それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
叫びが轟いた執務室、それはそうだろう、誰がそんな話を予想できるかというのだ。それはユノとノアは勿論、隣のヘリアンも同じであり彼女が出した書類を見て眼を丸くし、それからどういう事だと彼女に視線を送れる。
確かに彼女は二人に話があるとは言っていたがよもやそんな大掛かりなことだとは思って無かった、だがその顔は決してその顔が見たかったとかいう彼女特有の悪戯などではなく、真剣そのものであり、本気でユノとノアを自分の養子として迎えたいというのは嫌でも感じ取れた。
同時にペルシカらしくないという感情も抱いた、何と言うか焦っていると、そんな風にも思えた。
「な、何で養子縁組を?」
「必要なことだからだ、君たちの今後を考えれば絶対にね」
「何がどう必要だってんだよ、そもそもアタシはオメェを『母さん』って思ったことなんざねぇぞ」
刺々しいノアの言葉だが、彼女にとって母親はレイラであり、ユノならまだしも自分はそんな事一切思ってないとばかりに切り捨てるように告げる。
だが向こうは怯まずにコーヒーを一口飲んでから、ふぅと息を吐き
「……もしこれがユノとクフェアの『子供』を守るためだとしても?」
「え?」
「確かに君たちはレイラの子供、だけど戸籍上は未だに君たちは孤児だ、保護者と言う立場の後見人で私が居るけど壁としては弱いんだよ」
「だからそれが、いや、そうかクソがっ!」
ガンッ!とテーブルを叩き悪態付くノアに何がどうしたのかと驚くユノ、今の会話から何を気付いたのかは彼女には気づけていない、だがペルシカが言うには間違いなく必要なことなのは確かであり考えるがイマイチ結びつかない。
だがヘリアンとナガンは繋がったらしく、こちらも何だか苦い顔をしまだ答えにたどり着けていないユノに痺れを切らしたノアが
「もしこのままガキを産んだらそのタイミングで性根腐った偉い奴らがオメェやクフェアのガキを人質にする為に奪いに来る、手段は……なんかあんだろ、それこそ検査だ何だって言われりゃ唯の基地と指揮官じゃ抵抗なんて出来ねぇ」
それはペルシカやヘリアンが居たとしても変わらない、あくまで彼女たちは後見人であり、委員会からの言葉となればどうしても防ぎきれない部分が出てきてしまい、その穴を彼らは突いてくる。
故に直ぐにでも強大な壁が必要、そして今回の養子縁組はその壁の役割をペルシカ本人が担うという話になっているのだ。
「君たちが私の養子、つまり娘という立場になってくれれば私は母親として壁になる、もし君たちに手を出すのならば私は手段を問わず徹底的に抵抗するって脅しを込めてね」
「でも、それってペルシカさんにも負担が大きいんじゃ……」
「それにじゃ、通信でも言ったがお主に娘二人という弱点が出来ることにもなるぞ、二人を使えばお主を動かせる、と言った具合にな」
ナガンの言葉もごもっともであり、決してこの養子縁組がメリットだけの話ではないというのはペルシカ本人も分かっている、分かってはいるがだからと言って何も動かないという選択肢は彼女には取れなかった。
今までのらりくらりと誤魔化し交わし続けていた感情、衣食住を共にし勉強を教え、何だかんだと親子のように過ごしてたあの時間、今はこうして離れて過ごし、それでも彼女から来る通信を楽しみにし、来れば掛け値なしの喜びの声で会話を楽しむ。
そんな日々を続けて、持つなという方が難しい感情、そして昨日、ナガンから彼女とその妹のパートナーの妊娠を聞いた時、ペルシカはいつか必要になるかもとらしくないことを思って隠していたこの書類を急いで取り出し記入をした、でなければ彼女に将来不幸が訪れると。
「これくらいどうってこと無いさ、それに今更弱点が増えた所で私が揺らぐわけでもないし、二人だって簡単に遅れを取るような娘達じゃないからね、それよりも君たちに、その子供たちに何かある方が私には辛いよ」
「ペルシカ、いや、お前が人形とか以外でそこまで強く語るなんて初めてみたな」
「自分でも驚いてる、だけどそれくらい本気だってことさ。で、どうかな、勿論君たちの本当のお母さんはレイラだ、だからこれは書類上の関係ってことでも構わない、ただ……ノア?」
「ちょ、まだ話の途中だよノア!!」
言葉の途中、ノアが急に動き出して執務室の扉に手をかける、それはどう見ても出ていきますという行動にユノが即座に引き止めるように声を掛け、カリーナも止めようと動くがその前にノアがペルシカに顔は向けずに
「アタシは、オメェを母さんとは認めねぇ……認めねぇが、クフェアを、そのガキを守るって、何があっても二人を引き裂かれることがないようにするって約束するなら、アタシは何も言わねぇ」
「あぁ、必ず約束する」
「なら、いい。クフェアの所に行ってくる」
それだけを言い残して彼女は執務室を出ていく、その様子にユノがアワアワとしながらペルシカとヘリアンに頭を下げる。普段の彼女であれば絶対にしない行動、つまりはノアも動揺していたのだ、ただ言葉だけではなく、表情に、声に、ペルシカが本気で自分たちの母親としてあろうとしてることが分かってしまって、どう彼女を見れば良いのか分からなくなってしまい今の行動に移ってしまったのだ。
「いや、大丈夫だよ。あまりに急な話だから動揺したのだろうしね、でユノ、君もこの話で進めていいかな?」
「あ、はい、大丈夫です、それにペルシカさんがそこまで行ってくれたのにそれで嫌ですって言えるわけないじゃないですか」
「確かにのぉ、わしもそこまで真剣な瞳のお主は初めてじゃぞ」
ナガンの言葉に、さっきのヘリアンと言いちょっと酷くないかいと苦言を漏らすペルシカに思わず笑いが溢れるユノ、それから養子縁組の書類に自分と出ていってしまったが同意は得られたのでとノアの名前を記入し返せばペルシカは何度も読み直して一つ頷いてから書類を持ってきたケースに仕舞い
「じゃあ、今日中に書類は出してしまうよ、恐らくは数日程度は掛かるだろうけど申請自体は通ると思うから、その時にまた連絡するよ」
「私も今回のことをクルーガー社長に伝えるのでそろそろ戻る、ってしまったキャロルの事を忘れていたな……」
こうしてバタバタと衝撃が走った会談は終わり、見送りくらいはと正門前まで向かう途中、ペルシカはユノに呼び止められた。
見れば少し俯き何かを迷う様子の彼女に、ヘリアンとナガンに先に正門前に向かってくれと伝えてから視線を合わせ
「どうしたのかい?」
「えっと……その、ぺ、ペルシカさん、あ、あの今後、その、休みとかの時、お、お母さんって呼んでもいいですか?」
正直に言えば驚いた、確かに一度は間違いで自分をお母さんと呼んだ彼女だが、あれから本当の母親、レイラの話を聞いてからはそんな事はめっきり無くなり、自分をそう見てることはないだろうなとすら思っていたからだ。
だけど、今の彼女の言葉は恐らくは本気だ、だからどうしてと思って聞いてみれば
「だって、私に色々教えて、沢山話しかけてくれて、優しいって初めて感じたのはペルシカさんからだったから、もちろんレイラお母さんもお母さんだけど、ペルシカさんも同じくらいに私にとってはお母さんなんです、だから」
呼んでもいいですか?真っ直ぐとした瞳と言葉にペルシカは優しく笑みを浮かべ頷いてあげ、その日はその後何もなく彼女たちは本社へと帰っていった。
後日、ペルシカより連絡が入り無事に申請は通り晴れてペルシカとユノとノアは親子関係になった、なったが
「相変わらずノアは私に刺々しいんだよね……」
「あはは、でも偶にペルシカお母さんのことを悪くはないって言ってますよ?」
そんな会話をする親子に良かったですわねと微笑むクリミナであった。
こんな感じですがペルシカさんとユノとノアは親子関係になりました!因みにキャロルちゃんは
「俺は断る、そもそも必要ではないからな」
とのことでした、はい。