それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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忘れないと言っても、やはり忘れてしまうのが生き物。

だからこそ何かのトリガーで思い出すそれは美しかったりする。


思い出は暖かな料理とともに

あいも変わらず宛もない放浪の旅、だが何時ぞやであった孤児院の院長をしてた女性、そしてつい最近別れたあの二人組との出会いと別れを終えて彼女【キャロル・エストレーヤ】は幾度目かの朝、道を歩きながら今日までの出会いと別れを思い出していた。

 

孤児院の院長をして、孤児院の子供たちからは母として慕われている女性は言った、一人だからこそ見つかるモノもある、だけど誰かと一緒だから見つかるモノだってあると

 

ロペラと名乗った諦めを知らず、繋ぐ手の大切さを深く知っている女性は言った、旅してる間って意外と答えなんて見つからない、どれも答えかもって思うし、どれも間違いかもって思う、でも求めるのを諦めたら駄目なんだと

 

フトゥーロと名乗った日溜まりを体現したような女性は言った、正しい答えなんてこの世には存在しない、自分で見て、そして識った物のどれかが、もしくはどれもがいずれ貴女の答えになると

 

共通してたのは、それを語ってる時の彼女たちの顔はどれも穏やかで、迷いなんてなくて、自分でこれがそうだという信念があるということがよく分かるものだった

 

(……俺は、満足の行くその答えを得ることが出来るだろうかと、思っていたが、もしかしたら姉上はただ俺に気付いて欲しかったから識れと伝えてきたのかもしれんな)

 

世界を識れ、まるで大層なことだが、姉である彼女が伝えたかったのは多分、そういう事なのだろう、無論それ自体も間違えてるかもしれないが、その答え合わせはいずれ自分が風になった時にでもしようと考え、ふと足を止めた。

 

別に誰かが向かってきているというわけでもない、そういう理由で足を止めたわけではなく、彼女は適当に辺りを見渡して座れそうな手頃な岩を見つけそこに座ってからショルダーバッグをガサゴソと漁って何度使いまわしたか分からないスプーンとレーションの缶詰を取り出し食事を始めた。

 

基本的にキャロルは食事、水分、睡眠、本来であれば生命活動には必要であるそれらを必要とはしていない、確かに空腹は感じるし渇きもある、眠いなとも思う時はあるが必須ではなく、そのまま活動できるのだが、あのスユーフ達と過ごしていた日々が影響してか一日に最低でも一度は食事を取らないと気が済まない体になってしまっていた。

 

(微妙に不便だ、まぁ消費期限がいくら切れていようと悪影響を受けないから良いが……)

 

正直に言えば腐りかけているので味も酷いものであるそれをモグモグと食べてから、空を中に放り投げてレーザーで焼き消す。因みにこの味だとアルアジフが居たら滅茶苦茶怒られていただろう、だがなぜ態々レーザーでと聞かれそうだが理由は『ポイ捨ては駄目ですからね』そんなスユーフの言葉が頭を過ぎったからだ、そして彼女たちとの生活の影響はまだあり

 

「手料理、食べたいな」

 

浮かぶのはスユーフが作ってきた手料理の数々、もしかして、あの生活ってかなり贅沢だったのでは、そんなことを思いながら歩くのを再開するキャロルは……

 

「此処がその話に出たカフェがあるか、すまない、態々送ってもらって」

 

「カッカッカッ、別に苦でもないわい、久しぶりに誰かを乗せてバイクを走らせるなんて経験ができて寧ろこっちが礼を言いたいほどじゃよ」

 

歩きを再開して数十分後に辿り着いた休憩スポット、キャロルは居たバイク乗りの老人達にこの先に街などはあるか等を聞いた所、孫ほどの少女が一人で旅をしていると聞いて態々送ってくれたのである、因みに誰のバイクの後ろに乗せるかで若干揉めた模様。

 

ともかく、キャロルは老人に礼を言ってから別れその施設に足を踏み入れる、無論、自分が民間の人形程度であるという反応に抑える例のペンダントはきちんと付けてだが。ゲートにてダウルダヴラが引っかかるかとも思ったが自衛ですと何とか納得してもらい彼女は老人に教えてもらった目的地へと迷うことなく向かう、そこは

 

(CafeD08、ここか……流石に店内に外套姿はマズイか、まさかここがD地区とは思わなかったし、しかもルーラーと繋がりが深い08地区)

 

そんな所で外套を脱ぎ姿を晒した状態で、しかもそのカフェに入りましたとなれば間違いなく向こうの耳に情報が向かうだろう、だがそうだとしてもキャロルは一度吹き出した手料理が食べたいという欲求を押し込めることが出来なかった。

 

更に言えば別段もうそろそろバレても問題にはならない、と言い訳を並べながら扉に手をかけカランカランとベルを鳴らしながら入った彼女が思ったのは

 

(いや、でっかいなオイ!?)

 

「ようこそ、CafeD08へ!1名様でしょうか?」

 

「あ、あぁ、席はどこでも構わない(特別視線は感じないな、まさか俺の情報は出回ってないか?)」

 

尚、単純にキャロルちゃんの洞察力も向こうの隠密力が高かっただけでバッチリ彼女の姿に驚かれてた模様、そんなことを気付いてるわけがないキャロルは案内された席で早速注文をし、待つこと数分、待ちに待った手料理である『サンドイッチ』と『コーンポタージュ』が並べられそれぞれ一口食べた時、彼女の脳内で

 

『夜食に作ったのですがどうでしょうか』

 

初めてスユーフが夜食を作ってくれた時の場面が鮮明に浮かんだ、その時も確かにサンドイッチとコーンポタージュ。

 

「……あれ」

 

その一口と浮かんだその時の思い出で彼女の眼から涙が溢れた、あまりに突然で近くに居た416に非常に似ているが彼女よりも一回り近く身長が小さい人形【417】に

 

「え、だ、大丈夫!?」

 

「す、すまない、いや、何かあったわけではない。ただ少し前を思い出してな、美味しい、美味しいよ」

 

グシグシと服の裾で涙を拭いてから味わうようにサンドイッチとコーンポタージュを食べ進める、彼女の言葉通りあの日を思い出した、忘れてたつもりはないのだがと思いながらも、やはり思い出というのはこうして摩耗していくのかと自嘲気味な笑みを浮かべる。

 

彼女は別にユノやノアみたいに大食らいではないのでこの量で満足でき、だが、と同時に思った、やはりスユーフが作った時に彼女は『コーンスープ』だと言っていた、しかし今思ってもあれは

 

「(美味だった。がスユーフの奴あれはやっぱりコーンポタージュだろ、って言ってもアイツはスープだと言い張ったがな)……ふむ、確かこういう時は」

 

ショルダーバッグから取り出したのはペンとメモ用紙、そこにサラサラと何かを書いてからコーンポタージュの器の下に注文代とは別にお金を挟んで、レジにて会計を住めせてから

 

「コーンポタージュの器に挟んであるチップ、あれを作ってくれたシェフに頼む」

 

そう告げてからカフェを後にして、最後の一回となっていたテレポートを起動させる、行く先は『S地区』指定はできないのが物凄く不便だが仕方がないとのこと。

 

因みにメモにはこう書かれていた

 

【どちらも大変美味だった、それと思い出をありがとう】




クリスマス前にはキャロルちゃんをP基地に向かわせたいので明日もキャロルちゃん編だし、何だったらまたコラボ先に向かうと思う

カフェに急にお邪魔してすまぬ、スマヌス……

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