それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
クリスマス・イブ、と言う訳で街はもちろん、基地でも本日の業務が終わり次第、人形達がワイワイと賑わいを見せ始めるものである。
そしてその中には本日が初めてのクリスマス・イブと言う二人、ノアとクフェアも混ざっていた、色とりどりの飾り付け、そして何よりも
「ケーキがウメェ」
「うん、甘すぎないけど甘くて、なのに重くなくてパクパク食べれちゃいますね」
モリモリと食堂に並ぶ料理やらケーキやらを楽しむ二人、特にG36とスプリングフィールドが合作したクリスマスケーキは非常に好評であり、あまり食が太くないクフェアも思わずお代わりと言ってしまうほどの美味しさ、しかもかなりの量を作ったようでこれにはエンゲル係数係もニッコリである。
だが彼女らはこの後驚くことになる、なんと明日はクリスマスパーティーだと言われたのだ、つまりはこれでも抑えて作っていたということになる、ただ言えるのは
「……その資金とかどっから出てんだ、つか材料とか」
「うーん、D地区とかF小隊さんが居る所の牧場とか、他にはスチェッキンさんが、かなぁ?」
まぁ、ウメェから良いけどとケーキを頬張る、その時に口元にクリームが付いていたのでクフェアは指で掬ってからペロッとそれを舐めるのだがそれを行ってから
(今私って結構大胆なことしましたかね?)
「んあ、付いてたのかわりぃな……そういや、能天気バカ見てねぇけど、どこ行ったんだ?」
「お義姉さんでしたら先程クリミナさんと街に出掛けられましたよ」
それを聞いてそういや妙に楽しみにしてたしエロうさぎたちが力込んでたなと思い出してから、ふと視線を動かせばナガンとキャロルが対談している姿、いつの間にか距離を縮めたのか妙に話が盛り上がっている様子にむぅとなるノア。
彼女としてはまだキャロルを信用しきれてはいない、無論彼女の境遇だったりは聞いているのだがつい最近まで敵対してましたって言う相手なので過去の経験からまだ気を許すのは早いと思ってしまっているのだが、昨日はルピナス達も会話していたのを見ているので思わず
「アタシはもう少し信頼するってことを覚えた方が良いのかな」
「ノア?あ、キャロルさんのことですか?」
「あぁ、婆ちゃんやルピナス達や能天気バカもだがああやってすぐに打ち解けられる、なのにアタシはまだアイツと面と向き合えちゃいねぇ、だからちょっと思っちまったんだ……」
自分はこうも疑い深い性格だったんだっけなと、思わず暗い顔に成りかけるノアにクフェアはギュッと彼女の手を握ってあげてから優しい声で
「でも、そこはノアの良い所でもあると思いますよ、貴女がそうやって一歩退いて警戒してくれてるから、何かあればすぐに動けて助けになりますから」
「そうなのかなぁ、だとしても少し警戒が過ぎんじゃねぇかなぁって……まぁオメェがそう言うなら大丈夫なんかなぁ」
珍しく弱気な彼女にこの人はこういう所でナイーブになりやすいですねと優しく手を握り締めてあげながら他の料理とか食べに行きましょうと誘えば、先程までの顔は鳴りを潜めてそうだな!と輝かせてクフェアとパーティーに再度参加、ノアが料理を楽しみ、クフェアが甲斐甲斐しくお皿に盛ってあげたり口元を拭いてあげたり、自分も共に食事を楽しんだりと時間は過ぎていき、パーティーも終りを迎え二人は自室に戻りゆったりとしていた。
「はぁ、楽しんだな」
「ちょっと、食べ過ぎちゃいました……」
「ハハッ、オメェは食が普段も細いのに無理するからだよ、まぁそれぐらい楽しかったし美味かったから仕方ねぇけどな」
ケラケラと笑いながらベッドにボフンと倒れて息を吐く、吐いてからあっと何かを思い出したように彼女は起き上がってからちょい待ってなとガサガサと自身の棚を漁ってから
「あ~、ほら、約束しただろ、プレゼント」
「覚えてますよ、私もほら、用意しましたから」
と言って出されたのは飾り気のないマフラー、空中哨戒をすることが多いノアは普段から寒いだろうと考えドラグノフに教えを請い手作りしたものである、隅にはノアをイメージした赤い羽根があしらわれたりする。
ノアはそれを受け取ってから実際に首に巻いてみれば程よい長さでこれなら哨戒中も決して邪魔にはならないだろうと判断、まぁ少し邪魔になったとしても彼女なら巻いて哨戒に出ただろうけど
「これ良いな、ありがとな」
「喜んでくれて何よりです」
素直に褒められて嬉しいですという笑みを浮かべるクフェアにノアはポリポリと頬を掻く、それから良しっと何かを決意してから
「プレゼントの前にさ、少し話をしていいかな」
「え、はい、大丈夫ですよ」
何か重大な話だろうかと思わず姿勢を正してしまうクフェア、対してノアもまさか姿勢を正されるとは思ってなかったので、少し緊張してしまうが此処で怯むなと気合を入れ直してから、彼女は話を始めた。
自分はクフェアを守ってるつもりだったと、だけどあの戦いで自分の戦い方で彼女を危うく傷つけてしまいそうになってたと知ったこと、自分はクフェアの事をきちんと見れてなかったことを、でも
「それでも、アタシはオメェが好きだってのは変わらねぇ、でも戦い方を簡単に変えられねぇのもアタシだ」
「……うん、それは、なんとなくだけど分かるかな。ごめんね、私が弱いから」
「ちげぇ!オメェの過去を考えれば分かることだったんだ、いや、そうじゃない」
ブンブンと頭を振ってから、ノアは目を閉じて深呼吸をしてからそっと目を開いて、カバンから取り出した彼女へのプレゼントをクフェアの前に差し出す、それは小さなケース、クフェアはそれを受け取ってからゆっくりとそれを開いてみて
「えっ、こ、これって?」
「戦い方は変えられねぇ、戦場がどういう所か知ってるから無傷って訳も行かねぇ、だけど約束する、アタシは何が遭ってもオメェのところに、クフェアの所に笑って『ただいま』って伝えてやる、アタシの口から、絶対にだ」
それはその証だ、彼女に渡されたそれは指輪だった。何の飾り気のない、だけど本当に綺麗なその指輪、ノアは言外に告げる、『ただいま』と言える場所はクフェアの側だけだと、つまりは
「そういう意味、だよね?」
「あぁ、あの時はさ、何かこう流れみたいな感じだったから、きちんというべきだと思ってな、好きだってことを」
「っ!!うん、うん、私も大好きだよノア!」
ガバっとクフェアに勢いよく抱きつかれそのままベッドに倒されるノア、大胆だなこいつはと思っているとクフェアが彼女の耳元で
「あの、ですね……実はあるんですよ、プレゼント」
「へ、何だよ言ってくれりゃあ用意したのに」
「ノアとの、子供」
潤んだ瞳で告げてくる彼女にそういや言ってたなクフェアと思うまで時間は要らなかった、それと同時にノアにいきなり快楽が襲う、声を出さなかっただけでも凄かったと思いたいが一体何がと思ったがこの感覚は前にDドリーマーの所で試験的に付けた例の『アレ』を付けられたときのと一緒だと気付き、クフェアを見れば先程のセリフが本気だと分かる瞳で
「駄目?」
「……バーカ、後悔すんなよ」
ガバっと珍しくノアがクフェアを覆い被さり……この後どうなったか?言うなれば、代表してナガンが屋上でタバコを吹かしながらこう言うだろう
「孫、見れるかもしれぬなぁ」
「祖母上?」
キャロルの疑問の声に返ってきたのはプカ~っと空に浮かんでいく白い輪っかだった。
やっぱり猛禽類じゃねぇかこの娘!!!あ、因みにですがノアちゃんに付けられたのは『アレ』です、Dドリーマーのところからの提供品です。
まぁとどのつまり、この日に二組ってわけですよ。え、もう人組居るだろって?やれると思う、あの二人が?