それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
「ふんふんふーん」
軽快でご機嫌な感じの鼻歌が響く此処は本社にも置いてなさそうな機材が所狭しと配置されているデータベース、そして鼻歌の主は当たり前ながらカリーナである。
だが本日は休日であり、急な書類でも来なければ基本的に仕事はない日、では何をしているのかと言えばデータベースの一角に飾られた品物を磨いているのである、だがこれはカリーナがスチェッキン宜しく片手間に開いている売店の品物ではない。
「ふふっんと、よし、綺麗になりましたね」
手に持ったそれを翳して光を当てればキランと光る何の変哲もないグラス、だが彼女はお酒はあまり呑まない、無論呑まないというわけではないが態々自室で呑むくらいならばBARに行く程度、ではこのグラスはなにか、これはユノがこの基地にの指揮官を初めて一月経ってから初めての給料が出てナガンからお小遣いを貰ってから初めて彼女にプレゼントした物。
そして磨くのはこのグラスだけではない、棚を見れば他にも様々な小物やぬいぐるみ、先ほどのようなグラスなど埃や汚れが塵一つ無いほどに綺麗な状態で飾られている、そう、お忘れかもしれないが彼女は
最初の頃はそれはもう嬉しすぎて一日に一回は絶対に掃除していた、何があっても絶対に汚れなんてつけせないという気迫すら感じたとデータベースに用事がある入室した人形が口を揃えて言うほどだったのだが此処最近では数も増えたというのもあり、週に一度、休日の日に磨くというくらいには落ち着いている。
という訳で今日はそんなユノを妹に見て溺愛しながらも敏腕秘書としてこの基地の経理だけではなく、雑務や書類整理、情報収集と多岐に渡り支えてきて、恐らくカリーナが居なければとうの昔にこの基地は機能不全で終わっていただろうと言われる、彼女の休日の一部を覗いてみようと思う。
「コレで最後っと、ふぅ」
朝の6時程から起きて行われていた
「あら、おはようございますカリーナさん。注文はいつもので宜しいでしょうか?」
「お願いしますわ、あ、ヴァニラさんもう来てるんですか」
「えぇ、朝はやっぱりイベリスのコーヒーじゃないと目が覚めないのよ」
いきなりイチャコラするな~という感じに笑みを貼り付けながら彼女の隣のカウンター席に座り朝食を待つ、その間にカリーナはカフェの入口を見つめて誰か来ないかと言う風に待っていればガチャリと開かれ、彼女の目的の人物が現れた、誰か?無論、
どうやら一家で来たようで何処に座ろうかと話しているとカリーナ達に気付いて手を振りながら、近くのテーブル席に座りそれぞれが注文をしてから待っている間にカリーナから
「今日もお元気そうで安心ですわ、そう言えばノアちゃん夫婦は見てませんわね」
「あの二人は食堂で済ますと、どうやら悪阻がピークだとかで消化がよく栄養価の高いものを食べたいみたいで」
「となると、此処のよりはネゲブ達に頼んで作ってもらうってことですね、指揮官さまは大丈夫なのですか?」
「うん、私はまぁ何とか、慣れれば割と向き合えるし、食べれるし」
それは、指揮官様が少々強いのではと思いつつも今度は娘組に挨拶をしてから、会話を楽しんでいると、注文していたものが運ばれ、一旦中断、朝食に舌鼓を打ちつつ、この後どうしようかなと考える。
休日だしなにか普段はできないこと、そう考えふと思い出す、そう言えば副官が各々の自衛手段も持つようにしておけという内容の会話をしていたなと。と言うのもこの基地が公になりユノも特務指揮官なんて肩書きが付いたことで彼女を直接狙わずに基地の面々、特に人間であるヴァニラやカリーナを狙ってくるかもしれないという懸念が生まれたからだ。
(まぁ私はそう安々と遅れを取るつもりはありませんけど、表でいつもの手段は取れませんから他を考えないといけませんね)
彼女の現状での自衛手段となれば服の袖や腰のケースに隠している小型の投げナイフ、あとは【PSM】を一丁所持しているだけ、それも此処最近は発砲すらしていないので腕が落ちてるかもなぁと思えば、今日の予定の一部が出来上がる。
偶には射撃訓練でもしてみますか、と、なので同じく副官からその話を聞いているはずのヴァニラにもその事を話してみれば
「あ~、確かに必要か。しかし射撃ね……」
「あまり自信なさげね、ヴァニラってあまり撃ったこと無いの?」
「まぁ科学者でしたとのことですから、無いのは当たり前なのでは?」
ルピナスとクリミナの言葉に恥ずかしながらねと答えてから、彼女も朝食後に訓練に行くことにしたのだが着いてから浮上した問題があった、それはヴァニラは護身用の拳銃すら持っていないということ、では今まではと聞いてみれば
「いや、まぁ持ってはいたんだけど、この基地に来る前に無くして、ここに来てからはあまり外には一人とかで出なかったのよ」
「なるほど、では以前の銃を手配しますわ、何を使ってたのですか?」
「モーゼル・ミリタリー、って何驚いてるのよ」
なんちゅう骨董品をと驚きながらタブレットを操作して在庫を調べればこの基地にもまだ残っているのを確認できたので早速持ってきてからスリーピースに軽く互いの銃をメンテナンスしてもらってから、流しで的あてをしてみる、のだが
思わずカリーナも苦い顔をしてしまうほどに腕が落ちているのが見て分かってしまった、確かに弾は人型の的に当たってはいるが脳天一発と心臓に二発のつもりのそれは脳天のは致命傷から逸れ、心臓には一発、もう一発はそれより下という結果。
隣のヴァニラを見れば、こちらもうわぁと声を漏らすレベルだったようだ、トドメに何時ものように射撃訓練をしていたコルトSAA先生が
「うっわ、これじゃあいざって時に後悔するよ?」
「「はい、練習します」」
その日の残りはコルトSAA先生による射撃訓練に費やされ、お陰でカリーナは少しはマトモになったというレベルに戻ったらしい。
ヴァニラさんにモーゼル・ミリタリーを持たせたのは趣味、カリーナも趣味。
因みに彼女的には撃つより投げナイフのほうが自信がある模様。