それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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夢は何時も綺麗とは限らない

※ 一人称進みます


ドリームドール

気付いたら私は森林の中に居た、と言ったら仲間たちに何を言ってるんだと言われるだろう、だけど居るのだから仕方ない

 

なんて、今の世界にこんな自然が残されてる場所は殆ど無いし、あっても私が今お世話になってる司令部の近くではない、それに私の最後の記憶は宿舎で就寝したと言う場面、つまりは

 

(夢、か)

 

普通の戦術人形は見ないはずの夢、それを私は見ることがある。原因はわからない、だけど大概は戦場の夢だったのが今回は違うという所に少し戸惑いを覚える

 

このまま覚めるまでじっとしててもいいけどと辺りを見渡してみる、何処までも続く綺麗な森林、夢だから細かな部分は感じないけど風に揺られて木々がさざめく音はいつまでも聴いていたくなる

 

だけどそれは不意に掛けられた声で中断することになった

 

「M4?どうしたの?」

 

聞き覚えがありすぎる声の方を振り向けば、軍服ではなく白のワンピースの指揮官の姿、そこで初めて自分の格好を見てみればいつもの服ではなくて指揮官と同じく白のワンピースを着用していた

 

指揮官は立ち止まっている自分が不思議なのか顔を覗き込んで来たのでそっと微笑み、大丈夫だと言う旨を伝えればよく見る笑顔で良かったと呟く

 

どうやら夢の中の私達は散歩、もしくはピクニックの途中だったらしい、自分の手にはバスケットが握られていたので多分ピクニックだなと考えながら先を歩く指揮官に付いていく

 

しかし夢の中には私と指揮官しか居ないのか。M1895、もといナガンの姿が何処にもないので少し残念だと思ってしまう、私は指揮官と一緒でもいいのだがナガンと指揮官が楽しげにしてるのを端から見ているのが好きなので夢ならばそこまで融通を利かせてほしかった

 

「今日は、湖まで行くんだよね」

 

歩き出してどのくらい経ったかと言う所で指揮官からそう伝えられる、なるほどこの先には湖があるらしい、楽しみだと言う風に頷いてみれば私も楽しみだよと指揮官も笑う

 

そこからさらに時間が経ち森林が開けたと思ったらそこには大きな湖、陽の光を受けキラキラと光る水面、その水面を野鳥が自由に泳ぐ姿を初めてみた私は感動を覚える、同時に何故この光景をここまでハッキリ夢とは言え分かるのかという疑問も浮かび上がる

 

(……何処か資料とかで見た、とか?)

 

考えても思い当たるフシが出ないので打ち切り、バスケットを地面に置いてそこからシートを取り出し指揮官と協力しながら敷いて固定する

 

「ねぇ、湖の側を歩こうよ」

 

指揮官からの誘いに小さく頷き、私はゆっくりと歩き出す、それに対して指揮官は楽しげに駆け足で湖の側まで移動する、何というか少々ハラハラするのは普段の指揮官を知っているからだろう、いや、普段の方がまだ安心できる

 

今の彼女はもっと幼くした感じの行動をしている。これは一言注意を入れておこうとした瞬間、ステップの着地地点に石でもあったのか指揮官が思いっきり転けて湖に消えた

 

「……え?あ、し、指揮官!?」

 

呆然としてしまった、が直ぐに我に返り指揮官が消えた所まで駆け覗き込む、が居ない、まるで最初から存在しなかったかのように沈んでいるなら泡が出るはずなのだがそれらもない

 

所詮は夢、かとその場から離れようとした時、湖が真っ白に発光を始め私は思わず目を閉じてさらに腕で庇い光が収まるのを待った、そして収まったと同時に目を湖に改めて向けた時、私はいち早くこの巫山戯た悪夢から目を覚まさなければならないと決心した

 

そこに居たのは、その、夢なのだから多分人違いだと思うけど【ST AR-15】に酷似した女性、いやもう瓜二つである

 

「……何やってるのですかAR-15」

 

「私は湖の女神」

 

あ、そういうスタンスなのですか、声までそっくりの湖の女神は私の問には一切答えどころか触れもせずにそう名乗ってきた。そして次に出てきた問にもう嫌だこの夢と嘆くことになる

 

「貴女が先ほど落としたのは……」

 

「落としたではなくて、落ちた、なのですが」

 

「金の指揮官ですか?銀の指揮官ですか?」

 

訳が分からない、何なの金とか銀とか、どんな反応すれば良いのですか?この夢は私に何を伝えたいの?この展開あれですよね、寝る前に読んでた童話の話ですよね?

 

夢ってこんなに疲れるものだっただろうか、先程までの和やかな時間は何処に言ってしまったのだろうかと私らしくもなく嘆きつつもとりあえずで女神の問に答えてみる、事態がさらに混沌と仕出した

 

「……いえ、私が探してるのは普通の指揮官です」

 

「そうですか、貴女は素晴らしく正直者ですね。では金、銀、普通の指揮官を貴女に授けましょう」

 

金と銀は要らないですと答える間もなく三人?まぁ、はい三人の指揮官が私の側に現れる、そもそも授けるとはどういう意味なのかと聞く暇もなくAR-15似の女神は光に包まれ影も形もなく消え去った

 

残されたのは三人の指揮官と私、あ、金と銀って髪飾りの事でしたか、確かに金メッキ銀メッキの指揮官とか出てこられても反応に困りますからね、などと安息したのも束の間

 

「M4」

 

「はい、どう……ひっ」

 

声が引き攣った、何故って?指揮官の方を向いた私の目に写ったのは無数の指揮官、それが全員私に視線を向けてずっと名前を呼び続けている光景があったからですよ、そして最後にはその無数の指揮官に呼ばれながら囲まれ……

 

そこで目が覚めガバっと起きる、荒くなった呼吸を落ち着かせ、思わず呟く、私にそんな願望はないから、と。その話をM16姉さんにしたら爆笑され指揮官とナガンにしたら本気で心配された、もしかしたら私も知らずの内に疲れてるのかもしれないと思いながら今日の業務をこなしていくことにした




綺麗とは限らない(悲惨な悪夢とも言ってない)

最初、M4A1がメインって書いてないなから始まって、そういやこの子だけ人形だけど夢が見れるんだよねから派生したらこうなった。

因みに金と銀は当初はメッキだった、だけど最後の場面でメッキ指揮官に囲まれるM4を想像してホラーなのかギャグなのか分からなくなりそうだったので髪飾りに変更

やっぱり一人称は書きやすいなぁと思いましたまる

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