それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
ガーデンにある雑貨屋【リポスティーリオ】の店主である老婆【フィオリーナ】はギィ、ギィと椅子を揺らす音を響かせながら老眼鏡を掛け日課の読書をしていたのだがふと店前に気配を感じ本に栞を挟んでからパタンと閉じて、視線を扉に移せば、それを見越していたのか、偶々かは知らないが丁度店の扉が開き、入ってきたのは後ろに纏めた黒の長髪、だがそれ以上に目を引くのは右腕と左脚の義手義足だろう。
何も知らない人が見れば驚くその姿、だがフィオリーナは特に驚く様子もなく、彼女を見るなり深い溜息を吐いてから
「あんたが此処に寄るなんてどんな面倒事だい?」
「客に対する言葉じゃないわね、たまの休暇に息抜きに来るくらいいいじゃないか」
辛辣とも言えるフィオリーナの言葉に女性はそんな風に言いながら店内を物色し始める。今の簡単なやり取りで分かるのは二人が知り合いであり、しかも付き合いは短いという感じではないこと。
こんなやり取りをしても彼女側が機嫌を悪くしたりはせずに笑みを浮かべて楽しんでいる所から一度二度というやり取りではないことが分かる、そんな彼女は相変わらずに何処からどう仕入れているのか分からないが質は確かな商品を眺める彼女にフィオリーナは
「で、何の用だい、そんな簡単に休暇が取れる身分じゃないはずのあんたが、ふらっと来れるような地区じゃないってのは私にだって分かる」
「……」
「もし休暇だとしても息抜きと言うのは少し無理があるんじゃないかい?」
フィオリーナの鋭い視線と言葉が女性に突き刺さる、明らかに普通の老婆には出せないその雰囲気、だが女性は怯む様子もなく先ほどと変わらずに商品を眺め、気になったものを手に取りながら気負う様子もない声でフィオリーナに視線を向けるわけでもなく、そのままの体勢で
「本当に息抜きなんだけどね、ただ休暇っていうのは嘘だってのはそうかな」
「でしょうね、だとすればこれから用事を済ませるのか、それとも済ませた後か……済ませた後だろうとは思うけど」
「もしかしたら前かもしれないじゃん?」
「ハッ、あんたが用事を後にして此処に来るわけ無いだろうが、これで前でしたと言われたらその商品タダでくれてやるよ」
迷いないその言葉に女性は肩を竦めてから商品を店に戻し、苦笑いを浮かべながらカウンターのフィオリーナの前まで向かい適当な椅子を断りを入れてから引き寄せて座ってから、やれやれと言う感じに息を吐いてから背もたれに体重を預けて
「ええそうよ、少しばかり用事を済ませて帰る前に寄っただけ、偶には顔を出してあげないとあれだと思ったからね」
「あの娘の基地だろ、にしても態々あんたが出張るってことはまた何か巻き込まれてるのかい」
その言葉に女性はへぇとそこで初めて表情を変えた、それは驚いてるようにも、感心しているようにも見え、まるでフィオリーナがその人物を気にかけるとは思ってなかったという感じれた。
フィオリーナはそんな反応を見せた女性の顔が面白かったのか呵々と笑ってから老眼鏡を外してカウンターに置き
「私だって年を取ればああいった娘に弱くもなるし、そうだね、早い話が孫のように思っているんだよ」
「孫、ね。【蜃気楼】とも言われた冷酷な特殊部隊の一員が柔らかくなったものだ」
「私だけじゃない、あの【マルコ】だって同じさ、多分他の二人が居たら同じ様に見ていたに決まってるよ」
【マルコ】名前だけでは誰かわからないと思うがこの街【ガーデン】の暗部の首領、あの好々爺してるあの人物の名前である。更に言えば彼も元を辿ればどうやらフィオリーナと同じ部隊に所属ないし部隊長だったらしいし、フィオリーナが言った他の二人も同じであるがこれは余談だ。
兎も角それを聞いた女性は更に驚いたような顔を晒しすぐに元の表情に戻してから、少し考えた後
「ペルシカのやつ、此処まで知ってて養子縁組を?」
「あぁ、やっぱりユノちゃんの事だったのか、まっ、用事が生まれるとすればそうだろうとは思ったけどね……で、何をしようってんだい」
女性の耳がチャカと言う音を拾った、それは銃を握る音、発信源は勿論前の前の老婆であり表情も目も穏やかに笑っているし空気も何も感じ取れない、が
言葉次第で自分の眉間に穴が開く幻覚に襲われた、殺意だって感じてないというのに器用な真似をすると思いながら敵意もなにもないという意思表示である両手を上に上げて
「違う違う、私も頼まれてね。それでちょっとお話をしてきただけ、あぁ、あと人形も送ったのもある」
「……となると正規軍が動いてるのか、アイツラはまだキナ臭いことに手を出してるようだね」
「何時だってキナ臭いことよあいつらは。まぁそれだけだったら動くこともなかったのだけどペルシカのやつに少し頼まれごとをされてね」
「あの博士がかい?ユノちゃんとノアちゃんを養子縁組にしたとは聞いたけど、まだなにか動いてるのかい」
この老婆どこまで知ってんだろうなぁと引き笑いをしそうになるのを堪えよいしょと椅子から立ち上がってから、適当な棚の商品を一つ手に取りレジに置いて
「お邪魔したからね、これ頂戴」
「まぁ、老人の暇つぶしに付き合ってくれたようなもんだから気にしてはいないのだけどね……この値段だよ」
え、たっかと値札を見れば確かにその値段であり適当に取りすぎたと後悔しつつ財布から代金を取り出して支払い、女性は最後に別れの挨拶をしてから店から出ていくのをフィオリーナは見送ってからまたギィと安楽椅子を鳴らし老眼鏡を掛け直して本をしおりの場所から開いて読書を再開するのだが
「さてさて、また大きな事が起きそうなのかね……出来れば何事もなく過ごしてもらいたいよ、折角人並みの幸せを掴めて、女としての幸せも目の前だってのに」
だがそれは難しいだろうとフィオリーナは目を細める、何故ならばあの女性は少なくとも何事もない平時に現れるような存在ではないのだから。
時同じくしてP基地の執務室、つい先程までお客が来ていたのだがその相手にナガンは苦い顔をしつつ
「【国家安全局】の【アンジェリカ】、デカすぎるぞ」
「ペルシカお母さんからお話を聞いて会いに来ただけって言ってたけど、本当じゃないよね」
「本当ではあるじゃろうて、だがそれだけじゃない、しかも……」
ナガンの視線が執務室の扉の前、アンジェリカが連れてきた一体の人形に注がれる。
「量産型ルーラーの試作人形、上は、いや、正規軍は何を考えておるのじゃ」
「さてね、ただまぁ、指揮官のことはお母さんと呼ぶべきなのだろうか?」
「へ?」
量産型ルーラーの試作人形、名を【AK-12】の初めの一言に素っ頓狂な表情を晒すユノであった。
なんか凄いキャラを出しましたけどこの作品大丈夫なんでしょうかね(他人事
あ、当たり前ですがこのAK-12はほんへの彼女とは別で作られた存在です、はい、明日書きますね。
因みに老婆が握った銃の名前は【クラシックマーダー38】です