それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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ジャージってだけで色々残念な属性が付属されるの凄いと思う


外に出なければ基本ジャージ少女の一日

この基地に居候として住むようになりかれこれ数週間となったキャロル・エストレーヤ、今日はそんな彼女の日常の一部をお送りしよう。

 

研究部門の数箇所あるラボ、そこの一室が彼女の自室でありまた職場でもある、一応あれから出撃も多少なりとあったりするし外出も半ば強制的にユノ等に引きずり出されたりするが基本の彼女はインドア派であり外に出て何かをするということにはあまりいい顔をしない。

 

「……」

 

時間にして早朝も良いところ、まだまだ日が昇るにはまだ早いという時間に自室に居たキャロルは何か資料を見つめ、パソコンに纏め、データを検証し、結果を見てから修正を施しまた計算をする、そんな事を続けている。今行っているのは何時ぞや89式が開発し今も基地で割と役立っているJrAR小隊のデータ、彼女はあれを見て思った、もしかしたらコレを流用すれば彼女たち、あの作戦で、そして最後に自分を生かすために戦い散っていったあの者達を復活させることが出来るかもしれないと。

 

スユーフ、ダラーヒム、トゥーマーン、ジャウカーン、あの四人を。

 

(だが、完全にあの日のアイツラとはならんだろうな)

 

確かに彼女たちのデータは遺体から回収はしているし今もドッグタグという形で所持してお守りにしている、それを使えば記録を引き継いだ彼女たちを作り出すことは出来るだろう、だがそれは決して『彼女たち』ではない。

 

いくら記録を持っていようと、それは同じ顔をした別人に過ぎない、それは彼女とて理解している、しているがそれでもまたキャロルは彼女たちと共に過ごしたいと思ってしまっている。

 

(今の俺を見たらあいつらは怒るだろうか……だがそれでも俺は可能性があるのならば、何よりもアイツラが居ればいざという時に助けになるだろう、その点で見ても居たほうが良い)

 

しかし、だからと言ってぬいぐるみそのままで生成するわけには行かない、キャロルが目指すのは戦術妖精と言われる存在と同じ様に人形達とともに戦場に出てサポートできるレベルの装甲に、機動力、更にはトゥーマーンとジャウカーンの様な特殊な能力も兼ね揃えなければならない。

 

そのために彼女はこうして開発を進めている、いざという時に不備が発生しないようにと丁寧に丁寧に何度もシミュレーションを行い、また修正をする、という事をかれこれ昨日の夜から睡眠も忘れ、時間も忘れ、ピピピッというアラーム音で時計を見れば

 

「む、もうこんな時間だったか……スユーフが居たらどやされていたな、結局寝てないではないか」

 

やってしまったという声で呟いてからキャロルは資料を一旦纏めてから身だしなみもそこそこにラボを出て、朝食を食べるために食堂へと向かう、睡眠などには相変わらずな無頓着っぷりを見せるが食事に関してはまだきちんと取ろうとしている辺り教育はしっかり行き届いていたようだ。

 

と、このまま朝食を摂り、本日の予定と業務を終えまたラボに籠もる、と出来るほどこの基地は甘くはない、無論それは悪いことが起きたということではないのだが、いや、キャロルからすれば悪いことかもしれないのだが。

 

「(今日は特に何か大きな予定はなかった筈だな、ならばいつもどおりアーキテクトの手伝いをし、それから)ぬおっ?」

 

「はぁい、キャロルちゃん」

 

考え事しながら食堂までの道を歩いていると突如背中から抱かれそのまま抱え上がられる、こんな事をするのは一人しか居ないと顔だけを動かしてみれば予想通り、ウサ耳のようなリボンが特徴的なFive-sevenの姿、その顔はとても満足げな笑みを浮かべていたとか何とか。

 

「何だ、それと毎度毎度、俺を見かける度に抱え上げるな」

 

「これから朝食ならご一緒しようかと思ってね?それとキャロルちゃん抱え上げやすくて、ついついやりたくなるのよ~」

 

俺は愛玩動物か何かかと思うがこのやり取りは初めてではないので口にしない、と言うよりも一番初めにコレをやられた時にそれを言って返ってきた答えは愛玩動物みたいで可愛いから仕方ないわねという慈悲も情けも欠片もない言葉に目が死んだのは記憶に新しい。

 

なので彼女は悟った、だったらこいつの好きにさせてしまおうと、そして何も反応を見せずに居れば飽きるだろうと……思っていた

 

「何を食べるのかしら?言ってくれればお姉さんが持ってくるわよ」

 

「……オムレツ」

 

Five-sevenは全く飽きずにニコニコ笑顔のまま抱き抱えそのまま食堂に、そしてキャロルを座らせて先程のセリフ、つまりは彼女に無抵抗に抱き抱えられるキャロルは食堂に居た面々にバッチリ見られ、彼女の眼は見事に死んでいた。

 

諦めきったとも言えるだろう、そんな彼女に気付いていないのか、それとも気付いた上でスルーしているのかFive-sevenは彼女のリクエストを聞いてからその料理を取りに行き数分としないうちに戻ってきて

 

「じゃ、冷めない内に食べましょうか」

 

「はぁ、お前なんで俺に此処まで構う」

 

「勿論、貴女を気に入ってるからよ、じゃなきゃ此処までやらないわよ私は」

 

遂に聞いてみれば返っきてきたのはその言葉、しかもさも当然でしょと言わんばかりの声であり、別段何か特別なことではないと聞いたものの殆どを思わせるような感じなのだがキャロルは違った。

 

その言葉と声を聞いた時、彼女の脳内に放浪してる時に記憶がフラッシュバックする、あれは食料などを補給しようと寄った街の雑貨屋、そこで出会った店番をしていた一人の人形、これから夜になるのに一人で出歩くのは危ないからと店長を説得して一晩泊めてくれた時はこの怪しい自分にここまで優しく出来るとは変わった人形だと考えていたのだが……そこまで思い出して記憶に蓋をした、あれはきっと悪い夢だったんだと言い聞かせる、朝、自身のワイヤーに縛られ床に転がるも何か怪しい笑いをしていた人形なんて居なかったのだと。

 

「食べないのかしら?ネゲブの作ったのだから残すと怒られるわよ」

 

「食べる、食べるが57」

 

「ん、何かしら?あ、またワッフルの腕上げたわねあの娘」

 

とりあえず、この釘は刺しておこう、意味があるとは思えないが、そんな事を思いながらリエージュワッフルを楽しむFive-sevenにキャロルはオムレツを一口に切り分けてから口に入れる前に

 

「俺は、そっちの気は無いからな」

 

「知ってるかしら、無くてもその気にさせる術って結構あるのよ」

 

朝食後、ニコニコ笑顔のFive-sevenとまた死んだ眼で抱き抱えられアーキテクトのラボまで運ばれるキャロルの姿が目撃されることになる、尚コレは余談なのだが食堂に向かう途中Five-sevenはキャロルに

 

「所で、なんでジャージ姿なのかしら?」

 

「悪いか?動きやすく汚れても構わない服とカリーナに注文したらコレを寄越してな、中々に着心地もいいから部屋に何着か用意……57、どうしたそんな駄目だこいつという顔をして」

 

「いいわ、後でお姉さんがオシャレについて教えてあげるから」

 

俺に必要だとは思えないのだが、そんな声が響いたとか。




キャロルちゃんは基地に居る時はジャージを気に入った模様、多分アイツ客が来ててもジャージだぞ、ジャージの上から白衣とか着始めるからなそのうち

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