それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
国家保安局のアンジェリカという女性が連れてきて、早々に前回最後のような爆弾発言をぶっ込んできた戦術人形【AK-12】彼女のその言葉にユノは目を点にし見つめて、ナガンは苦いと言うべきか微妙な表情を晒して
「冗談にもならぬ言葉じゃな」
「実際、私の開発経緯を考えれば冗談にはならないからね」
「えっと?」
どうやらあまりの爆弾発言に少々頭が混乱している様子のユノにナガンは仕方がないかと先ほどのアンジェリカとの会話を整理しようと提案して、AK-12とユノを執務室中央のソファに座らせてからコーヒーを人数分淹れ、それから
「して、先ほどのアンジェリカとの会話は流石に覚えているじゃろ?」
「それくらいは覚えてるよ、アンジェリカさんは国家保安局って所の人で、ただ今回はそことは関係なしにペルシカお母さんの知り合いとして私と顔合わせとAK-12を連れてきただよね」
だがそれと自分を母親呼びにどう結びつくのだと言いそうになってそのアンジェリカとの会話で彼女の説明も少しあったなと思い出した、それは彼女は唯の戦術人形ではないということ。
彼女、正確には彼女の目が特殊で、その使われた技術というのが
「あ、私の眼」
「そういう事だよ、ふふっ、でもお母さん予備は冗談だから安心して頂戴」
「向こうは何時から此奴のデータを得ていたのじゃ。いや、そうか、IOPの奴らか」
データ、と言うのはユノのルーラーの眼の稼働データ、しかもナデシコとの接続状態のをベースにIOPと【正規軍】が共同開発、その計画の名前が【量産型ルーラー計画】
元々の眼では人間にしか適合しないそれを人形にも適応できるように調整、そして量産することによって更に鉄血と有利に、しかもエルダーブレインの捜索も容易にするという内容なのだが
「でもそれおかしくない?態々私みたいなのを量産する必要は無いと思うんだけど」
「建前じゃろうて、AK-12はなにか聞いてはおらぬか?」
話を振られた彼女はうーむと目を瞑ったまま顎に手を当てて考えるがどうやら何も浮かばなかったようで肩を竦める、そもそもにして彼女はロールアウト直後なので当たり前といえばそうなのだが、結局は手がかりはなにもないかと言う空気になりかけた時、だがとAK-12がコーヒーを片手に
「戦場において私でも鉄血の居場所を目視できるようになる、と言うのは大きいと思うわ」
「そう考えられることもなくはないか、いくらナデシコが協力とはいっても大規模戦闘で複数部隊となればどうしても漏れが出ないとも限らんからな」
「オモイカネとオペレーターアバター達がサポートはしてくれるけどナデシコが支援できない状況や場所がもし出てきてもAK-12が居れば貴方を中心にデータ共有できるってこと?」
「現場だからこそ分かるものもあるだろうしね」
なるほどと納得するユノ、だがナガンはそれでも彼女の製造経緯に疑問を覚えざるを得ない、確かにAK-12の言い分は確かなのだがどうにも腑に落ちないというべき感情が渦巻く。
これがもしIOPとグリフィンだったらまぁ分からなくはないと思えたかもしれない、だが絡んでいるのが正規軍なのだ、しかも国家保安局であるアンジェリカが彼女を連れてきた。
(どういう事じゃ、だが恐らくはAK-12を此処に置くのは正規軍の指示ではない、IOPから国家保安局が引き抜き連れてきた?)
だとすれば間違いなく厄介事に発展する、ナガンは悟られないようにユノと楽しげに雑談を交わすAK-12に視線を向ける、彼女を疑っているつもりはない、だが両手離しに心強い味方が出来たと喜べるものでもない。
キナ臭い、その一言に尽きた。
「……すまぬ、少しばかり席を外すぞ」
「え、あ、うん、あ~じゃあAK-12にこの基地の案内してあげるね」
「それはありがたいね、結構大きい基地と聞いてるから迷うかもしれないし」
やれやれ元気なものじゃと思いながら執務室を出て十分に離れた所で暗号通信を開く、相手はこの基地が誇る諜報部部長のFMG-9、繋げた通信は二度のコールの後繋がり、再度周りに誰も居ないかを確認してから暫く使われてなかった合言葉を口にした。
「【均衡は保たれた】」
《こちらアリババ、こちらに繋げてくるなんて珍しいですね》
「すまぬな、少々探って欲しい案件が出てきた」
《ふむ、メメールがそこまで言うってことは相当な案件、さっきの国家保安局絡みですか?》
「いや、あのAK-12が作られたという計画【量産型ルーラー計画】についてじゃ、恐らくはIOPと正規軍が絡んでいる」
その一言で向こうでキーボードを叩く音がし少しすればFMG-9からうーむという声の後に、探れなくは無いですけどという彼女にしては珍しい弱気な声で続けて
《ネクロノミコンを使ったとしても最深部まではオススメできません、それと触り程度なら判明しましたが聞きます?》
「それ大丈夫なのか?いくら何でも簡単に行きすぎじゃろ」
《何度もチェックはしましたので安全ではあるかと、ただこれ撒き餌っぽいんですよね、なのでネクロノミコンで探るにしても行き過ぎれば口の中ですこれ》
彼女にそこまで言わせるとなると本気でそうなのだろうと判断してその触りの部分の事を聞いてみることに。
曰く、量産型ルーラーと言うのはAK-12の事を指しているのではなくやはり【眼】のことであり、それを搭載している人形を量産するというもの……と単純な物で終わるわけがない。
それはFMG-9にだって分かる、そもそも量産する理由が分からないとナガンと同じ疑問を覚えるほどだ、そこで思ったのはユノはナデシコ経由とは言え人間を視れる様になっているという部分。
もし量産型も同じ方法で見れるとすれば?だが視れてどうするんだと思いながらもナガンにその事を話してみる。
「人間を見通せる人形を量産、してどうする?」
《それが分かれば苦労しないんですけどね、なぁんか引っかかりますねこれ》
寧ろ引っかからない理由ないじゃろうてと思いながら彼女には最大限の注意を払いつつ情報を集めるように指示してから通信を切って、一つ息を吐いてから、ユノに通信を入れ彼女と合流するために行動を始める。
不安はある、だが
(アヤツの幸せ、決して壊させはせぬぞ)
ナガンがそんな決意をしてる時、AK-12に基地の案内をしていたユノはと言うと中庭でクリミナ達と合流、したはいいのだがそこでAK-12が何を思ったのかまた【お母さん】呼びをしたので
「じゃあAK-12は一番妹ってことよね!」
「大きい妹、です」
「あ、えっと、え?」
「ふふ、小さいけど頼りになるお姉さんたちだね」
当然ながら冗談ではあるのだが満更でもない表情なので娘たち、だけではなくユノも再度騙されて、話が盛り上がるのをクリミナは眺めつつ、もしかしたら少しは本気なのかもしれませんねと思う旦那であったとさ。
AK-12さん、迎えているのですがまだキャラが掴みきれてないという、何か難しい、難しくない?