傾げられればキャロルも強くは出れずに大人しくココアを受け取り一口、程よい甘さと少々熱いかなと言う熱が舌と口に広がった所で、もしかしたら冷ますという動作を挟めば良かったかもしれんと後悔する。

 

これは何かしら思われるかと思ったのだがロペラは

 

「どう?美味しい?」

 

「え、あぁ、美味いよ……ありがとう」

 

「どーいたしまして」

 

ニヒヒっと言う効果音がしそうな笑顔を見せるロペラ、他人の笑顔というのは此処まで心を晴れやかにするのか、それともこれは彼女特有の能力なのか、それは分からないがともかくキャロルは彼女の笑顔を見てから

 

「だがあまり長く起きていると【フトゥーロ】に……あぁ、いや、手遅れだなこれは」

 

「へ?フトゥーロがどうしたって?」

 

「ロペラァ~?」

 

あっやっべ、ロペラが後ろを振り向いてみれば彼女のパートナーとも言える女性、後頭部に大きなリボンを結び大人しめな印象を持ちつつも実は芯の強さが凄いとロペラが語る【フトゥーロ】の姿、どうやら勝手に起きてキャンピングカーを抜け出したことにお冠のようだ。

 

こうなっては唯でさえ彼女に弱いロペラに勝ち目というものはない、だがどうやらお冠なのは彼女にだけではなく

 

「それで、キャロルちゃんも何で起きてるのかな?」

 

「む、見張りと火の番だ、人間も野生動物も、鉄血も早期に気づければどうとでもなるからな」

 

「でも周りにトラップワイヤー張ってるなら少しは寝ても大丈夫じゃ?」

 

どうやらこの時間になっても未だ眠る様子のないキャロルを説得しに来たのもあるらしい、だがキャロルとしては何故リスクを取ってまで寝る必要があるのだというのが本音であり、更に言えば

 

「一応は仮眠している、ここで、だが」

 

「仮眠って……ロペラもなにか言ってあげてよ」

 

「さっき言ったけどバッサリ斬られたんだよ~」

 

フトゥーロに泣き付くロペラ、パートナーのその姿にやれやれと思いつつ、ほぼ毎日言っても結局はキャロルは寝ないと言う経験から

 

「無理だけはしないでくださいね」

 

「心得た、じゃあ朝な」

 

「おやすみ~ってあれ、これつい数時間前も言わなかったっけ?」

 

ヤレヤレ締まらんやつだと笑いながら彼女等を見送り、その火の番は何も起きずに翌日、キャロルは、とある地区の街にて

 

「もう少し居ても良いんだよ?」

 

「そうしたいがな、お前らにはお前らの目的がある、俺にはまだそれがないんだ、だからこそ色んな街を見て、人を見て、景色を見て、考えたいのだ……寂しいがな、コレもまた旅というものだろう」

 

彼女はここで二人と別れることを決めた、言葉の通り寂しいとは思っている、だがそれ以上にコレ以上に一緒に居てはきっと自分は甘えてしまうと思った、それに自分にはゴールの場所は決めてあるのだ、だから結局は別れとなる、ならば早いほうが良いだろうというのもあった。

 

「そっか……うん、キャロルちゃんが決めたならコレ以上は何も言わない、だから元気でね、縁があったらまた会おうよ」

 

「あぁ、お前らも気を付けてな、次会う時は仏とか流石に嫌だからな」

 

「そっちもね!大丈夫、困った時はこう言うんだよ【へいき、へっちゃら】ってね!」

 

「お前のその前向きは習おうとしよう」

 

あれ、それ以外はとやっぱり最後は締まらないロペラにフトゥーロとキャロルは軽く笑い合い、そして二人が乗りフトゥーロが運転するキャンピングカーは走り去っていった、それを見えなくなるまで見送ってから、外套を靡かせて

 

「さぁ、次はどこに向かって歩き、何を見ようか」

 

彼女の旅はまだ続く、だがそろそろ彼女は決めるのかもしれない、その時がゴール地点に向かう日である。




え、なんか見覚えの有りそうなキャラだって?知らんな、大丈夫ぽっと出のこの話限りのゲストキャラやもん!!

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