それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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大福は守護獣かなにか?


黄泉案内

深夜の基地、その一角に存在する開発区画のラボの一室から今日の物語は始まる、いきなり開発区画と言われてもピンとこないだろうがようはアーキテクトのラボを中心とした開発部門の者達が集まっている区画だと思ってくれればいい。

 

なのでラボも【総合】や【特殊】と言った全員が集まって研究開発を行いところもあれば、個人個人で用意されているラボも存在する、現状ではアーキテクトを含めても88式、89式がメインで、実を言えばちょくちょくとラボに来ていた59式は正確にはこの部門の人員ではなく、アーキテクトも誘ってはいるのだが本人的にはちゃちゃ入れくらいで良いと思っているらしい。

 

と、まぁ余談は置いておき今回の話はその開発部門でも新入り、なのだが知識などに関しては既にアーキテクトと匹敵できる物を持っている【キャロル・エストレーヤ】から幕が上がるのであった。

 

「ふむ……」

 

モニターを見つめキャロルは一つ考えてから、また数値を入れ込んでいく、どうやらまだ彼女たちを復活させるための準備を行っているようであり、その進みはキャロルが思うよりも順調であると言った感じらしい。因みに服装は当たり前のようにジャージである、今日のは【継】と胸に書かれた物を着ている、提供者はUMP9である。

 

だが時間にしてもう既に深夜も良い時間、だと言うのに全く寝る素振りを見せない彼女、この調子ではまた朝食の時間になり初めてまた寝なかったなと反省会をすることになるだろう、しかしながら反省するだけで改善しようとしない辺り、キャロルという少女もワーカーホリックの持ち主なのかもしれない。

 

なので別段時間を気にすることもなく、夕食後もこうして作業を進め、アラームが鳴るまで集中している……と思われたそれはふと彼女の耳に届いた音で中断される。

 

【パタパタパタ】

 

「ん?こんな時間に誰だ……」

 

聞こえたのは少女くらいの人物が廊下を走る音、なので集中を切らされたことに溜息を吐きながらラボのドアを開けて周囲を見渡すが見えるのは非常灯の明かりと他は暗闇、誰かが居たという痕跡が一切なかった。

 

妙だな、そう感じたキャロルだったが気の所為だったのかもしれないと戻ろうとして、またその足音が廊下に響き今度こそと見渡してみるがやはり存在しない、どういう事だコレはと思いつつ警備担当のまた彼女たちかと言われそうだが当番だった【UMP姉妹】に通信を繋げ、その事を伝えてみれば

 

《あ~、今日はラボの方に居るのか~》

 

「今回が初めてではないのか?」

 

《もうずっとよ、週に一度こうして自由に遊び回ってる女の子の幽霊は》

 

二人のその言葉にそう言えば妹達もそんな話をしていたかもしれないと思い出し、何かを考えてから

 

「とすればその幽霊はこの辺に来ているのだな?」

 

《へ?あぁ、まぁ、多分?》

 

《驚いた、キャロルちゃんってそういうの信じるんだ》

 

「信じるも何も平行世界やらがあるのならば幽霊くらい居ても不思議ではないだろう、そもそもにして少し前までは姉上と同じ身体で過ごしていたのだぞ?」

 

彼女的には怪奇現象の一つや2つ、何故疑う必要があるのだと続けながらジャージの上から白衣を着て廊下に出る、どうやら会いに行くらしく、日頃は基本的に積極的に動こうとしないのに興味が湧いたことに対するこの行動力には通信越しのUMP姉妹も苦笑を浮かべつつ、あまり遅くまで追いかけ回さないようにねと一言伝えてから通信を切られたのだがキャロルはそれに生返事を返してから行動を開始していた。

 

向かうは足音が響く先、話によれば壁も通過してしまうため確実に見れるというわけではないが、確率が高いのはそれだと聞いていたので歩けば、途中で彼女の足が止まる。

 

(足音が、向かってきてる?)

 

ならば此処で待機すれば見れるだろうと立ち止まれば、目論見通り幽霊少女はキャロルの前に現れた、見れば実体なのではと思いそうなほどにはっきりとした姿にキャロルはほぉと面白いものを見たとばかりに声を上げる。

 

対して幽霊少女は何時もであれば誰かがそこに居ても気にせずに何処かに行ってしまうはずなのだが今回はキャロルをはっきりと見つめて、しかも表情も驚いたような物に変わっていた、それから何を思ったのか今度はキャロルの手を掴もうとするも当たり前なのだがすり抜ける。

 

「ふむ、俺を何処かに案内したいのか?」

 

「!!(首を縦に振る)」

 

幽霊が案内、それは興味深いなと幽霊少女に呟けば、向こうは体全体で早く行こうとばかりに動かして歩き出したのでキャロルも付いていくことに、その間もキャロルは一体何処にと考え、幽霊少女はちゃんと付いてきてるかの確認か、しきりに後ろを確認して歩を進めていく。

 

歩き続けて、キャロルはどうやら彼女は地下に案内しようとしていることが分かった、確か地下には隠し部屋があったとか言ってたなと思っていると

 

「フゥ!!!シャー!!!!!!!」

 

「!?(驚いたように立ち止まる)」

 

「大福?どうした、そんなに騒いでお前らしくもない」

 

毛をこれ以上ないほどに逆立て明らかに威嚇の行為を行う大福の姿にキャロルは勿論、幽霊少女もかなり驚き、その隙きに大福が二人の間に割って入ってから大福はニャウニャウと鳴き声で幽霊少女に何かを語りかけるような仕草を見せれば、幽霊少女も何かを理解したのか眼をパチクリとさせながらキャロルを見つめ、それからバイバイと笑顔で手を振り幽霊少女はまた何処かへと走り去っていった。

 

何だったんだ、そう思わざるを得ないキャロルは大福を見つめるが向こうは向こうでキャロルを見つめてから世話が焼けるとばかりに一つ鳴いてから彼女に部屋に戻るように促すような鳴き方をし側まで近づいてくる。

 

「……帰れ、と?」

 

「ニャ」

 

まぁ目的の人物とも出会えたし良いかとその日はラボに戻り、また朝まで研究開発に没頭、朝食時に57に連行されてから昨夜のことを話していると丁度通りかかったG3が

 

「危なかったですね……」

 

「え、何が危なかったのよ」

 

「もしそのまま付いて行ってたら恐らくは死後の世界、そこに案内されていたかもしれません」

 

「そんなバカな、ねぇキャロルちゃん?」

 

57がそう言いながらキャロルを見ればなにか真剣に考える彼女の姿、あの昨晩の自分と出会った時の少女の様子、それから大福とのやり取り、それからの反応、全部ひっくるめて考えてみて、まさかな答えが彼女の中で浮かび、思わず口にしてしまう。

 

「まさか、いや、確かに俺の身体は死んでいるには死んでいるのだが」

 

「同類と思われ、居るべき場所に案内してあげようとしてたのかもしれませんね」

 

余談だが、それを偶々聞いてしまったWA2000が大福にこれからもお願いねと何時もより多めにおやつをあげてる姿が目撃されたとか何とか。




「ニャウニャウ(この者は死者ではない、連れて行くな)」

「!?(え、だって死んでるよ?)」

「ニャウ(確かに身体は死しているが魂はあるし実体もある)」

「!!(そうなんだ、じゃあね不思議なお姉ちゃん!)」

こんなやり取りだったかもしれないね!

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