それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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まぁほら、こんな四式自動小銃ちゃんも良いなって話よ


姿が変わるとスイッチも変わる

「こちら四式自動小銃、異常なしであります!」

 

何とも元気いっぱいな声が響く監視塔、あの襲撃から更に数を増やして今度は光学兵器だろうと防ぐからなと言うアーキテクトが意気込んだ結果、シミュレートだけならば本当に防げるものになってしまった。

 

そんな間違いなく本社からなにか言われそうなその監視塔で先程の定時連絡を行ったのは【四式自動小銃】彼女も最近来た人形の一人であり、一〇〇式大歓喜の日本銃である、なので当たり前のように彼女はお米を振る舞ったし鍋も豪華にした、懐はこの冬のように寒いらしい。

 

彼女の性格は一言で表すならば忠実な兵隊、指揮官を絶対とし、不実者は嫌い、自分にも時には指揮官にだって必要とあれば厳しくする立派な人形である。因みに彼女だけが特別厳しいというわけではなく実を言えば一〇〇式も64式自も62式も、そしてあの89式だって厳しい時は厳しい、特に訓練や任務時、特に戦闘の際は人が変わったのかと思うくらいに凛とし、釈然としている姿が見れる。

 

「本日も平和であります……吾輩の締め切り以外は

 

《こちらナデシコ、今何か言わなかった四式ちゃん」

 

「ふえっ!?あ、い、言ってないあります!はい、問題ないであります!」

 

あまりの慌てっぷりにオモイカネは間違いなくなんか言ってたんだよなぁと思いながら業務を進める、ユノも何か聞いちゃマズイことだったんだろうなと納得してから自身の監視の任務に戻る、そしてそれを聞いてホッと息を吐く四式自動小銃。

 

そう、この基地の人形達のご多分に漏れず、彼女も裏の顔が存在する人形の一人であった、普段はこの様に仕事一筋で何事にも大真面目に取り組み指揮官からもナガンからも、早くも信頼を勝ち取っている彼女。

 

そんな彼女なのだが業務が終わればまた別の顔を覗かせる。本日の警戒任務も終えてユノから今日はもうオフで良いよ~と告げられれば一つ礼をしてから交代できた【SKS】に引き継ぎの報告を上げてから監視塔を後にして向かったのは自室、扉を開けば畳に押入れ、一人か二人用のこぢんまりとして炬燵等など和風な部屋が彼女を迎える。

 

部屋に入った彼女は扉を閉じて鍵を締めてから帽子を取って壁に付けてあるフックに掛けてから制服も丁寧に脱ぎ埃や汚れを落としてからハンガーに掛けて帽子の隣に掛ける。それからオフ時の楽な服装に着替えた彼女は炬燵に入るのだがその炬燵には和風のこの部屋を根底から否定する文明の機具、ヴァニラが持ってそうなパソコンとそのモニターに繋がれているのは液晶ペンタブレットと呼ばれるそれ

 

「ふぅ、さて今日の作業を進めないと……うぅ、締切まで後何日だっけ?」

 

そして極めつけは彼女のこのセリフ、これが彼女の裏の顔、もといもう一つの顔、四式自動小銃は【漫画家】なのである、週に一度更新という形でネットに【ひだまり日記】というタイトルでこの基地をモデルにした日常漫画を書いているのだ。

 

だが基本的に描けるのは業務が終わってからの時間であり、夜勤業務の日は仕事の時間までしか描けない。更にはこの事は誰にもバレてはいけない事なのでこれを理由に寝坊やら遅刻やらは許されないので締め切りギリギリの更新になることが多々ある、この調子では今週もそうらしい。

 

だが嘆いた所で時間は止まってはくれないと彼女は気合を入れ直して自身の漫画家としてのスイッチに切り替える伊達メガネを掛けてからペンを動かし始める。

 

(今週は……アニスちゃん達の事にしようかな、結構人気だし)

 

慣れた手付きで絵を描いていく、出来る限りモデルが分からないようにだがよく見れば誰がモデルかが絶妙に分かる感じにキャラを描き、色彩を付け、また別のコマを描くというのを繰り返し漫画を形にしていく。

 

この【ひだまり日記】だがネットの匿名掲示板にて投稿されてはそれなりの人気を博しており、こんな基地あるなら配属されたいとかの感想もよく付けられるほどになっている、が上手いことこれを誰が描いているのかだけは伏せているので掲示板では作者は誰かで月に一度盛り上がったりもする。

 

(よし、この調子なら締切まで少しだけ余裕持って完成しそう、ふふっ皆の反応が楽しみだな)

 

所でだ、お気付きの人も居そうなのだがオンの時とオフの時の彼女に口調の違いがある、と言うよりも性格なども反転とまでは行かなくても変わる、本人曰く自分は自身で決めたこの姿の時はこう、と言う性格にスイッチが変わりやすい個体らしく、今は漫画家としての彼女、もし伊達メガネを取ればオフ四式自動小銃という事で割と引っ込み思案ような感じになり、そして制服に袖を通して帽子を被ればそれはオン四式自動小銃、つまりはユノ達がよく見る彼女になる。

 

オフ四式自動小銃と漫画家四式自動小銃の時は基本的に誰かと会ったり会話したりは殆どしない、夕食の時くらいならばオフ四式自動小銃で会話をしたりは少しはあるのだがそのキャラのギャップに当初は驚かれては空気を悪くしちゃ悪いなと帰ろうとして引き止められるなんてことがよく合ったりした。

 

(えっと、あと2コマか。ふ、うーん……休憩にしてご飯食べてから仕上げればいいかな)

 

この姿で誰かと会いたくはないけどと炬燵から出てから立ち上がって身体を少し解してからパーカーを着てフードを被り扉を開けてまずは顔だけを出して左右をキョロキョロ、誰も居ないと確認してから食堂へと歩き出す。

 

とは言っても自室付近は居なかったと言うだけでありこの基地において誰にも会わずに食堂なんてのは土台無理な話であり、来る途中にGSh-18とばったり出くわし

 

「お、四式やないか、その姿っちゅうことはもうオフかいな」

 

「は、はい、ご飯にしようかなって」

 

「ウチも丁度夕飯食べよう思ってたんや、やっと描いてるのに目処がついてなぁ」

 

彼女も実は漫画を書いており、四式自動小銃と同じく掲示板に上げていたりする、こちらは隠してはおらず公言もしている、これについては四式自動小銃もその度胸が少し羨ましいなとか思ってたり。

 

更に言えば彼女にだけでも公言して漫画家としての会話をしたいと思うのだがそうは中々行かないのが彼女の本来の性格、なので当たり障りのない会話で……

 

「所で、漫画は進んでるん?」

 

「……え?」

 

四式自動小銃、彼女の失敗を上げるとすればGSh-18の観察眼を侮っていたことだろう、この一言が切っ掛けでその日以降は四式自動小銃とGSh-18が何やら楽しげに会話してる光景が見られるようになったとか。

 

因みにどうして分かったのかと後日聞いてみれば

 

「多分あの日は出てくる直前まで描いてたんやろ、何かを思い出しては何やペンを動かす動きをしとったからそう思ったんや」

 

とのこと、四式自動小銃は無意識下で頭の中のアイディアを残そうと手を動かしていたらしい。




こう、仕事中と普段のギャップが有るって可愛いじゃない?

因みにこの基地の四式自動小銃ちゃんの性格ベースはお空の今年の干支キャラです、出ませんでした。

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