それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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明日が本番である。


聖夜の前の日常

クリスマス・イブ前、巷ではイブイブとか言うその日となればこの基地では嫌でも盛り上がりを見せる、それがたとえキャロルが合流した翌日だとしても、彼女がたとえ

 

「……なぁ祖母上」

 

「(祖母上?)なんじゃ、キャロル」

 

「俺はついこの間まで敵対無いし危険分子だったはずだ、それがこうして基地にノコノコと来たというのにあいつらは楽しげにパーティーの飾り付けをしているんだ?」

 

ちらっと見ればクリスマスパーティーの飾り付けをいそいそと行う人形達とユノの姿、それを確認してからキャロルは困惑する、何でコイツラこんなに次のことに楽しみにできるんだと。

 

早い話彼女はまだこの基地に馴染みきっているというわけではない、なので彼女としてはこの空気に思いっきり困惑し自分がなにか間違っているんじゃないかと思ってしまっているのだ。

 

「ふむ、そうじゃな……前例があったというのもあるし、何よりも指揮官が大丈夫だと告げたのならば軽い警戒こそすれど後は普段どおりに接することにしてるからかのぉ」

 

何だそれはとまた困惑する、因みに前例というのはノアのことである、思えば彼女も彼女でユノを全力で殺しに来たというのにユノはユノで対話の構えを取り引き込んだ、なのでキャロルもまたそういうパターンだろと思われてたりする。

 

「確かに俺はもう敵対の意志はないし、鉄血ともエルダーブレインとも繋がってない、それにしたって無警戒だろ……」

 

「呵々、そこは慣れとくれ、それにお主とて嫌いではないじゃろ?」

 

嫌いも何もこの手の事は初めてだから分からんのだがと思いながらも笑うナガンを見てまぁ良いかと息を吐く、息を吐いて肩の力が抜けたからなのか、そこでふと視線を感じ見てみれば4つの影が廊下の曲がり角から覗き込んでいるではないか。

 

誰だあれと彼女が目を凝らしてみればそこに居たのは飾り付けをユノ達と行っているはずのルピナス……な訳がないので

 

「(ダミー?)ここはダミーも自由にさせているのか?」

 

「む?いや、基本的にはスリープじゃがってあぁ、そう言えばお主にはまだ紹介してなかったな」

 

紹介?と首を傾げてる間にナガンはメインフレームに換装したせいなのか勝手にスリープから起動する日が増えたというルピナスダミー四姉妹を手招きで呼べばゾロゾロと彼女たちはこちらに向かってきて、キャロルからは少し距離をとって遠回りをしてからナガンの側まで集まる。

 

今の流れでその行動が普通だよなとキャロルは思いつつ割と露骨に距離を取られたことに少しショックを受けていると

 

「さて、紹介しよう。この娘らはそこに居るルピナスのダミー、此処では様々な事情で四姉妹という扱いになっておる子たちじゃよ、右から【アニス】【ビビ】【クレア】【ディアナ】じゃ」

 

「自我を持ったダミーと言うことか、ならば名乗っておくか、昨日この基地に世話になることになったキャロル・エストレーヤだ」

 

と名乗ってみたのだが彼女らの警戒心は高いのかそれぞれがナガンからは離れず、普段とは違うくらいに、それこそ借りてきた猫のような声で自己紹介をするだけに留まる。

 

「ふむ、安心するのじゃ、コヤツは何もせぬよ」

 

「そうだけど……」

 

「いや、その反応が当然だろう。だがまぁ祖母上の言う通り今の俺は武装も封印されている、動いた所で速攻で無力化がオチの身だよ」

 

今現在の彼女はダウルダヴラはアーキテクトのラボにて解析に回され、彼女自身に施されていた内蔵武器と電磁シールドも封印されている、これは本社からの命令であり流石にこれを蹴る訳にも行かないので暫くはこの状態らしい。

 

と言っても彼女はそれを困るというわけではない、そもそもにして外に出るつもりなんて無いので護身用のそれらは必要ないし、寧ろ合理的にアーキテクトのラボに篭もって技術提供できるので丁度いいとすら思っている。

 

なので彼女たちに警戒されてもまぁ仕方のないことだという感じに答えたつもりだった、だがどうやらアニス達にはそれが凹んでいる無いし、悲しんでいるように見えてしまったのか

 

「あ、あの、キャロルおばちゃん!私達怖がってないよ、ただちょっとその、あれよ、どう接して良いのか分からなかっただけ!」

 

「おば……」

 

尚、思わぬストレートにキャロルの精神が若干死んだ模様。とキャロルとアニス達が探り探りながらも会話を始めナガンがそれを嬉しそうに笑っているのを聞きながら飾り付けをしていたユノは少し休憩と近くの椅子に座ったタイミングでクリミナがコーヒーを手に現れ

 

「お疲れさまですユノ、どうです?」

 

「ありがと、ふひぃ、ふふっ、キャロルちゃん、馴染んでくれてるね」

 

「そうですわねってあらあら、ルピナス達も参加しましたわ」

 

どうやらアニス達が勝手に起動し、更には自分達がまだ会話したこと無いキャロルと楽しげにしてるのを見て突撃を敢行したらしいルピナスとステアー、その後ろをオロオロと付いていくシャフトの姿に夫婦で微笑み、それから

 

「その、ユノ、少し宜しいでしょうか?」

 

「ん?何クリミナ、急にそんな改まるなんて珍しいね」

 

「そうでしょうか?いえ、この間なのですがペルシカさんから連絡がありまして、あの、男性素体の開発が漸く終わったとの報告でして」

 

その瞬間、聞き耳を立てようとしたFMG-9がIDWに沈められた。随分と時間がかかったと思われそうな話だがペルシカが言うには納得の行くバランスが中々難しかったらしいとのこと、ともかくクリミナのその報告にユノは、あの日、父の日の時に見た彼女を思い出して少し顔を赤くしてから

 

「そ、そうなんだ。良かったね、でいいのかな?」

 

「クリスマス・イブまでに間に合わせてもらえたので良かったと言えば良かったですわね、それで、ですね。明日……その素体のあたくしと出掛けませんか?」

 

次の瞬間、食い付こうと動こうとしたFive-sevenがFALに沈められた、要はデートの誘いのそれなのだが普段どおりであればユノは即答で返すのだが今回はあの日の男性姿の彼女、それでデート、悶々と想像が膨らみ、それに釣られて顔がさらに赤くなり始め

 

「い、いいよ。えへへ、何だろ、初めてじゃないのに凄く胸がドキドキする……えへへ~」

 

「あたくしもですわ、では明日はそのようにしましょうか」

 

「あ゛っ゛」

 

「そこのSTARに似てる誰かを廊下に放り出しておいて下さい、え?遠慮なんてする意味あるんですか?」

 

こうして翌日はユノとクリミナはそんな形でのデートと相成った、だが別の場所ではこの基地のそれぞれのカップルが

 

「あ~、どうするよクフェア、お前が言うなら出かけるのもありだが」

 

「うーん、初めてのクリスマスイブだし、外もいいけど私はノアとゆっくりしたいな」

 

食堂の飾り付けをしていた二人がそんな会話をし、またカフェの飾り付けをしていたヴァニラとスプリングフィールドは

 

「明日、出掛けるわよ。お店用意してあげたから」

 

「え、あ、はい!」

 

こうして各々が明日の聖夜に向けて準備を進める、誰もが忘れられない思い出を作るために、その日は始めるのであった……

 

「所で伯母上、俺はいきなり目の前で行われたあのやり取りをどの様に姉上と母上に報告すればいい」

 

「ありのまま伝えてやればいいのじゃ、うむ」




いよいよやなって……!

因みに日程としましては
明日がユノとクリミナの話(クリスマス・イブ)
明後日がノアとクフェア(クリスマス・イブ)
明々後日がヴァニラと春田さん(クリスマス・イブ)
でやっとクリスマス話、なのでリアル日程とめっちゃズレます、しゃーなし。

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