それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
「あの、一つ聞きたいんですけど良いですかねアリババ」
広報室にてG17が休憩の傍らFMG-9に質問を問いかける、前々から聞こうとは思ってはいたのだがバタバタとかもあり聞けなかったので漸くという感じではある。
対してFMG-9も情報収集が自分よりも断然得意のはずの彼女から質問という珍しい事に何事かとどうぞと促してみれば
「……この基地のコルトSAAって【アンピースメーカー】の個体ですよね?」
「アンピースメーカー……って、おいおいおい、あの曰く付きの人形のことじゃないか!?」
同じ部屋で作業をしていたMDRがその名を聞いて狼狽える、と言っても彼女の場合はネット掲示板にて集めた情報なので思いっきり偏りがある、が彼女の反応はある意味で正しい、【アンピースメーカー】とはそれほどまでに忌み名として有名すぎている。
「どこで知りました?何てのは聞きませんがまぁそうですよ、あの個体はアンピースメーカーと呼ばれてる彼女です」
よいしょと椅子に腰掛けてから背もたれに体重を預けてFMG-9が答える、毎日のように射撃場に現れてはただひたすらにストイックに射撃を極め続ける彼女、表向きは他のコルトSAAと変わらない、コーラが好きでテンションは高く、歳の話をされるのは嫌うという所までは何ら変わりがない。
だが射撃と戦場、そして任務となると人が変わったかのようなストイックさを全員に見せる、それこそ何かに囚われているような、執念にも似た雰囲気を纏い敵を無慈悲に撃ち抜いていくその姿はまだこの基地に慣れていない新人人形からすると恐怖すら覚えてしまう姿である。
「所でどこまで知ってますかアンピースメーカーのこと」
「私は掲示板とか、興味本位で調べた所まで、かな」
「一通りは、ただ全部とは言い切れません、何かまだ隠されているのか、語られてないのかって部分があると思うんですよね」
二人の言葉にふむふむと唸ってからコーヒーを一口、MDRはまだしもG17に関してはそうは語っているが殆ど集めてはいるだろう、それでいてこの基地に居る彼女が本当にそうなのかと聞いてきたと思われる。
別段隠すようなことではない、本人もそう呼ばれることに不快感は無いし何だったらそれを通り名にしてしまっているくらいには覚悟が決まっている部分もある、ただこの場合、気に入っているではなく罪を背負いうという意味合いが非常に強いのだが。
「まっ、ヘルメスが集めてる情報で大体全部ですよ、正直に言えば自分も彼女が語ってない部分は知りませんし」
「あのぉ、出来れば聞かせてもらっていいですかね?良くも悪くも私って極端なことしか知らないんですよアンピースメーカーのこと」
MDRのかなり遠慮気味な発言に別段良いかと彼女は語り始める、何てことはないこの世界ではよくある悲しいお話、たった一発の弾丸が起こした悲劇、それを聞いてしまったMDRは改めて思った
「この基地って、体よくそういう嫌われ者集められてません?」
この基地本来の役割を考えると的を得すぎている言葉にFMG-9とG17は苦笑するのであった。
……場面代わり、グリフィン本社近くにある共同墓地、あまり入れられるものは多くなく、大体は形だけのその墓地にコルトSAAは手に花を持ち居た。
「今年も、この日が来ちゃったね、ははっ、私に墓参りされるのは迷惑かな指揮官」
よいしょと花を墓石において見つめ、ふと気配を感じて見てみれば睨むような視線を彼女に送ってくる他の基地のG36Cの姿、だがコルトSAAからすれば見覚えと言うよりも心当たりがある人形である、だって
「また、来たのですか」
「……」
「何のつもりなのですか、貴女がこうして墓参りに来て、それで報いになるとでも思ってるのですか!!!」
言葉が、叫びが彼女に突き刺さるも顔色を変えずに、そして視線も逸らさずにG36Cを見つめ、ゆっくりと口を開く
「思ってないよ、ただ罪を忘れないために私はこうして来てるんだ」
そう言いながらトレードマークであるカウボーイハットを取り右側部分の髪を掻き上げ現れるのは生々しい火傷の痕、火にと言うよりは鉄血が扱う光学兵器に掠ったという感じの痕。
これが彼女が言う罪、自身が過去に語った一発の銃弾を外したが為に死んだ仲間がこんな自分を生かすために庇ってできた火傷痕、ただこれだけであれば元仲間であったG36Cに此処まで睨まれることはない、問題はその死んだ仲間だった。
G36、彼女が以前配属されていた基地に居た一番練度が高く、そして……彼女が死ぬことになった作戦の翌日に指揮官と誓約するはずだった人形。
「私が悪いんだ、自分の腕を過信し、慢心して外し挙げ句見捨てればいい私を庇って死んだ……」
右手が当時を思い出して震える、何より不幸だったのはそのG36のバックアップが設備不備で完璧ではなかったことで起きたメモリーの欠如、それによって指揮官が狂ってしまったこと、戻ってきた彼女を迎えたのは指揮官の何故外した、なぜお前が生き残ったという罵倒、その時の目はもはや常人のそれではなく、自身も責められて当然という感情だったので甘んじて受けていた。
だが悲劇はそこで止まらない、その後、彼女も負傷していたのでと修復してる最中、指揮官は何を思ったのかコルトSAAの銃を持ち出し、執務室にて……
「今も、その時の感触が、感覚が、感情が、私の中で巣食ってる、忘れるなって、呪詛のように蝕んでるよ」
「……ごめんなさい、私また」
冷静になったのか、G36Cが突如謝る。彼女も理解しているのだ、戦場では何があるか分からないと、姉であるG36もそれを理解し、何よりも庇ったのだって部隊長だからこその責務からの行動だと。
だから本来であれば彼女を責めるのは間違えていると。だとしても、どうしても、顔を見た瞬間は冷静で居られなくなってしまう。
「いいよ、それだけのことを私はしたんだからさ……貴女が私を責める理由は十二分にあるのだから」
【アンピースメーカー】平和の使者たる銃で引き起こした悲劇が故に付けられた忌み名、たった一度で付けられちゃうんだという感情が先であり、別段付けられてしまうこと自体にはあまり気にしていない。
カウボーイハットを被り直した彼女はG36Cにゆっくりと頭を下げてから基地へと帰る、途中クルクルと銃を回しながら、悲しい瞳をしながら。
また、君は、そういう、設定を、付与させるの?まぁはい、この基地の彼女はまぁこんな感じだよってことですはい。
【アンピースメーカー】
とある基地のとある指揮官が彼女とスティグマされている銃で自殺してしまったという部分だけが曲解されて広まった結果に付いた、P基地に所属するコルトSAAに付けられている忌み名である。
彼女はそれを罪として背負い、己を磨き続ける、今度は平和の使者たる存在になれるようにと。