それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
様々な情報が現れては消え、また現れるを繰り返すモニター。それを淡々と人間には到底出来ない速度で処理していき、必要であれば報告を上げるオペレーター達、と言っても彼女たちは人形というわけでもない、そしてここは現実でもない。
ここはP基地が誇る、と言うよりもあらゆる意味でこの基地の特徴と言えるであろう【ナデシコ】の電脳内、何時ものように業務が二十四時間で行われているその空間に彼女は居た、というより居なければ話にならない。
「ん~、今日も平穏だねぇ~」
自身の定位置に置かれた椅子に座って背もたれを使いながら伸びをするオモイカネ、ナデシコにとって重要な存在であり彼女が居なければ稼働率は大幅に下がってしまうし、何よりも二度ナデシコに襲撃された時も彼女が居なければユノは死んでただろうという事もあって基地からは一目置かれている少女でもある。
が彼女としてはそれは自分に任せれた使命、ルーラーを守りサポートせよということを実行しただけに過ぎないんだよなぁと思ってたりするのであまり気にしていない、寧ろこんな自分でもキチンと仲間の一人として扱ってくれる彼女たちに感謝したいほどだとも思っている。
「にしても最近はS地区の鉄血も大人しいな、まぁそれ以外の反応が割と活発な気がしないでもないのが気になるけど……D08はっと、うん、こっちも異常は無さそうだね」
「そう何度も何度も事が起きてたまらんがな」
キャロルのそんな言葉にそりゃご尤もだねと答えてから、思わず声の方に振り向いた。そこには当たり前だがキャロルの姿、だが待って欲しいとオモイカネは驚きで固まりかけた思考を動かす、彼女が此処に居るはずがないのだ、だって今日は
「休日ではありませんでしたかキャロルさん」
「いきなり改まった感じになってどうした、それに今日はお前に用があって来たんだ」
用?首を傾げながらとりあえず椅子を出現させて座らせる、しかし彼女が自分に何の用だというのだろうかと言う疑問が尽きない、なので座ったのを確認してから早速聞いてみれば、キャロルは実はなとその内容を話していく。
が話された内容を聞いてオモイカネは難しい顔をしてからポリポリと後頭部を掻いてただ一言
「えっと、流石に無理じゃないかなぁって」
「と言うと?」
「ほら、あたしってあくまでサポートAIなわけじゃん?しかも消失寸前だって人格データをサルベージして組み込まれたもんだから存在そのものが結構曖昧なんだよ」
「つまりは何かに意識を移そうとしても保てずに消失する、と?」
うんと力強く頷くオモイカネ、話の内容はどうやらユノがオモイカネも何とか現実でゆっくり休日を過ごせるようにならないかという相談に彼女なりに考えて、今の彼女ならば適当な素体に移せるのではないかと考え話したらしいのだが答えは上記の言葉。
どうやら、あれから長時間稼働をして存在そのものが強くなったとは言ってもそれでもオモイカネと接続されているという事実があってこそなのは変わりないらしく、なので言ってしまえばこの空間から出てしまうとそれだけでも消失の危機に瀕するらしい。
「指揮官に伝えておいてよ、あたしはここで過ごしてて退屈も何もしてないってね、それにほら、今はアバター達も居るから寂しくもないからね!」
「ふむ……だが、お前は今ダミーすら作り出せる、だとすればある程度は存在は確約されてはいると思うのだが」
「いやいやいや、ダミーだってナデシコとオモイカネの合わせ技で作り出してるだけだよ?」
なんか妙だなこいつ、キャロルが唐突にそんな疑問を抱いた、先ほどからこう言えば的確にこちらを納得させるような言葉で反論してくるのでさして気にしてはいなかったのだが、注意深く聞いてみると何かが違うと感じがすると。
その違和感の正体を探ろうと思考を巡らし先ほどまでの会話とオモイカネの様子を思い出していく、何かしらの手かがりはあるだろうと。
(遠慮というやつか?もしくは、怯え?)
と推測を立てていくがそもそもにしてまだまだ他人の感情にはそこまで過敏とはなってないキャロルとしてはどうにも答えには辿り着ける気がしない、しないがこれだけは思えた、今の彼女ならばそう簡単には消失しないだろうと。
考えても答えが見えてこない、ならば聞いてしまおう、そこに至った彼女は
「お前が何を怯えている、もしくは遠慮しているかは知らんが俺の見立てならば消失はあり得ないと断言できるぞ」
「遠慮とか怯えじゃないさ……あ~まぁ、キャロルに勘付かれるくらいには今のあたし可笑しい?」
「あぁ、俺に察せられると言う点から見ても此処に来たのがユノじゃなくて良かったなと言えるレベルでな」
指摘にうぐっとなるオモイカネ、それから場は沈黙して響くのはオペ子達のキーボードを叩く音と必要な報告を上げる声だけ、1分近く悩むように椅子を回転させていたオモイカネだったが唐突に止めて、キャロルと向き合い
「その、まぁ、キャロルの言う通りあたしは、怖いんだ……勿論分かってるよ、今の自分ならマインドマップを他の素体に移せるくらいは、そうなんだけど、消えちゃうかもって考えたら、ね?」
キャロル自身もスユーフ達を蘇らせられる一歩手前まで来ているが、何時ぞや話したかもしれない記憶の改竄による万が一を考えてしまい踏み出せないでいる、だからこそオモイカネの言葉にも理解できる。
と、ここで彼女は閃いた。何も全部を丸々移す必要無いのではと、と言うよりも移すという考えそのものが間違いだったのだと。そうとなれば善は急げだとばかりにキャロルはオモイカネに
「なぁ、一つ考えがあるのだが……」
同日、PPSh-41の定期診断を終えたユノはブラブラと歩いていると背後から何かが飛翔してくる音が聞こえ振り向けば居たのは【空挺妖精】のドローン、遊んでるのかなと思ったのだが表示されているデフォルメキャラの顔は何かを運んでいるという感じの表情であり、そのままユノの頭上を取るとピタッと停止、そして
「ご苦労、空挺妖精!とぉ!」
「\今度からは自力で移動して!/」
「え、え、え、うわっぷ!?」
何かが降りてきてユノの顔面に着地、一体何がとユノがその降ってきた物を手に取ると手触り的にはJrAR小隊と同じぬいぐるみ、だがその誰かではないのだが正体はすぐに分かった
「もしかして、オモイカネ!?」
「Yes!って言っても実際に意識をこれに移してるわけじゃないんだけどね、まぁざっくり言っちゃえば遠隔操作ってやつ、これならあたしの存在消失のリスクも回避しつつ休日を皆と過ごせるって寸法よ、まぁ考えたのキャロルだけど」
根本的解決ではないがなとキャロルは言っていたがオモイカネとしてはこれでいいと思っている、だって
「やった!じゃあ、早速オモイカネに基地を案内してあげなきゃね」
「よろしくね、実は実際に見てみたいなぁとは思ってたんだよね~」
ユノの楽しそうな笑みが見えたのだから、こうしてオモイカネは休日になると【オモイカネJr】をナデシコ内から操作して基地で過ごすようになる、のだが基本的に移動に空挺妖精を使うので彼女から苦情が来るとか何とか。
当たり前だがオモイカネJrに戦闘能力も特殊能力もないよ!ただ彼女が基地で過ごすようの素体である、作ったのは89式の模様。