それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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人形だけだからマシと副官とアナは語るのであった。


誑しは遺伝する

レイラ・エストレーヤがどんな人物だったかをアナに聞いてみれば返ってきたのは天然誑しの気質が強かったですね、と言う言葉。

 

だが、その気質には二人共、心当たりがったりする。いや、ユノに関してはナガンとかにそう言われていると言うだけでな話なのだがノアに関してはクフェアにはそれはもう心当たりしか無かった。

 

よく語られるが彼女はどういう訳か、助けた人形に好かれやすい、確かに現れ方や一人で危機を跳ね除けてしまい、しかもアフターフォローもバッチリと自分の旦那ながら流石だとは思うのだが、結果として頻繁というわけでもないがそういう人形がこの基地に訪れたり、ノアを出掛けに誘ったりする事があったりする。

 

(いや、まぁあの人が浮気するなんて欠片も思いませんけど、ただノアも少しはこう、自分の行動というものを見直してほしいとは思いますよ……)

 

対してユノもユノで先程も言ったが他人からの評価に人形誑しと言うものは存在しているしナガンとかに言われることもあるのだが、どうにも自分はそういう人間じゃないもんという思考が強い、だがレイラもそうだと聞いてしまうと、うーんとついつい考え込んでしまう。

 

その様子を見てアナはもしかして母親を悪く言われて機嫌を悪くしたのではと冷や汗をかきながら

 

「ああ、いえ、その、決して悪い意味とかではなく、あの人にはそういう他人を惹き寄せる魅力のようなものを持っていると言う話でして!?」

 

「別に怒ってないけど、そうじゃなくてね、おばあちゃんとかに私は人形誑しだって言われることがよくあるからさ、でもそうなのかなぁって」

 

刹那、場が沈黙した。そうなのかどうかと聞かれればこの場の二人はこう答えるだろう、バッチリ遺伝してますと、だがそれを素直に言って良いものなのか、だが天然誑しの気質は事実だしと言葉を考えていると、足音が聞こえ会話を中断してそっちを見ればナガンがのんびりと歩いてきていた。

 

「む?なんじゃお主らが集まるとは珍しい」

 

「副官、お一人ですか?」

 

「うむ、たまにはのんびりと散歩もいいじゃろうとキャロルにアニス達をぶつけて来たところじゃ」

 

サラッとそんな事を言うナガンにハハと苦笑を浮かべてしまうアナ、見ればユノもクフェアも同じ様な表情を晒しており、ナガンは何じゃ別に良いじゃろうてと答えるが当の本人は57を生贄にする方法で逃げようとして失敗、現在は保母さんのような事をしている57と魂と生気が抜けた瞳のまま乾いた笑いをしながら揉みくちゃにされているキャロルと楽しくて仕方がないというテンションでお遊戯をしているアニス達が運動場で見られるらしい。

 

それは余談なので置いておくとして、兎も角それからナガンの方からで、今何してたのじゃと話してみれば

 

「レイラお母さんのことを聞いてたんだ、ほら、アナから見たお母さんってやつ」

 

「ほぉ、確かに今まではわしからしか話は聞けんかったからな、でどう話したのじゃ?」

 

「え!?あ、厳しくとも優しく面白い良い指揮官だったと」

 

嘘はいってないと言う眼でそう告げるもナガンは意味ありげな笑みを浮かべつつ、ユノの隣に座り、コホンと一つ態とらしい咳払いをしてから

 

「で、何を話したのじゃ?」

 

「……」

 

引き攣った笑みを浮かべるアナにナガンは追及の手を緩める理由なぞあるわけもなく、笑みを崩さないまま再度問いかける、が彼女は黙秘を行使しますとばかりに口を紡ぐがその視線は泳ぎに泳いでいた。

 

元々、彼女はポーカーフェイスは苦手な分類であり、しかも相手はナガンなので隠せるとは露も思ってない、だがそれだからといって【天然誑しの気質が強かったですね】とか言ってましたとか言えるわけないじゃないですかと思うも

 

「お主が、それだけの評価で止めるわけなかろうて、他人にならまだしも指揮官に話となれば特になぁ?」

 

「人形、人間問わず、天然誑しの気質が強かったと話しました」

 

折れた、と言うよりも元々ナガンが言い出したことなので自分は悪くないと言う開き直りも若干ある、そしてそれを聞かされたナガンは呵々とひとしきり笑った後

 

「くく、そうさなアヤツの誑しっぷりにはいつもいつも頭を悩まされたものじゃよ」

 

「そんなに?でも、レイラお母さんってしっかりしてる感じだよね、おばあちゃんの話とかじゃ」

 

「あぁしっかりしておるよ、決してキザだったとかではない。ただあれじゃ、いうなればお主の人形誑しが人間にも作用されるものじゃから基地への異動願いやらが週に一度は届いてなぁ、その都度引き抜きはやめろとか言う言いがかりを受けたものじゃ」

 

「ノアみたいですね……」

 

おぉ、正しくそうじゃなとクフェアの言葉に反応したのだが、そこでユノから待ったが掛かる、先ほど自分の人形誑しがとナガンは言ったがそこは違うだろうと

 

「私、別に誑し込んだりしてないよ?」

 

「何を言っておるんじゃお主」

 

ユノの私その評価を不当だと思ってますと言う声に先ほどまでの笑みを引っ込めて真顔で答えるナガン、コレばかりはナガンの言葉が正しいと沈黙を貫きながらも肯定してしまうクフェアとアナは向こうにばれないように小さく頷いてしまった。

 

まさかナガンからそんな反応が来るとは思ってなかったユノは驚いた表情をしながらも

 

「いや、だって本当に誑しとか言われても心当たりないし……」

 

「はぁ、言い訳の内容まで遺伝しておるのか、いっそ懐かしさを覚えるのじゃ」

 

「あ、あはは、ですが結果としてこの基地は此処まで大きくなったのではないですか?」

 

「ノアも、お義姉さんが手を伸ばしたから今があると聞いてます、なので悪いことではないですよ」

 

フォローしてはいるのだが此処で大事なのは二人共、ユノの人形誑しは否定していないという部分であり、珍しくユノがそこに気付きつつ、でも自分だけがその称号を授けられるのは不公平だとばかりに

 

「いや、でもほら、そんな事言ったらノアのほうがあれじゃん、誑しとかってやつじゃない?」

 

「アヤツは言うまでもなかろうが、寧ろあれで誑しじゃなければ何がそうなるのかってレベルじゃぞ、と言うか表面化しないだけでお主にも同じ様に感情を抱いて玉砕しておるの居るからな?」

 

「……え!?」

 

(最近だとSM-1さんの事かな)

 

(そう言えば、IDWが今度は向こうの被害者かとかBARで言ってましたね……)

 

基地の誰かに惚れて玉砕しましたという話はノアに惚れた、だけな訳がない。キャロルだってありえなくもなく、ヴァニラだって危険度で言えばそれなりに高かったりする、それを思い出したナガンは

 

「この基地あれじゃな、人間は尽く天然誑しの気質持ちしか居ないかもしれぬな、あぁいや、カリーナは別じゃな、あれはとてもそうは見えん」

 

彼女の呟きに釈然としないんだけどと言う視線を送るユノ、だが悲しいかなクフェアとアナも含め、ナガンの呟きがこの基地の総意である。




レイラさん絶対に一度は同性からも異性からも人形からも告白されてる気がするけど巻き込まないようにやんわり断ってそう。

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