それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
一台の車【DBS V12】が【ガーデン】のグリフィン所有の駐車場に停車、まず運転席から現れたのはPPKによく似ているが骨格などをよく見れば男だと判断が付きそうで、いや、もしかしたら男装かもと迷わせる姿の男性。
そして彼は助手席に回り扉を開けば降りてきたのはユノ、だが今の彼女の姿は普段の少女チックな装いではなく、今の姿に合わせ大人な感じにコーディネートされた姿、言わなければ殆どの人がユノの姉だと思うだろう、が慣れないハイヒールでよろけるその姿を見ればあぁ、彼女だなと気づかれるかもしれない。
「っとと……あ、ありがと」
「ふぅ、来て早々に怪我しましたは笑えませんわよ」
男性から出た声は中性的であり、しかもその口調となれば誰しもが疑問に思うだろう、ではそろそろ種明かしを、この男性が件の男性素体にメンタルモデルを一時的に移したクリミナその人である。
二人は昨日約束した通り、二人で街までデートをしに来た、丁度去年も来たはずのそれだが今回はG36の送迎ではなくクリミナの運転、つまりは完全に二人っきりである、因みにこのことをナガンに話した際には意味有りげな笑みを浮かべながら
『おう、朝帰りも許してやるのじゃ』
去年とかのユノだったらナガンのその言葉の意味を理解できずに朝じゃお仕事がと答えていたかもしれない、と言うよりもこの時はそう答えた、クリミナは意味が理解できているので曖昧な笑みを浮かべていたが。
だがその後、男性素体としてのクリミナとデートするんだということを聞きつけたエルフェルトに着飾ってもらっている間、Five-sevenやDSR等にその事を話してみれば、彼女たちはそれはもう丁寧に教えてしまった、なので若干意識してしまって顔が赤かったりする。
「では、参りましょうか」
「うん、去年よりも凄いイルミネーションとか見れるかな?」
「スリーピースがライブならすると聞きましたが、もしかしたら基地から誰かが催し物をしてたりするかもしれませんね」
なら楽しみだとユノが笑えばあたくしもですわと笑い返し、自然と腕を組んで二人は街中へと歩を進めていった。その姿は夫婦のようで、カップルのようで、見ているだけで少し胸に甘いものを宿させるくらいの仲の良さ、それに見せられたからなのか、将又ユノがそこそこ有名になったからなのか、そんな二人に声を掛けてくるような存在は居ない。
だからユノとクリミナは誰にも邪魔されずにクリスマス・イブ一色の街を楽しげに話しながら歩いていける。
「あ、このツリー去年も見たね、なんか、成長した?」
「確かに……大きくなってますわよねこれ」
実際大きくなっているらしい、因みに提供してるのはあの好々爺してる暗部のドンだったりするのだがそこは余談である。その後もイルミネーションを楽しんだり、クリスマス・イブ限定の品物を見たり、スリーピースのこの時間でも盛り上がっているライブを二人で観に行ったり、時間制限なんて無いので目一杯、二人っきりの時間を楽しむ、楽しんで
「ふぅ、ちょっと疲れたね」
「そうですわね、ユノもですがあたくしも少々はしゃいでしまいましたわ」
腕に掴まりながら顔を寄せて幸せそうな笑みを浮かべる愛妻に少し色気のようなものを感じてしまったクリミナはこの素体はどうやら思考も男性よりになるのですねと妙な手の込みように苦笑いを浮かべてしまう。
しかし、それ抜きにしても今のユノは普段の少女らしさが鳴りを潜めて一人の大人の女性といった感じの雰囲気を醸し出しているのも事実だ、これはツァスタバが向こうが男性素体ならば指揮官もそれ相応に成長してみるのもいいかもしれませんねと本気でメイクアップを施し、それに乗っかったDSRが男を虜にする仕草を伝授、そこにエルフェルト本気のコーディネートが合わさればクリミナじゃなくとも見惚れてしまうであろう。
更に仕草とか大人な女性と言った感じでも中身までは早々変わらないので少女らしい部分も現れれば
(もう、本当に天然の魔性持ちですわよねユノは)
「ん?どったのクリミナ?」
「いいえ、それで今日はどうしましょうか、もうちょっと見て回ってから帰りましょうか?」
もし、クリミナに誤算があるとすれば、ユノは57などに色々吹き込まれてたのもあった、417との会話でクリミナとの子供が欲しいという感情が芽生え大きくなっていたのもあり彼女は密かに勉強していたのだ、自身が気付けば少し好きになっていた少女漫画で、小説で、クリスマス・イブとは、二人っきりとは、そんなことを自前のスポンジクラスの吸収性で知識を蓄えていたのだ。
ギュッとユノは掴まっている腕に力を込め自分の体を更に近づけてから、真っ赤にした顔のまま
「……きょ、今日は帰りたくないな、なんちゃって」
最後の最後で彼女らしからぬほどにヘタれた、だが逆にそれが【今】のクリミナの心を大きく揺さぶった、具体的に言えば天秤なんてあっさりと傾くほどに。
彼女とて意味を理解して言っているのは明白だ、だからこそ顔は変わらず真っ赤だし、キョトンとした瞳で見つめるクリミナを直視できずに顔を俯かせているのだから、それが愛おしかった、胸が彼女を独占したいと言う心に染まる、クリミナもクリミナで実を言えばこの素体になり、ある種の覚悟を決めていはいたしユノが自分との赤子が欲しいという会話はきっちり覚えていた。
気付けばクリミナはゆっくりとだが力強く彼女を抱きしめていた、そして……
(こ、ここってあれだよね、その、57が言ってたちょっと特別なホテルってやつだよね!?)
(此処まで来たならもう後には退けませんわ)
「ユノ」
「っ!?」
ただ、名前を呼ばれただけ、だと言うのに心が大きく弾んだ、昂ぶったという方が正しいかもしれない、思考は混乱していようが本能はこれからどうするか、何が起きるかなんて理解している、いるのだがそれとこれとは別問題でありうまく言葉が紡ぎ出せない彼女にクリミナは優しく微笑むのだが今のユノにはその表情でもアワアワと慌てさせる一因になる
そうこうしている間に気付けばクリミナはユノとゼロ距離の所まで近づき、両肩を優しく掴まれれば、逆にそれが彼女を冷静にさせたのか、それとも腹をくくらせたのか、ユノは
「クリミナ……好きだよ」
「あたくしもですわ、ふふっ、何時も言ってることなのに今日はちょっと不思議な感じですわね」
「うん、不思議。でも心地よくて、怖くない、そんな感情だよ」
だから、そう言ってユノはクリミナと唇を重ねた、少し長めの優しい口付けを終えて離し
「宜しいのですね」
「もちろんだよ、来て、遠慮なんていいよ、クリミナを沢山……」
感じさせて、その言葉を皮切りにクリミナは彼女を押し倒した、後は言わずもがなだろう、その日、その部屋からはほぼ朝方まで声が途切れることはなく、翌朝、一糸まとわぬユノが起きた彼女は隣で珍しくまだ寝ているクリミナを見つめてからふと
「……えへへ」
そっと、お腹を擦り何かを感じ取ったのが全ての答えだろう。
メリークリスマス、第一弾です、遠慮なんざ要らねぇんだよ!!
因みに最後の彼女の行動が全ての答えです、はい、つまりそういうことですねはい。