それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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街では少し有名の移動式屋台、毎週違う品物に皆が心を踊らせて通う


スチェッキンの移動式屋台

「は~い、スチェッキンさんの移動式屋台、今週も街にやってきたよ~」

 

基地から一番近い街のメインストリートに【スチェッキンAPS】の声が響き渡る、彼女の言う移動式屋台は週に一回、街に来ては毎回違うものを販売する、今回は【m45】が屋台の中で焼いたばかりのパンが商品で朝という時間からか朝食に買っていこうと言う客でそこそこ賑わっていた

 

そして何時もなら彼女と今日のように料理系列の商品の場合は料理担当の戦術人形、一応の護衛の戦術人形、今回は【トンプソン】だけの屋台に今日は非常に珍しい人物がそこに居た、絶対に慣れてないのが丸わかりの接客と動き、微妙に硬い笑顔、平時より極端に少ない口数、何時もの軍服ではなくm45と似た感じの服装で屋台の手伝いをするのは指揮官だ

 

と言うより司令部で執務室で仕事をしていたら半ば拉致に近い形で屋台に連れ込まれそして接客をしているというのが彼女の認識である、その時のM1895の顔は頼んだぞという感じだったので彼女は知っていたのだろう

 

(うーん、ナガンに頼まれて連れては来たけど多分これ以上の改善は無理じゃないかなぁ)

 

四苦八苦しつつ接客をする指揮官を見てスチェッキンは厳しいながらそう感じていた。確かに少し前のナガンの曰くコミュ障状態だったら今の状況だったらキョドりにキョドってパニックになってただろう指揮官が今は何とか接客をしてレジを流してはいる、がそこまでだ、客からのたまに来る世間話には一言で終わってしまうのをトンプソンがフォローしているのが現実だ

 

もし副官がそれ以上を求めるであれば改善ではなくて演技力を鍛えることになるよね~と腕を組みながら結論を出しとりあえず二人の援護に入ることにした

 

「どうだい指揮官、偶にはこういった経験も悪くないだろ?」

 

「わ、悪くは、無いと思うけど……」

 

「ごめん、意地悪な質問だったね。あ、おじいちゃん今回も来てくれたのかい?」

 

「ああ、パンの良い匂いにつられてね、そっちの子は新人さんかい?」

 

「いいやぁ、秘蔵の看板娘さ!まぁ、人見知りが激しいのが玉に瑕だけどね」

 

看板娘って何!?と今日一番の表情の変化を見せれば常連のお爺さんも呵々かと笑う、どうやら表情の乏しさに何か事情があるのではと心配をかけていたらしい、だがお爺さんが会計を済ませてまた別のお客さんが来るとそれも鳴りを潜めてしまう

 

「上手くは、行かないもんだね」

 

「ボスにこれ以上を求めるのは難しいだろうさ、それよりも今をサポートしてやるのが先決だろ?」

 

それもそうだと二人はまた四苦八苦してる指揮官の援護を始める、そのかいあってかレジが行列になると言った感じも無くパンは順調に売れていきそして

 

「あ、今ので最後」

 

「おぉっと、ごめんね~本日のスチェッキンの移動式屋台、完売御礼で~す!」

 

「今日は一段と早かったな、看板娘のお陰ってやつかい?」

 

また来週のご来店、心からお待ちしておりま~すとスチェッキンが締めれば屋台に集まっていた客は皆帰っていく、その場で美味しく食べていた人も居たがあとは各々家で食べるのだろう

 

指揮官もそこでふぅと屋台に座り込み一息、すると彼女の目の前に二人の青年が近寄ってきて

 

「ねぇ、今日はもう暇だよね、これから俺たちと遊びに行かない?」

 

所謂、ナンパだ。グリフィン戦術人形を率ていた彼女をナンパするというのは中々に肝が座りすぎている気がしなくもないが指揮官とは全員が言わなかったので本気で新人さんだと思われているのかもしれない

 

だがナンパは相手が悪かった、これ以上改善できないほど改善されたとは言えそもそもにして実験の後遺症で人を人として見えてない彼女の視点では青年だろうが子供だろう『身長が違うだけの顔が同じで人の言葉を話すマネキン』としか見れない、そしてヘリアンやペルシカ、カリーナと言った一部例外的存在とは普通に会話できるのだが

 

「……えっと、お断りします」

 

このように知らない人相手にはテンプレートな形でしか会話ができない、今回は何か誘われたから断ると言う事をしただけで肝心の感情が一切乗ってない、固まる空気、それを打開したのは護衛のトンプソンだ

 

指揮官が青年に絡まれてると判断した彼女はスゥッと彼女の背後に現れ肩に手を回して引き寄せながら

 

「私の女に何か用かい、それなら先ず私に通してもらおうか?」

 

顔は笑っているが雰囲気も声も笑ってないトンプソンにビビった青年二人は直ぐに逃げ帰っていく、それを確認してからそっと指揮官から離れ

 

「ボス、大丈夫だったかい?」

 

「うん、えっと、対応間違えたかな?」

 

「む、いや、まぁ合ってたんじゃないか?」

 

なら良かったとはにかむ指揮官、強いて言うならまぁ感情を乗せれれば完璧だったかなとトンプソンは呟くが当の本人には届かなかった模様

 

その後、スチェッキン達と後片付けをし、スチェッキンの移動式屋台は街を出て基地へと帰投する。その途中

 

「でもスチェッキンが一週間に一度外に出てる用事ってこれだったんだ」

 

「そうだよ~、ここで稼いでお金で基地の増設やらしてるんだよ」

 

「へぇ、あ、今回みたいに手伝えば私のお小遣い……」

 

「ごめんね、指揮官。副官からそれは許すなってお達しが来てるんだ」

 

副官に財布を握られ月々のお小遣い制になっている指揮官が居るらしい、まぁ増えようが彼女は街に出てくる事自体少なくお金の出費はあまりないので問題ないとは思われるが増やすチャンスが事前に潰されてたと知った指揮官は少し肩を落としていた




指揮官から見る『人間』は性別の違いは理解できるけど顔までは判別できない、でも声の違いは分かるレベル。基本的に声と身長で年齢を推測して何とかテンプレートで返す、例外的に知らない人でもお爺ちゃんお婆ちゃんには表情の変化やテンプレート外の会話ができたりする。因みにこれ以上の改善は本文でも書いてるが不可能

スチェッキンの移動式屋台は突然ひらめいた、何故かはわからないですが……いや、本当に何でだろ。

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