それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
アナは射撃訓練所にて息を整えながら自分に言い聞かせる、コレは訓練とは言え此処でマトモに扱えなければ実践で使えるわけ無いと。
彼女の両手に握られているのは白銀に染められた二丁の銃、形状は【ベレッタM93R】に似てはいるが、それよりも大型でありまた耐久度も桁違いであることはP38から聞いている、トリガー自体もかなり軽く設計され、マガジン容量も拡張、経口自体に変更はないが連射性を極限まで突き詰めたようなそれ、S10地区の前線基地から送られてきた特性の拳銃であり名前は【アジダート&フォルツァンド】この体になって最初のテスト運用でも扱ってはいたがこれは左腕のガトリングとはまた違って扱いにくいと感じてはいた。
それを扱えるようになっているのは体に施された鉄血のハイエンドモデル【ハンター】のスペックデータと技術のお陰である、だがだからといって鍛錬を疎かにしていいという理由にはならないし、まだ実際に撃った回数なんて両手の指程度、慣らしというのは大事である。
「……」
構える、視線の先には事前に出現させている人型の的と射撃訓練用ダイナゲート【まとあてちゃん】が自由に走り回っている光景、因みにだがあの【まとあてちゃん】は射撃訓練用という事で回避プログラムはガッチガチに組まれており、しかも何度も使えるようにとなんとフォースシールドを装甲に薄く纏わしていて何だったら左腕のガトリングにも耐えるらしい、コレを聞いた時のアナの表情はそれはもう凄いくらいに引き攣っていたとか何とか。
そんな余談は置いておき、意識を集中させ、そして連射、今回の訓練では連射時の精密性の確認なのでワンマガを撃ち切る勢いで只管に銃爪を引き続け、両手の銃のが残弾ゼロを知らせるホールドオープンになった所で息を吐き出し、結果を目視すれば、人型の的は胴体を中心に大凡命中、【まとあてちゃん】は二体用意したのだが一体は規定数命中という事で転がっていたがもう一体は元気に走り回り、転がっている方を引き摺って退場させようとしていた、見ればそっちに命中したのは規定数の半分だったようだ。
この結果に及第点ではあるがと空のマガジンを排出して新たに装填、スライドを引いてからセーフティを掛けて両腰のホルスターに仕舞う、銃の性能は文句はない、これだけ連射して全く異常が見られないので耐久面も凄いということは分かった、問題は自分の技量が追い付いていないということだ。
(まだ新しい体に慣れていないとは言え、早く馴染ませないと……)
焦りそうになる気持ちを抑え、彼女は射撃訓練所を後にする。因みにガトリングの方はこちらはペルシカから別の人形、その人形はバルカンらしいのだが彼女の反動制御データを後日インストールした結果劇的に精度が向上し何度かの慣らし射撃でものにできている、問題は弾倉にコ-ラップス技術が使われているので訓練と言えどあまり何度も訓練ができないので今日はやらないでいる。
と言うよりも過去に一日籠もって射撃訓練していたらコルトSAAに
『いやいや、そんな焦って訓練しても馴染む前に壊れるから、流石にそれは看過出来ないからね?』
と釘を差されてしまっているので生真面目な彼女はその忠告に納得した部分もありしないでいる、だがそうするとこの後どうするか、休日とは言え趣味を持ち合わせているわけではない。
なので言ってしまうと少しばかりこの日がまだ苦手であったりする、手持ち無沙汰になってしまうのでどうしたものかと歩いていると屋内中庭にてユノとクフェアを見つけ声を書けることに、彼女が選択したのは雑談しようということ、と言うのもふと思い出したのだ、過去にレイラに付き合いは大事だし、同じ基地の仲間達くらいとは話すようにすると良いと
「おはようございます、お二人だけ、ですか?」
「おはようアナ、うん、ちょっと前までシーナちゃん達と通信しててね、ほら、私は兎も角クフェアは結構大きくなったからさ」
「おはようございます、アナさん。お、思ったよりも大きくなるのが早くてそれで向こうもそうだったのかなって相談と、雑談を」
なるほど、とこの場にそれぞれのパートナーが居ない理由も察しが付いた、こういう時は相方には聞かれたくないものというのがあるというのは流石の彼女でも分かるというものである。と思ったからユノに勧められてクフェアの隣に座る。
尚、ノアはこの場に居ないのはそれもあるが彼女は本日は定期診断でD08に飛んでいる、今頃自身の新たな武器にして分解から再生性を可能にしたS10地区からの贈り物【クイーン】改めて向こうにも同じ武器があるから名前を変えると彼女が命名した【シュトイアークリンゲ】をドリーマー辺りに見せて目を輝かせながら話している頃だろう。
「確かに、もうパッと見ただけでも妊娠しているということが分かるようになってますね」
「ペーシャさんのお話だと早くて5月にはって事らしいです、凄い変な話ですけどやっと私も認識したっていうのかな、本当なんだって思えて」
「私はまだだけど、クフェアちゃんを見てると楽しみだなって思うよ」
彼女が言ったようにクフェアはもうパット見で分かる程度にはお腹の膨らみが生まれている、それを見てアナもまだ内心では驚いている、人形の妊娠と言うのは夢物語でも出てこないような話が目の前に形になっているということに。
とも思えばユノも同じ様に人形との、クリミナとの子を成しているので彼女は決意を固めていた、次は必ず守り切ると、あの様な悲しみをもうこの基地には訪れさせないと。
(指揮官、クフェア……貴方達は私が必ず守ります、だから安心して下さい)
「あぁ、そうだ、ねぇアナは指揮官だった頃のレイラお母さんを知ってるんだよね?」
「ホヒャぁ!?……コホン、えっと、レイラ指揮官のことですか?」
唯一自身のパーツで残っていた右手を握り目を瞑って決意を新たに固めていた所に唐突に話を振られて思わず変な悲鳴を上げてしまえば二人は驚いた表情で彼女を見つめる。
あれを流されるとは思ってはいなかったのでその反応はアナ自身も当然だと思いながら、咳払いを一つしてからユノが求めている昔話のどれを話そうかと考えてから、ぱっと浮かんだのは
「あの人は、厳しく、ですが面白くて、とても良い指揮官でした。ただ……」
「ただ?」
今思っても欠点一つ無い完璧に近い指揮官だった、だったのだが強いて欠点というものを上げるとすればこれだろうと彼女は当時を思い出してポツリと
「天然誑しの気質が強かったですね、人形も人間も問わず」
それを聞いた二人、クフェアはノアを思い出して溜息を、ユノはナガンに過去に同じようなことを言われたのを思い出して苦笑を浮かべるのであった
レイラさん@天然誑し
因みにノアの命名ですがコレ直訳すると【ハンドル刃】です、ハンドル剣との親戚かな?