それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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という訳でプレゼント準備をしようぜ


クリスマスが今年もやってくる

そろそろ例の日が近づいているからなのか、いや、そもそもにしてこのご時世でこうやって季節ごとの祝い事を街総出でやろうと言える街がどのくらいあるかは不明だが少なくともこの街では割と普通に行われているので気にしないでおこう。

 

ともかく、その日が一週間とちょっとまで迫っているので街も段々とその装飾に染まりつつある街の雑貨屋に

 

「……」

 

割と真剣な眼差しで商品を物色している少女の姿あり、と書いてみたが要はノアである。

 

なぜ彼女が一人でこの場にいるのか、それは数時間前の基地に話は戻る、彼女とクフェアは何時ものように基地にて二人でフラフラと会話をしながら歩いている時に毎度おなじみの季節イベントの告知をしている掲示板に張ってあった一枚のプリント。

 

「何だこの太った髭生やしたおっさん」

 

「サンタクロースだよ、そっか、そろそろクリスマスだったね」

 

初めて聞く単語が2つも出て何だそりゃとなるノアにクフェアは丁寧に、そして分かりやすく説明をしていくのだがその時の彼女の表情は楽しげであり、特に彼女がサンタクロースについて話した時はノアのキラキラとし始める眼に思わず

 

「ノアって、結構こういうの好きだったりしますか?」

 

「え?あぁ、どうなんだろ、でもそのサンタっておっさんはスゲーやつだってのは分かる、だって無償で、しかも良い子だって分かるやつだけに欲しいのをプレゼントするってなんかこう、かっこいいじゃん?」

 

ごめん、カッコいいって言う感覚はちょっと分からないかなと普段通りの笑顔を貼り付けたままちょっと困惑したらしい。そんな感じに説明を終えた後、ふとクフェアはクリスマスといえばプレゼントを渡すと自分で言ってから気づいたことを聞いてみる。

 

「ねぇ、ノアはなにか欲しい物ある?」

 

「欲しい物、か……うーん、特には浮かばねぇかな、欲しいと思ったものはだいたい今あるし」

 

『あるし』の部分でちらっとクフェアの事を見たことを彼女は見逃さなかったし、見逃さなかったからこそちょっと顔を赤くした、しかしそれでは当日困るんですよねと改めて聞いてみても

 

「いや、その、アタシってコレ以上欲張っちゃいけねぇ気がしてさ……今もほら、すげー幸せだし」

 

「もう、貴女って意外と遠慮しやすい人ですよね、こういう日は良いんですよ、ほら、何かありません?」

 

「……つってもなぁ、寧ろオメェは無いのかよ、欲しいもん」

 

え?と固まる彼女、この質問は想定してはいたのだがまさかこの形で切り替えされるとは思っていなかったらしい、更に言えば彼女もノアと似たりよったりだったりするので

 

「いや、その……私もほら、今が幸せで、充実してますし」

 

「オメェもかよ、ん~、じゃああれだ、互いに適当に買ってきてそれを渡すってのはどうだ、欲しいもんはねぇけどさ、クフェアからのプレゼントなら何でも嬉しいには違いないし」

 

刹那、クフェアの時だけが止まった。自分でそんな事を言って若干恥ずかしかったのか頬を赤らめ、だがいつか見たあの少女とも少年とも言える笑顔で伝えてきたノアに彼女は胸がキュッとするのが分かった、どうしたこの人はこんなにも人をときめかすのかと。

 

言葉がうまく紡ぎ出せない、だが何か言わないと駄目なのかと落ち込ませてしまうと考え固まった口を無理やり動かし、出てきた言葉は

 

「じゃ、じゃあそれで行きましょう!た、たたた、楽しみにしてて下さいノア!!」

 

「お、おう、何かえらく気合入ってんな、アタシも負けてられねぇな」

 

何の勝負だよとはMG3の言葉であり、あの一瞬で吹き出してきたお砂糖空間に思わず胸を擦るのであった、と言うのが彼女がこうして雑貨屋にいる理由となる。

 

要は彼女凄く悩んでいるのだ、どうしたものか、あれも良いかもしれない、だがこっちも悪く無さそうだとウンウンと唸りながら悩むこと……

 

「お嬢ちゃん、もう1時間近く経つけど、何かあったかい?」

 

そう、入店して1時間近く、彼女はひたすらに頭を悩ましていた。と云うのも彼女はコレまでの生活で誰かに何かをプレゼントしたなんて経験がある訳もなく、故に何をどうプレゼントしたほうが良いのかと今になって気付いてこうなっている。

 

クフェアは自分が渡してくれるものなら何でも喜ぶとは言っているがだからと言って適当なものは渡せない、しかし適当じゃないものってなんだよとなればまた悩む、そのサイクルが出来上がっているのを店主である老婆は気付いていたので、いい加減助け舟を出しますかねと立ち上がり

 

「誰かにプレゼントかい?」

 

「え、あぁ、えっと……大事な人に、だ」

 

「ほぉほぉ、最近の子は進んでるねぇ、じゃああれだ、アクセサリーとかどうだい?」

 

そうして案内したのはクリスマス用にと一箇所に集められた様々なアクセサリーが並んでいる場所、どれも手が込んでおり、お値段はピンきりではあるが、たとえ安いものでも言われなきゃそうとは思えないクオリティを誇っていた。

 

「おぉ、これって婆さんが?」

 

「私は並べてるだけさ、この街に居るだろ、好々爺してるのが、あの人がどこから仕入れては流してくるんだよ、まぁヤバい品じゃないのは確かさ、そこは安心しな」

 

いや、それ聞かされてアタシにどうしろと、と思わず冷や汗が流れたのを何とか隠しつつ、気を取り直してアクセサリーを眺めてみる、派手なものもあるがこれは似合わない、家事をするとなるとあまり邪魔になるようなジャラジャラしたのも除外、と言う感じに見ていると、ふと彼女の視線が止まった。

 

それはシンプルなデザインだった、クフェアが付けたとしても似合うだろうという確信が不思議と持てた、思わず手に取り眺めていると

 

「それはエンゲージリングとして有名なやつだね」

 

「エンゲージリング?」

 

「結婚指輪ってことよ」

 

結婚、何時だったか自分とクフェアが大喧嘩したあの日の翌日にユノが口走ったあの言葉が頭を過る

 

『結婚するの!?』

 

その時は何言ったんだコイツはとかそんなふうなことを言い返したような気がするが、今改めて考えてみて、あの時の互いの告白は何と言うか、こう、なっちゃいなかったなと思い始め、クリスマスっていうのはカップルで夜を過ごしたりするんだよと自称姉であるユノが自慢げにそんな事を言ってたのを思い出してから

 

「……婆さん、コレくれ」

 

「高いよ?」

 

「高かねぇよ、アイツの笑顔を見れるんだったらな」

 

この娘きっと将来、天然誑しだ何だって言われて苦労するわね。その指輪をクリスマス用のラッピングを施しながら笑みを浮かべまた別の商品を眺めるノアを見つめそんなことを思うのであった。




本当はキャロルちゃんのつもりだったけど此処でこの話は挟まないとあとに余裕ないじゃんとなった無計画作者の図。

明日は……分からん!

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