それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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勝敗を分けた要因は体力差


勝負は全力で!

着物の裾を腕捲くりして気合とやる気十分といった感じに自信に満ち溢れた笑みを浮かべながら羽子板を構えるユノに、クリミナは困った感じの表情のまま草履の調子などを確認し、ゆっくりとユノに視線を飛ばす。

 

それを彼女はどうやら挑発、もしくは本当にやるのかと言う感じに捉えたのか笑みを更に深めてから

 

「ふふん、去年は確かに惨敗だったけど今年の私と同じにして不安になるのはちょっと甘く見てるんじゃない?」

 

「甘くは見ているつもりは……まぁ少しはありますけど、それとは別に本当にやるのですか?」

 

「勿論、負けっぱなしは私が許さない!だから今年はクリミナに勝って縁起の良い感じのスタートを切る!!」

 

ビシッと羽子板を彼女に向けて高らかに宣言するユノ、そして結構な声量で行われた宣言なので周りの人形達も何事かと見に来ればユノとクリミナが対峙している場面。

 

一部人形はこう思った、あの二人が結婚してから初めての夫婦喧嘩かと、無論半分は冗談である、喧嘩だったらこんな穏やかな立ち上がりはしないでユノは泣きながら、もしくは物凄く怒ってますという表情と雰囲気で叫んでるだろうし、クリミナは間違いなくどうしようとオロオロするに決まっているからだ。

 

「コレどっちが勝つと思うよ副官殿」

 

「賭けようというのか?うーむ、難しいな」

 

へぇと即答すると思っていたM16は驚く、だが何もナガンも適当なことを言う人形ではないというのは知っているのでどうしてかと無言で促してみれば返ってきたのは、見てみれば分かるという答え、その上で

 

「クリミナ、かの、大勝ではなく接戦となるじゃろうが」

 

「んじゃ、私は指揮官だ、しかしだハイエンド化でかなり成長してるとは言え食い下がれるのか?クリミナだって稼働時間と実戦経験を考えたら向こうが圧勝になるそうなもんだが」

 

「……いや、そんなまさかな、あの能天気バカに限って、いや、でもなぁ」

 

今の会話を聞いていたノアが突然そんな事を言い出しM16がどうしたのかと思ったのだが彼女はそれに気づかないくらいに考えているよう、それにナガンが見てみれば分かるという言葉もあったので聞かなくていいかとユノとクリミナの方に視線を戻す。

 

因みに他の人形達も二人の対決を賭け事にしたり、自分達もやるかと他の邪魔にならない場所で羽根つきを始めたりとわりかし自由な感じである。

 

「何だか盛り上がってるね周り、まぁいいや、さぁ始めようかクリミナ」

 

「賭けだとか聞こえるような気がするのですが……先行はユノに譲りますわ」

 

それは奇しくも去年と同じ展開、あの時は真上に飛ばすという珍事を引き起こしたのだが今回はそうはならないと気合を入れ直してから羽子板を構え、羽根をそっと添えてから一度クリミナを見てニヤリと笑い、カコーンと勝負の火蓋が切られた。

 

当初は、ナガンとノア、それと面白そうな気配を感じたと現れたVector以外はクリミナの勝利で幕を閉じるだろう、そんな事思っていたのだが、その考えは早々に裏切られた。

 

「フッ」

 

「てりゃ!」

 

「(振られた、ならば)先制は貰いましたわ!」

 

数十回というこの時点で周囲の予想とは外れたラリー、だが長くは続かないものでありクリミナが返した羽根をユノも食らいついて返したのだがフワッと上がり、しかも彼女は若干体制を崩し反対側はがら空き、そんな隙きをクリミナが見逃すわけもなく、勢いよくスマッシュを打ち先制点を確信した。

 

のだが、そうはならなかった、彼女なりに手加減しつつもユノには反応できない速度で打ち出されたはずのスマッシュに彼女は

 

「どっこいしょ!!!」

 

「なんですって!?」

 

ハイエンド化、更には日頃の筋トレや戦闘訓練で培ってきた動きをフルに活用してあの体制から無理くり身体を戻し地面を蹴って羽根を既の所で返す、それにはクリミナも驚愕しつつも何とか返し、また始まるラリーの応酬、その最中も何度か似たような場面は出てくるのだがその度に彼女は返していき、そして

 

「ハァ、ハァ、へ、へへん、どうよクリミナ、一点取れたよ」

 

「これは、驚きましたわ……えぇってユノ?」

 

「ん、負けたら墨で落書きだよ?」

 

あぁ、そんなルールもございましたねとクリミナは思いながら顔を差し出せば目の周りに大きく丸を書かれる、がまだまだ一点目、勝負はこれからであり今度はクリミナからのスタートで始める二回戦目、先程と同じ様に、いや、クリミナの眼からは既に油断という言葉は消え割とマジになり始め、動きもそれになっていくのだがユノはそれでも食らいつく。

 

食らいついてくるその姿と動き、そこでクリミナはふむと集中を切らさないようにしながら何かに気付く、彼女の動きに所々に先読みしているようなものを感じると、特に左右に振ろうとするとそれは明確に現れる、と流石に彼女は気付いた、過去にユノは射撃訓練の際に似たようなことをやっていたからだ

 

「ユノ、貴女もしかして超高速演算からの未来予測していませんか?」

 

「へ!?あ!!!」

 

反応から察するに黒だった。いや、自身が持ちうる能力を使ってなのでそれが悪いということではないのだが宣言も何もなしでそれを使ってたというユノらしいと言えばらしい勝利への欲に思わずクリミナは呆れ気味に笑ってしまうのであった、因みに勝負は結局、その後もユノは超高速演算を使いながら食らいつくものの一点差で敗北、ナガンの予想通りだったとは言え

 

「ゼェ、ぜぇ、ま、負けた……」

 

「ふぅ、ふぅ、いえ、まさか此処まで食らいつかれるとは思いませんでしたわってユノ、少し失礼」

 

「え、あ、ありがと」

 

互いの健闘を讃えつつクリミナは着崩れ危うく見えそうになっていた彼女の着物を直し、ナガン達の所に戻れば二人の戦いに盛り上がりに盛り上がっていた人形達にやるじゃないかともみくちゃにされるのであった。

 

最後にだが、この基地では忘れてはいけない大切な仲間の一人であり、基本的に外に出れない彼女に挨拶をしようとユノはナデシコに来てみれば

 

「あっれ、指揮官、どうしたのさ、元旦だから皆と遊んでおいでって」

 

「仕事じゃないよ~、オモイカネにもしっかり挨拶しようって思ったから、去年は助けられたしさ」

 

「気にしなくっていいのに、でも嬉しいよ、今年も宜しくね指揮官、今度はしっかりあたしが守ってあげるよ」

 

「こちらこそ宜しくねオモイカネ、それとアバターの皆もね!」

 

こうしてP基地の正月は終りを迎える、本来であれば三ヶ日なのだが流石に三日間をユノ無しのナデシコ運用は不備が出てしまうかもしれないので出来ないという現実である。




いやぁ、ガチンコユノっちは強敵でしたね……因みにヴァルター家でやると最終的にはルピナスとステアーの超次元羽根つきに落ち着きます。

全体だと今一考えてませんがノアちゃんはそれなりに上に行きそう、キャロルちゃん?下から数えたほうが早いよ。

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