それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
ユノとクフェアが妊娠した、その報告に喜びと衝撃が強すぎて言葉を発せない二人、それは相手側も同じである、がユノだけは前々からそんな気がしてたというのがあるのでまだ何とかえへへとほほえみ返すことが出来ている。
がクフェアはそうではない、無論D08で施された処置は信じていたし実際に417達を見て妊娠することは分かっていた、が心の何処かでもしかしたら、と言う考えが過ぎった時期があっただけに今こうして言葉で、結果で、自分が本当に妊娠していると分かりノアを見つめるその眼には涙が今にも零れそうなほどに浮かべられていた。
「ほ、本当に、デキたのか?」
「はい、はい!」
ここで漸くノアも言葉を飲み込み、絞り出すように聞けばクフェアは遂に涙を流しながら何度も、何度も力強く頷いて、だけど嬉しいとはっきり分かるように笑顔で答える。
見ればクリミナはユノの側まで向かい、視線を合わせてから、見つめ合い
「やりましたわね、ユノ」
「うん、えへへ、実はちょっとビックリはしてるけどね、でもあの日から何となく分かってたんだ、なんだろう、お腹が暖かいなって」
その言葉にクリミナは貴女らしいですわと優しく抱きしめ、ユノも答えるように抱き返す、とこうなると見事に蚊帳の外になる医療組だが流石に今の空気を壊すというわけにも行かないと言う感じの息を吐いてから、PPSh-41は人形の妊娠と人間の妊娠について事細かに書かれている資料を真剣に読んでいるリベロールに
「どうですか、結構覚えることは多いと思いますが」
「……はい、でもコレってあくまで基礎知識で後は臨機応変ってことですよね」
「よく分かってるじゃない、妊娠っていうのはその時々で違う、向こうでは全員無事に出産できた、でもそれが此処でも当てはまるとは限らない」
「えぇ、ですからリベロールコレは覚えておいて下さい、我々が慌ててはいけません、恐れてはいけません、自分たちがそうなれば二人に要らぬ不安を与え、余計にお腹の子に悪影響を与えることになりますと」
つまりは平常心が大事ってことよとSOCOMが締めればリベロールは一度頷いて、また資料を読み始め、それを確認してからPPSh-41は一度手を叩き視線を自分へと集め、若干浮かれている彼女たちに
「さて、まずは改めておめでとうございます、まさかこの基地で妊娠という言葉を指揮官達に向けて言うとは思ってはなかったので少し嬉しいですね。が、ここからは少し真面目なお話をしましょう」
PPSh-41の真剣な声と表情にユノ達全員が体を直し、話を聞く姿勢になる。彼女がこう告げる時は自分たちに本当に重要で大切な話をする時、何よりも彼女たちも分かっている、妊娠で喜んでばかりでは駄目だと、これから自分たちはこのお腹に宿った命を育み、守らなければいけない身になったのだと
「(空気が変わりましたね)恐らくはシーナさん達からお話を聞いているとは思います、向こうで幾らかの事案が出たとは言えまだまだ人形の妊娠は情けないですが私達でもまだ解明できてない部分があります、無論私達も全力でサポートに入りますがお二人も互いに気付いたことがあれば欠かさずに話して下さいね」
「はい、確か人形の妊娠って普通よりも成長が早いんでしたよね」
「妊娠から出産は5ヶ月、なので発育をサポートする栄養カプセルも後で支給しますので毎食後に必ず飲んでください、悪阻などで吐いてしまった場合も飲むように」
とは言ったがクフェアの方はまだ彼女たちも幾らか余裕がある、やはりD08にて実際に携わったという経験が非常に心強いものになっているからだ、寧ろ問題なのは今回が初めてのパターンの妊娠となったユノとクリミナ夫婦である。
確かにユノには人間の妊娠の知識がPPSh-41とSOCOMは使える、では何が問題なのかと言えば
「これは後で情報部にも話しますが、指揮官が妊娠した、と言うのは出来る限り情報は秘匿します、まぁ話すのは繋がりのある人達だけだとは思いますが、彼らにもその話は外部でしないようにと念を押しますがね」
「え、まぁ気をつけるけど……?」
「『人間』が『人形』をではなく『人形』が『人間』を、と言うのが問題なのですね」
クリミナの言葉に静かに頷く、それはつまり人形がまた一つ、人間としての機能を持ったということに他ならない、となればもしこれが広まったりもすれば騒ぎ出すのは人類人権団体の過激派、それだけではない、彼女たちをよく思わない者達にとって指揮官の妊娠と言うのはそれだけでこの基地にとっては致命的な弱点となる。
故に提示するのはユノには外に出る際は必ず数人の護衛を着けること、自身も普段以上に警戒すること、出来ることならば
「外出は控えて欲しい、が本音ですけどね……今はまだいいのですがお腹が大きくなってから出産後暫くまではこの基地だけの活動にしてもらうかもしれません」
「そうだね、確かにその方が良いかも。でもほら、皆が居るからさ、別に外に出れなくても寂しくはないし、この娘の為だもん、それくらいへいきへっちゃらだよ」
ブイッとVサインを作り笑うユノ、だがその心の奥ではやはり不安が眠っている、皆がサポートしてくれるがお腹の子を育てるのは自分であり、きちんと大きくなってくれるか、何か異常は起きないかと言うまだ未来の恐怖が。
クリミナはそれに気付いている、だから彼女はユノの肩に優しく手を置いてから微笑みかけ、ふと気付いた
「あの、いの一番に聞いて喜びそうな副官はどちらに?」
「副官さんなら先に聞いて、ペルシカさんに話をしてくるって執務室に行ったわ、随分と喜んでて今も帰ってこない所を見ると長電話のようね」
どちらにせよ今日はこのまま妊娠時についての勉強会となるのでナガンが戻ってくるまで二組の夫婦は真剣にPPSh-41達の話を聞いていく、その頃、噂のナガンはと言うと
《……と言う訳だ、明日一度そちらに出向いてユノとノアには話をするけどね》
「本気、なのじゃな。言うなればお主に大きな弱点を作ることになるぞ」
妊娠報告の和気藹々な雰囲気、ではなく何か重大なことを聞きそれについて再度問いかけるナガン。対して映像通信の相手であるペルシカも彼女にしては珍しいと言えるほどの真剣な表情でナガンを見据えてから
《無論だよ、だけどあの娘達とその子供たちを守るとなればこれが最善だ、いくらその基地と指揮官であるユノをグリフィンにて最重要『早期警戒管制基地』とその基地の『特務指揮官』にしたとしても後見人程度の後ろ盾じゃ防ぎきれないだろうからね》
「だから、ユノとノアを……お主の『養子』にし己を母親と定義して強固な壁になる、とな」
不敵な、そして同時に母親のような笑みを浮かべるペルシカにナガンは大きく息を吐く、明日はまた騒がしくなるなと
なんか色々と最後にぶっこんできたけどお前明日大丈夫?書ききれる?(不安
まぁ最悪、後書きでなんとかするか!(白目