それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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まずはヘリアンさんからのお話


足場を漸く固める

『明日、ペルシカがこの基地に来てお主らに重要な話をする』

 

妊娠発覚した昨日、執務室でペルシカとの通信を終えたナガンが医務室に来て改めて祝いの言葉を告げてから、伝えてきた、その時の表情は作戦時のそれに近く、ユノだけではなく、クフェアもクリミナもノア、いや、医療班も思わず姿勢を正してしまうほどだった。

 

話の詳しい内容はその時になったら彼女から直接聞いてくれと言われ聞かされてはおらず、しかし重要な話となればまず浮かんだのは

 

「もしかしなくても妊娠したってことからの派生だよね」

 

「だとは思いますわ、しかし副官が彼処までの表情と雰囲気から考えるにただ祝辞を述べに来る、と言う感じではありませんわね」

 

なにか悪い話じゃなければいいけどとお腹を擦りながらユノが呟く、そして翌日、正門前で出迎えようかとしたのだが態々寒空の下で無駄に身体を冷やすなと釘を差されユノ、ノア、ナガンの三人は執務室でその時を待っていた。

 

誰も何も喋らない空間、普段であればユノはそんな空気も関係なしに話しかけるのだが今回はナガンから来る何とも言えない緊張感漂う空気に喋るのは悪いよねと思ってしまっている程であり、ノアも同じ様に話すに話せないこの空気にG36が用意したコーヒーを飲んで気を紛らわそうとする。

 

《こちらカリーナ、ペルシカさんと……え、あ、すみません、ヘリアンさんもお見えになりました、そちらにご案内しますね》

 

「お願い、ナガン、今日はヘリアンさんも来るって聞いてたの?」

 

「いや、わしはてっきりペルシカだけかと、いや、そうか、だとすればヘリアンも必要か」

 

「婆ちゃん、何か知ってるのか?」

 

ノアの質問に少し考えた後、まぁなと短く答え口をつむぐ、それをやられるとこれ以上は聞けないのではぁと何度目か分からない溜息を吐いてからまたコーヒーを飲み、ユノも緊張をほぐそうとお茶を飲もうとしたタイミングで扉がノックされ若干慌てながら湯呑を置いて、即座に息を整えてから答えれば、扉が開かれカリーナに続いて入ってきたのはペルシカとヘリアン、両名はまず三人を見てから

 

「やぁ、ふふっそうだね、まずはおめでとう、かな」

 

「よもやこの基地から妊娠だ何だという話が来るとは思わなかったよ……」

 

ペルシカは嬉しそうに祝いの言葉を告げれば、ヘリアンは何だか疲れたような口ぶりと声でそう告げる、と言うよりも実際疲れていた、昨日ペルシカからユノとクフェアが妊娠したと聞かされた時は数十秒ほど固まり、それから大騒ぎになっていたからだ。

 

別に先を越されたからとかそういうのではない、ユノが妊娠したということで彼女の立場が一気に危ういものに化けてしまったからだ、そしてそれが今回の本題。

 

「さて、本当ならばもっと色々と世間話でもって感じだけど、先に本題を終わらせようか、まずはヘリアンからでいいよ」

 

「と言うよりもこちらが先じゃないと話にならなくなるだろう。さて、今日私が来たのは祝辞を述べに、と言う訳ではない、元々今日は私は来る予定だったのだからな」

 

「え、もしかして何か機密性の強い任務ですか?」

 

ヘリアンが通信ではなく態々出向いてきたということで考えられるのはとユノが聞くがそうではないと首を横に振り、一枚の書類を彼女たちに提示する、そこに書かれていたのは……

 

「S09P基地をグリフィン管轄の最重要基地とし、『早期警戒管制基地』に指定?何だその早期警戒管制ってのは」

 

「早い話が今まで行っていたナデシコからの監視、あれを無理やり正式名称を付けただけだよ」

 

「グリフィンの一基地、とするには色々と大きくなり、何よりもやってる業務内容がそれでは無理があるとなってな、ならばいっそそういう基地にしてしまおうと上層部とクルーガー社長の声で決まった事だ、そしてユノ指揮官、貴官をこの基地の『特務指揮官』に任命する」

 

スッと出されたもう一枚の書類、それに書かれていたのは確かに『ユノ・ヴァルターを特務指揮官に任命する』と書かれてはいるのだがユノにとっては全く聞いたことのない言葉であり、急に色々と入ってきた急展開な情報に若干眼をグルグル回しながらも気を取り直して

 

「と、特務指揮官?なにか普通の指揮官とは違うんですか?」

 

「あまり大きな変化はないよ、言うなれば君にちょっと肩書きを付けて他の指揮官と少し違うってことを示すって話さ、まぁ本社からの正式な辞令ではあるので仰々しい物になってはいるけどね」

 

「適当を言うなペルシカ、今回の辞令にあたり変化は少なからずある、一つ上げるとすれば年に一度の指揮官会議に参加してもらう、と言っても基地を離れる訳には行かないだろうからナデシコからの通信で構わない」

 

「コヤツをあの意味があるのか分からん会議にか?下手な反感買うだけじゃぞ」

 

「と言うかこの能天気バカに人前で喋れるってのか?」

 

散々な言われ方にとても微妙な顔を晒すユノ、だが二人の懸念は確かであり、特に指揮官会議となれば何だかんだで顔を合わせて言葉を発せなければならないので出来るかなぁとは思ってたりもする。

 

だがこればかりはヘリアンもでは免除とは言えないので何とか慣れてくれとしか言えない、因みにペルシカも同じ様に思っているので曖昧な笑みを浮かべるに留めている、と言うよりも下手に突けばじゃあお前が変わりに出ろとか言われそうなので黙っているが正解だったりする。

 

「ふむ、読んだ限りじゃとその指揮官会議以外はこの基地も指揮官も本当に変化は無さそうじゃな」

 

「だからそこまで深く考えなくてもいいよ、と言うよりも今までこういった肩書きも何もなかったのが問題ではあるからね。でもコレで少しは周りの動きも牽制できるし、何よりも上層部の一部も黙らざるを得なくなったのは間違いない」

 

これが今回、上層部と社長が決定に踏み切った理由である。ナデシコ稼働から段々とP基地への風当たりが強くなり始めたことを懸念し、この基地の過去の功績、今の業務内容、それらを上げもう一基地として扱えばそれこそ不満が出ても不思議ではないと上げて漸く通り今日になる。

 

とまぁ、詰まる所この基地はグリフィンから『レーダー施設』だったのを『グリフィン基地』として扱うようになったということであり、ただ一つ問題を上げるとすればP基地が急に本社でも名前が扱われようになったために、寧ろこの基地今まで何故無名だったのだと騒ぎが起こったとかなんとか。

 

「これで私からは終わりだ。でペルシカ、お前の話って何なのだ?」

 

トントンと書類を纏めながら隣のペルシカに聞けば彼女は一度深呼吸してから、ユノ達を見据え一枚の書類を出し、ユノとノアが覗き込んで

 

「「養子縁組……?」」

 

刹那、養子縁組!?と言う二人の少女の叫びが執務室に轟いた。




今日でペルシカさんの話行かなかったんですけど!!!???

あ、はい、今後P基地は『早期警戒管制基地』という妙に長ったらしい肩書きとユノっちに『特務指揮官』と言う立ち位置になりましたっていう話です。

次回、ペルシカさんからの養子縁組のお誘い

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