それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
大概が非常にキャラが濃い者達が集まっているP基地だが、その中には勿論常識人と言われる人形だってきちんと居る、居るにはいるのだが結局はこの基地に染まってしまい、最後には生き残りの常識人の疲れの一端になってしまう、一種のバイオハザードではという状況なのだ。
「はぁ~」
「大丈夫ですかキャリコ」
大丈夫ならこんな溜息吐かないわよと答えてから彼女が差し出したアイスを受け取り一口、ひんやりとしたその感覚がこの熱暴走手前の頭を優しくクールダウンを促してくれるのだがそれ以上に彼女は疲れていた。
常識人側だと思っていたRO635はもう手に負えないレベルになってしまい、それを皮切りに続々と染まっていく仲間たち、いや、勿論染まるのが悪いとは彼女とて言わない、寧ろ自分も染まってはいると思っているところも多々存在する。するが染まり方というものがあるだろうとキャリコは思わざるを得ない。
「何ていうかこう、なんで突然変異したみたいな染まり方するんだろうね……」
「えっと、まぁ、その、もしかしたら元々そういう部分があってそれが大きくなったとかですかね?」
「それはそれで大問題な気がするんだけど、まぁいいわ私とコンテンダーが維持してれば問題ないのよ、ええ」
多分この娘もそろそろ大丈夫じゃないなコレ、そんな風に思えてしまう程にキャリコは疲れている様子であり流石のコンテンダーもどうにかしてあげるべきだろうと考え提案したのは……
という事で二人は街、ガーデンにて散策をしていた。コンテンダーが出したのは息抜き、と言う名のガス抜きという形で街を出歩いてみたらどうかという単純なもの、だが今の彼女にはそれくらいの普通が必要だった。
「ふっく~ん。ごめんねコンテンダー、せっかくの休みなのに私に付き合わせちゃって」
「私が言い出したことですからね、これくらいならば問題ありませんよ」
キャリコ的には一人でも良かったのだが折角だからとコンテンダーを誘えば向こうも二つ返事で了承、お陰で彼女は何てこと無い友人と遊んでいるという感じに息抜きが行えている。
楽しげな彼女の様子にコンテンダーも安堵の表情を浮かべる、基地に居る時も別に嫌だという感じでもないしユノやシャフト、クフェア達と話している時の彼女はとても楽しげではあるのだが、やはり一度基地から離れるというのも大事だったんだなと思っているとキャリコの方から
「いやね、別にあの基地の染まってる人たちも嫌いじゃないのよ、見てて楽しいから……ただまぁ、ね?」
「分かってますよ、私も少々ぶっ飛び具合に疲れたりはありますし」
それは以外だと言う感じにキャリコが驚き、コンテンダーは穏やかに笑みを浮かべ答える、言葉にしないのはしたら疲れてしまうからかもしれない。そんな感じに二人が散策しているとふと二人の耳に少女の小さな悲鳴が、即座に駆け出して向かってみれば居たのは複数の男性が一人の少女を囲んでいる光景。
基本的にこの街は治安は良いほうなのだがそれも完璧ではないという事をよく表している光景に二人は向き合い
「どうします?」
「位置が悪い、コンテンダー、私が囮になるからあの娘を助けて頂戴」
「え、ですがあの数、銃も使えないので危険ですよ?」
ざっと見た感じでも6人は居るだろう、だが彼女は問題ない問題ないと腕を振るいニカッと笑う、それから頼んだわよと今度は彼女からの答えを聞かずに躍り出て
「何やってんのあんた達!!」
「あ?」
全員の視線がキャリコに集中する、その隙きを見逃さずにコンテンダーが動き出す、まだ距離はある、だからキャリコは男たちに勝ち気な笑みのまま、そして安心させるために少女の方に視線を送り
「はぁ、大の大人がそんな子供に集団でとか情けなくないの?」
「おうおうなんだ?人形様が正義の味方気取って出て来たった感じかぁ?」
「へへ、おい嬢ちゃん、なら正義の味方様はこのガキがどうなってもいいってわけねぇよな?」
何ともテンプレートな台詞と同時にナイフを少女に突きつける、だが捕まえたりはしない所にコイツラ素人かとキャリコは思いながら仕方がないと両手を上げる、そうすれば向こうは下卑た笑みを浮かべ
「物分りが良いじゃねぇか、それじゃ……」
「バーカ」
突如の罵倒、当然男たちは何だてめぇと言おうとした瞬間、少女にナイフを突きつけていた男が音もなく沈められ少女の姿がかき消え、それからキャリコに向けて
「成功です、すぐに撤収……」
「よぉし、コンテンダーはそのまま安全な場所にね!さぁ来なよ、悪いけど私も結構鬱憤溜まってるの、だから銃は使わないであげるよ!!」
「え、ちょ!?」
話では少女を助け出したらそのまま撤収、という形だったはずなのだがキャリコはグローブを嵌め直して高らかに挑発、そのまま男たちに走り出して何を思ったのか乱闘を開始。
これにはコンテンダーもどうしたものかと冷や汗を流しながらその乱闘風景を見つめていると
「な、何の騒ぎってコンテンダー?それと、あれはキャリコ!?何やってるんですかあの人!!」
「ティス、すみませんがこの娘をお願いします!サブリナ、手を貸してください、あの乱闘が酷くなる前に止めます!」
「オーケー!さいっこうのショーにしてあげるよ!」
警邏に来ていた【OTs-12】に少女を預け【SPAS-12】と共にキャリコと男たちの乱闘現場に突撃、人形3人に勝てるわけもなく瞬く間に鎮圧されるのだが、流石に6人と同時に大乱闘をしていたキャリコが無傷というわけもなく、現在はティスが持ってきた救急箱で怪我の処置をしているのだが
「いったた、染みる」
「全く貴女は……もしかして私と出会ったあの事件の時もこんな事を?」
「え?あ~、まぁね、引くに引けないしならばいっそのことって」
いつか死にますよそれと思いながら処置を進めていく、キャリコもそれを大人しく受けていると先ほど助けた少女が姉と思われる少女とともに現れ、感謝を告げ、二人もそれに答えてから見送り、キャリコがそっと口を開く
「私ね、正義の味方ってのに実は憧れてんのよ。だからさっきの場面でもきっと逃げなんて取らないで戦うだろうなって思って動いたんだよね」
「正義の味方、ですがそれは9を救うために1を迷いなく捨てる、そんな存在ですよ」
「……私はどっちも救える正義の味方ってのになりたいのよ、まぁそれは一人じゃなれないけどね」
ニコリと笑いながらそんな事を言う彼女にコンテンダーは呆れたような、だけど彼女らしい答えに笑みを浮かべる。実を言えば彼女はキャリコのそんな一面に一種の憧れを抱いていたりする、自分のように何事も計算ずくで出来ないのならば迷いなく切ってしまうのではなく、どんな状況でも決して諦めずに、そうあの日の様に
(最後の最後まで諦めずに戦うその姿勢に、私も成りたいものです)
キャリコとコンテンダー、意外と噛み合う二人はいつしかP基地の名コンビとして扱われていくのであった。
キャリコに正義の味方に憧れてるとか言わせるとかこの作者は畜生か何かか?