それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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年が変わる前に向こうの世界にお邪魔するヴァルター一家のお話。


世界線はそんな気楽に超えるものではない

クリスマスを無事に終え、休む間もなく迫るは大晦日、去年もしたが今年も勿論行いますと気合十分の日本組がバタバタとあれこれとスチェッキン達に頼りながら準備を進めている。

 

そんな基地、大掃除の準備も同時進行で行われているそこでユノはふと思い立った、そう言えば

 

(結婚式以降、あの世界のマスターさんと会ってないな……)

 

あの世界のマスターさん、別世界の平和な喫茶店のマスターの事であるのだが彼女が最後に会ったのはクリミナとの結婚式、それ以降は人伝てが殆どであり、コーヒー豆が送られてきたりもあったがそれも一度だけ、一番最近ではノアが向こうの世界で彼女と話したということだけ。

 

つまりは自分は今この姿になってから会えていないのだ、いや、別世界というとんでもない話なのでホイホイと会えないのが至極当然なのだが。しかし彼女には考えがあった、それはノアが使ったというあの路地裏、なので

 

「あ?あの喫茶店に行った時の場所だって?」

 

「そうそう、私も試してみたいなぁって」

 

「オメェならそこまで行く前に行っちまいそうな気がするがな、端末出せ、ポイントしてやる」

 

ありがと、と自身の端末を渡せばノアはポチポチと操作してその地点にポイントを打ち込む、それから改めてあの日会った時の向こうの様子を聞いていると偶々ナガンと会話をしながら近くを通りかかったキャロルがその話が聴こえたのか彼女たちのもとへ向かい

 

「何の話だ?」

 

「え、あぁそっかキャロルちゃんは知らないか、えっとね、こことは違う世界の喫茶店のお話だよ」

 

「ぶっ飛んでるけど間違っちゃいねぇんだよな、ここで起きたことは一切起きてない平和な世界だってのは」

 

笑いながらユノとノアはその世界の喫茶店の事を丁寧に、それはもう丁寧に話していくのだが比較的まだ染まっていないキャロルからすれば何を言っているのだと思考が染まり始めて、最後には隣のナガンの肩を掴んで

 

「……ば、祖母上、妹達が、妹達が薬をキメてとんでもないことを言い出してるぞ!いや、ストレスか?それとも精神に……」

 

「待て、待つのじゃ、そう思うのも仕方がないが二人が言ってることは現実じゃ、更に言えばここだけではなく他の基地でもその話は出ておるし、実際に行った話もある、つまり本当にあるのじゃよ、別世界というのが」

 

「えぇ、いや、だとすると平行世界、たらればが起きた世界ということか」

 

崩壊液、第三次世界大戦、胡蝶事件、この世界がこうなってしまった要因が尽く起きなかった世界、確かに理想郷とも言える世界、だがキャロルからすれば

 

「それはつまり、『俺達』が存在し得ない世界、とも言えるな」

 

「あ~、確かにな、こんな世界だからこそアタシらは生まれてるもんな」

 

「でも私達が居ないってことはお姉ちゃんがお母さんと平和に居るってことだからなぁ」

 

ってこんな話するつもりはなかったんだよとユノが叫び、丁度いいやとナガンに今日ちょっと向こうに行けるか家族で試してみたいと話してみれば、今日は休日だし好きにするが良いと返す。

 

ユノとしてはナガンにもそしてキャロルを向こうに紹介したかったのだが

 

「俺も平行世界には興味が湧くが残念ながらまだ保護観察中だからな、基地から出ることは許されてない」

 

「それに指揮官であるお主が基地を離れる以上、コヤツの監視役として副官のわしが動くわけには行かぬからな、家族水入らずで行くとよいのじゃ」

 

二人の言葉にそれもそうかとなりユノは早速クリミナ、ルピナス達に皆でお出かけしようかと通信で伝えてから準備に取り掛かる、因みにノアはというと今日はクフェアとのんびりしたいらしい、指輪を渡した仲になってからというものの二人はこうして二人っきりの時間というものを大切にし始めていた、尚、式はどうするんだと聞かれて時は

 

『あ~、いや、能天気バカがやったみたいな豪勢なのはちょっと、な?』

 

『きっと、緊張し過ぎで倒れちゃいます私』

 

との事なのでしても基地だけの小規模なものになるだろうとのこと、まぁその話は置いておき場面は変わってクリミナが運転する車で彼女たちヴァルター一家はその別世界に繋がっているというD地区にある路地裏がある地点を目指していた。

 

当然ながらクリミナも、何時もならお母さんの言葉なら信用する娘たちも今回の話には半信半疑だったりしたが彼女だけではなくノアも、そしてD08のシーナ達も行ったことがあるとなれば、あるのかとなり今は

 

「どんな所だろうね、平和な世界って」

 

「でも私達戦術人形は居るんですよね?平和でも争いはあるのかな……」

 

「治安維持とかかも?」

 

「ふふ、あたくしとしては結婚式に来ていただいたお礼もしたいですわね」

 

「にっしっし、皆行ったら絶対に驚くと思うよ~」

 

DBS V12は速度を上げ目的地へと目指し、結果だけをこちらでは端的に伝えるのならばヴァルター一家はさも当たり前のように例の路地裏を通って

 

「「「「……」」」」

 

「ほぉら!ここだよ、ここが私が来たっていう喫茶店だよ!!うわぁ、やっぱりアレは私の夢じゃなかったんだ!」

 

ユノがハイテンションで喜んでいるがクリミナ、ルピナス、ステアー、シャフトの四人は呆然としていた、確かに平和だとは聞いていた、だがそれは彼女たちの想像を遥かに超える光景だったのだ。

 

だがいつまでも店の前でハイテンションガールを演じるユノをそのままにしておくのは色々と迷惑だと気付いたクリミナが彼女を宥めて未だ呆然としていた三人を我に返してから彼女たちは喫茶店の扉を開ける、まぁその時でも喫茶店の中の様子に彼女たちはまた驚くことになるがそれはこちらで書くことはないだろう。

 

もしかしたらそれなりの時間居たかもしれない彼女たちだったがまた例の鈴の音が聴こえ、いよいよ別れの時間、ヴァルター一家は喫茶店の面々に挨拶をするのだが、その時にユノはクリミナ達に先に行かせて彼女はマスターさんの『代理人』の側まで行き、彼女だけに聞こえる声で

 

「実はですね……まだ確定じゃないし、診断を受けたってわけじゃないんだけど。家族がまた増えそうなんです、多分だけど、でも間違いないって気がして」

 

お腹を愛おしそうに撫でながらユノはそう告げ説明を代理人にしていく、無論PPSh-41の診断も何も受けていない、でも彼女の直感はそんな気がすると告げており次何時出会えるか分からないマスターさんだけにはと彼女はその事を教える。

 

向こうは驚きながらも、優しい笑みを浮かべてから

 

「では、次はその新しい家族ともいらして下さいね」

 

「うん、でもその場合また長い間会えないから、少し大きくなってから来るかも?」

 

「ご無理はなさらずに、でもお待ちしております、あっ、ユノちゃん、あの端末は!?」

 

『あの端末』ノアが前に置いていったそれ、ユノはマスターさんの言葉に大きく手を振りながら

 

「もしかしたら、繋がるかもしれないし写真が送れるかもしれないから置いておく!!大丈夫、中に重要なものは入ってないから!!!」

 

そういう問題ではないと思うのですが、と彼女が思った時にはユノと、その家族の姿は無く、彼女たちは入っていた路地裏の前に居た。

 

夢のようで、でも夢じゃない体験、その日のシャフトの日記にはこう書かれていた。

 

【優しい、怖くない世界の楽しい喫茶店、また皆と行ければ良いな】




もしかしたらあの路地裏が繋がる条件があるのかもしれないし、喫茶店とは違う世界に繋がってる可能性も否定はできない

と言う訳で『いろいろ』様の作品である『喫茶鉄血』にお邪魔しました!喫茶店内でのお話はあちらが書いてくれますので楽しみに!!(バトンタッチ

え、最後のユノっち?ほら、もう隠す要素ないし?

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