それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
あぁ面倒くさい、屋上にてTAC-50はそんな事を思っていた、忘れてはいけないが彼女はグリフィンからの配属された人形ではなく、IOPがトップを務める委員会からユノ及びP基地の監視のために送られてきた人形である。
なので定時連絡は欠かすことは出来ないのだがそれが彼女が面倒くさいという感情を抱かせる要因になっていた、というのも
「ですから、指揮官も、彼女のもとに集まっているハイエンドモデルも何の問題もないと申し上げています」
《では例の二人はどうだ、特にキャロルと名乗るダミーブレインは》
「問題あるように見えません、グリフィンからのデータ提出にも素直に応じてます。現状において再度敵対しようなどという動きは一切見られません」
淡々と答えるが向こうからの反応は妙に猜疑的であり、それにTAC-50は聞こえない程度の溜息を吐いてしまう、此処最近の定時連絡は大体こんなやり取りである、委員会はどうやらまだ彼女たちを疑っているようであり、また最近になって増えた二人【ノア】と【キャロル】の参入によってどうやら彼女たちが何かを企んでいるのではと思ってしまっているらしい。
馬鹿馬鹿しい、思わずそんな言葉を委員会の連中に吐きそうになるのをぐっと堪えながら報告を続け数分後、漸く終わるのだが、終わった直後にTAC-50は笑顔のまま
「頭硬すぎでしょあのクソ老人共」
「貴女にしては珍しい口ぶりね」
声がし見ればそこに居たのはAUG、何で此処にと思う前にそう言えば彼女もグリフィンじゃなくて委員会からとか言ってたなと思い出して、それについての話題に触れることにした、そもそも監視が役割というのならば自分がもう居るのにどうして事前報告なしに増やしたのかという疑問である。
「そうね、私は監視が役割じゃないわ」
「……へぇ、委員会も強引な手段を取るものね。下手したら大事なんて目じゃない事態になってたわよ」
「それほど彼女たちを危険視してるってことよ、と言ってもただ危険視してるってだけでもない気がするけど」
彼女が委員会から依頼された内容は至極単純に【P基地の指揮官、及びその傘下に加わったハイエンドモデル3体の危険性を調査後、委員会およびIOPに牙を向けると思われたら即刻排除せよ】はっきり言えば無理難題も良いところなのだが彼女に断るという選択肢はなかったので受け、はっきり言えば初めのノアとのエンカウントは偶然でも勘違いでもなく、真剣に殺すつもりだったりした。
しかし結果はあの通り、しかも【蜃気楼】もとい【フィオリーナ】の介入があり失敗、更に言えば
「私、あの日を境に委員会から依頼を取り下げられたのよね」
「……付かぬことをお聞きしたいのですが蜃気楼ってもしかして」
「知りたい?」
いいえ、死にたくありませんと冷や汗ダラダラに流し目を背けるTAC-50、どうやら相当やばい人物だというのが今のやり取りで分かる、あの諜報部ですら情報をマトモに集められない時点で物凄い人物だとは分かるのだが
「はぁ、いいなぁ私も委員会から正式にこの基地の所属に変わりたいです」
「ふふ、貴女はまだ暫く無理でしょうね、委員会も貴女の監視能力は高く買ってるでしょうし」
「高く買ってるならもう少し私の報告に信頼してほしいなって思うんですけど?」
そこは人間、しかも融通の効かない老人ってものよと返せばハァとまた大きな溜息が漏れる、あの無益すぎるやり取りにはそろそろ飽き飽きしているのが本音であり、いい加減そこら辺理解してくれないかなとか愚痴りながらガサガサと今朝m45が焼いていたメロンパンを取り出してマイメープルシロップを出してからたっぷりと掛けてから食べ
「はぁ、美味しい」
「貴女本当に何でもメープルシロップを掛けるのね」
「何でも合いますからね、寧ろこれが合わない料理あるんですか?」
真顔でそんな事を言う彼女にこれはそろそろストレスが限界が近いと見るべきなのかそれともこの人形はこうであれと設定されたのかと表情を崩さないで悩むAUG、趣味嗜好は人、人形それぞれだが理解できるかどうかは別である。
委員会からの雇われ組、まぁAUGは元が頭に付くが彼女たちが雑談している屋上にもう一人今日は来る人形が居た、丈が短すぎて見えてしまうのではないかと言われることも多々ある【Px4ストーム】
彼女も元々は様々な組織を金で雇われていた傭兵崩れ、過去には数度だけだがTAC-50と同じく委員会に雇われたこともあるらしい。
「おや、やぁお二人さん……お上に報告かしら?」
「そんな所です、ところでストームさん、どうにかして委員会から契約を切れる方法ありません?」
「開口一番にどえらい事聞かれたんだけど、まぁそうねぇ難しいんじゃない?私みたいに雇われで委員会じゃなくて初めからでしょ?」
ですよねぇとメープルシロップメロンパンを頬張る、Px4ストームとしては手段はなくはないのだがこの基地でやるメリットもなければ前準備が色々と面倒なのだ、なので今は大人しくしてるのが一番だという考え。
TAC-50もそれは理解している、それに言えばこの任務には報告への不満こそ大いにあるがこの基地に居られるという点だけで+に変換されているのでこの流れは本当にただの愚痴である、最後の委員会からの契約の切り方を聞いた時の声と表情だけは本気だったが。
「所でTAC、委員会からもう良いって言われたら貴女どうするの?」
「あ~、その場合も考えとかないと駄目かぁ、まだまだ先っぽいけど確実に来るだろうし、この基地離れたくないしなぁ」
ふと思い出したという感じにAUGがその可能性を提示する、確かに彼女がこの基地に居るのは何度も言っているが委員会からの命令であり、向こうが切り上げれば彼女は委員会に帰らなければならない、だが彼女としてはこんな居心地の良いホワイト基地を離れたくないというのも本音であり、だからこそなにか手はないかと模索していると
「その時になったら言いなよ、少し報酬は貰うけどなんとか出来ると思うよ」
「およ、ならその時になったら頼もうかな、まぁ何だかんだで委員会は信用しないと思うけど、それにAUGがさっき言ったみたいに何だか信用しない以外にも監視する理由があるっぽいのよね」
「知りたがりは長生きできないわよ?」
心得てますよ~と左目を起動、相変わらず仲の良い家族を楓月越しに見つめながらTAC-50は残りのメープルシロップメロンパンを口に入れるのであった。
この娘もこの娘で割と苦労してるんやなって……まぁ委員会から任務の切り上げが来るか来ないかで言えば来ないんじゃないんですかね(適当