それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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情報部が少なすぎるってそれいち


駒は上手く使ってくれよな?

カランカラン、聞き慣れた来客を告げるベルの音にグラスを磨く手を止め視線をそっちに向ければ居たのはまだ見慣れないという印象が強いナガンの姿、向こうはその視線に何か思うわけでもなく普段どおりにカウンター席に座り

 

「コニャック、頼めるか?」

 

「畏まりました、すぐにご用意いたします」

 

ここはBAR『スプリングフィールド』何時もと同じ様に業務に疲れた者達が、日常に少し癒やしを求める者が来て酒と会話を楽しむ空間

 

無論だが客は彼女だけではない、他のテーブル席にはこの基地の人形達が各々会話を楽しみながらお酒を呑んでいる、その中でもカウンター席に座るという人物は大体がマスターであるスプリングフィールド改め、クリスマス以降は【イベリス】と名乗ることにしている彼女と少々深い話をしたいという人物である。

 

「どうぞ、コニャックです」

 

「うむ……して、ヴァニラとはどうなのじゃ、イベリス」

 

「どうと言われましても、あれから変わらず仲良くしてますよ?」

 

言葉と声だけならばもう平然と返しているように見えるのだがナガンの眼にはきっちりと若干照れているさまがよく見えた、なのでその返答にそれは良かったと笑いながらコニャックを飲む。

 

何時呑んでも確かな味と品質のそれに舌鼓を打ちつつ、はぁと漸く一息つけたとばかりに息を吐いた、たった2日、されどその一日の内容が余りにも濃すぎた、それは勿論

 

「それにしても、二人同時に妊娠は驚きましたね」

 

「呵々、若いと言うのはこういう時も思い切りが良いからのぉ、じゃがまぁ孫の顔が見れるというのは嬉しい報告ではあるがな、しかし……」

 

「しかし?」

 

「問題は山積みじゃよ、二人の妊娠は祝福することなのじゃが周りがそうではない、今後はまた諜報部はフル稼働じゃろうな」

 

カランとグラスの氷を遊ばせ憂いを帯びた表情で呟く、ナガンの言う通り二人の、特に指揮官であるユノの妊娠と言うのはそれだけで大きな波紋となっているのは確かであり、だからこそ今日ペルシカからユノとノアを養子縁組にするという話まで飛んできたのだ。

 

聞けばペルシカもあの手この手で情報を秘匿しつつ、信頼できる場所に何かを頼んでいるらしい、時が来たら教えるとは言っているが果たして何処の誰に頼んだのやらとナガンは思いつつ、自分たち諜報部も実を言えばもう動き出している。

 

FMG-9とG17、そしてMDRには今回の情報の秘匿の徹底とこの基地へ何かしらアプローチを考えている存在への牽制と情報収集を、他の面々には何時でも動けるようにと裏側からの基地の防衛の強化を。

 

「今現在でこの事が漏れた等の話は来てはおらぬが、それも何時まで保つやら」

 

「人の口に戸は立てられない、流石にずっとは難しいですからね、ヴァニラさんもFMG-9に頼まれて動いているようですからそんな直ぐに、ということはないと思うのですが」

 

「まぁバレたらバレたらじゃ、その時までにこちらで準備を万全以上にしておくだけなのだがな、すまぬ、お代わりをくれ」

 

直ぐにと空になったグラスにコニャックが再度注がれ、また呑み始める。因みにだがP基地及びユノと繋がりがある基地には既に今回の妊娠の事は伝わっている、と言うよりもユノがいの一番にD08のシーナに繋げ、何を思ったのかその時にペルシカまで通信に介入、結果

 

「向こうには妊娠ついでにペルシカとの関係まで伝わっておる」

 

「それ大丈夫なんですか?いや、向こうも似たような感じなのでこの事がどれだけ大きいことかは理解してるでしょうけど」

 

「問題ないじゃろうて、それに向こうは向こうで大変そうだしな……まぁそこらはFMG-9とヴァニラが【ネクロノミコン】でも使って手伝うじゃろうて」

 

なので諜報部の中でもFMG-9達は割と多忙になっており、これには流石のカリーナも締め切りは暫く設けませんので頑張ってくださいと同情の念を送るほどだった、この自体にナガンもまた人員を見繕うかとは思うのだが

 

情報という面での人形となると中々見つからないし、よしんば居ても既に他の組織なり基地に所属しているというのが大半、となれば

 

「一から育てるしかないか?イベリス、何か心当たりがある人形は居らぬか?あぁ、スリーピースは駄目じゃぞ、出来そうで怖いが」

 

「言いませんよ、ですが私もあまり心当りは……情報収集と言うのならPx4さんはどうでしょうか?」

 

「アヤツにはもう頼んではあるが、コンピューター関連はそこまでではないらしい、Vectorも同じことを言っておるから本当のことだろ、しかし三人のままで良いという部門ではないよなぁ」

 

寧ろ今まで三人無いし、ほぼFMG-9一人でどうにかなってたのが凄いと思いますよと思いながら他の客の注文を用意するイベリス、しかいこの基地は他よりも人員が多いのだからそういった方面で強い人形がまだいても可笑しくないんですけどねとも考えながら電脳を漁って何かその辺りを話していた人形が居なかったかと思い出そうとする。

 

ナガンも確か他にも居たはずだよなぁと記憶の海に潜ってい行こうとしたタイミングでカランカランとまた来客を告げるベルが鳴り二人がその方向を見た時、ナガンは思い出した、彼女だと。

 

その人形の名はXM8、来たのは最近、妊娠発覚の少し前でありキャロルが彼女を見てトゥーマーンを思い出して申し訳ないという表情になり、ルピナスとステアー、そしてアニス達四姉妹からは何故か警戒され、最後には

 

「やぁ……って」

 

「ア、いや、ち、ちち、違うんでで、です!!えっと、その、ご、ごめんなさい!!」

 

シャフトに非常に怯えられ逃げられたことは彼女に心に深い深いキズを作ったのは語るまでもないだろう、まぁその日の内にシャフトから勇気を出して謝って普通に会話をしていたのでその傷もすぐに消えたのは幸いである。

 

兎も角彼女なのだが、FMG-9とヴァニラの二人に比べれば多少劣りは出るのだがそれでも十分に即戦力になるほどにシステムに関しては強い、なので早速XM8を自身の隣に呼び座らせてからその話をしてから

 

「と言う訳じゃ、頼めないかの?」

 

「私の価値が活かせるなら喜んでだ、それに言ったろ、私は指揮官と副官の駒さ、あんた達が適材適所と思った場所だと思ったならただ指示してくれればいいさ」

 

ニタリという感じに笑ってから注文したお酒を呑み、ナガンもそれは助かるとコニャックを飲み干してからもう一杯を要求、こうして諜報部に新たな人員が配備されたが

 

「いやぁ、情報部って広報記事も書くんだな」

 

「ようこそ、修羅場がデフォの職場へ」

 

先輩方のキマった表情を見て少しばかり後悔したとか何とか




身に覚えが無いのに怖がられたり警戒されたりするXM8ちゃん可愛そう……

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