それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
休日のP基地、その午後の昼下がりのカフェ、昼食を過ぎた辺りの時間だからか店内にいる人形達は基本的にお茶をしながら仲間達と過ごしている中、ヴァニラも定位置となっているカウンター席でイベリスと話しながらお茶をしていたのだが、見渡した店内でふと気付いた。
いつもの場所にいるはずの人物が居ないと、何時もであれば扉の直ぐ側のテーブル席にて道具一式を広げて仲間達の占いをしているはずの彼女【K5】の姿が見えないと気付いてから
「占い師さんは今日は見てないけど、何か聞いてる?」
「K5さんですか?確か、今朝に朝食を此処で食べてから何処かにお出かけなさったようですよ」
出掛けた?と思わずオウム返しをしてしまうヴァニラ、それも無理はない、K5が何処かに出掛けたなんて話は始めて聞いたからだ。しかし改めて考えれば、別に彼女は出不精とか言うわけでもないし、何時だったか自分達のデートにも後をつけていたらしいので出歩かないわけではなかったかと考え直す。
しかし、何処に出掛けたのだろうか、正直に言えば想像が付かないのだ、もしかしたら占い道具の仕入れかなとしか考えられないがそれはあまりに失礼だろうとコーヒーを一口飲んで思考をリセットさせたタイミングでカランカランと来客を伝えるベルが鳴り見てみれば、噂の本人のK5
「ただいま~、マスター、コーヒー貰えるかな」
「直ぐにご用意しますね」
「お帰りっていうか、何処に出掛けてたのよ」
よいしょとK5が席に付いてから注文をした所でヴァニラが聞いてみれば彼女は軽く伸びをしてから、何時ものように占い道具一式を並べ、それからヴァニラの方に向き直して
「本社の方にちょっと占いを」
「へぇ、本社にね……本社!?え、そこまで出掛けて占いって依頼でもされてるのかしら?」
「いやいや、勝手に出向いて占ってるだけさ、ちょくちょく人間相手に占わないと鈍っちゃうんだよ」
「そうだとしても、本社の人たち相手に占いするっていうのは中々大変だったのでは?あ、どうぞ、ご注文のコーヒーです」
ありがとと受け取ってから砂糖とミルクを入れて飲んでから一息つく。イベリスの言う通り決して楽なモノではない、しかしコレは大事なことなのだ、特に占い師という立場で本社に居るとそれはもう面白いくらいに個人レベルから組織単位での噂話が集まるのだ。
勿論、占いの腕前を落とさないようにするというのも含まれているが本社まで出向く理由は大凡それである、情報部とはまた違うこういった話の集め方は何かと有益なものが出ることも多いので彼女は定期的に出向いていたりする。それを聞いてヴァニラとイベリスは成程と納得すれば、K5は楽じゃないのは確かだけどねと答えてからタロットカードを並べて、集中しながら開いていく、どうやら誰かを占い始めたらしいのだが捲っている途中で
「ふむ?」
「何かあったのかしら?と言うより誰を占ってるの?」
「……いや、指揮官をちょっとね」
「その様子だとあまり宜しい結果ではなかったのですか?」
イベリスの心配そうな声にK5はなおも曖昧な返事を返してから残りを開いていくのだがやはり表情に変化はなく、寧ろ更に難しい表情が強まっていく様子にヴァニラも不安になる、彼女の占いというのは割と洒落にならない的中率を誇っており、そんな彼女が指揮官の占いで難しい顔となれば誰が聞いても不安にはなるだろう。
だが返ってきたのは悪いとも良いとも言えない、そんな言葉だった、それから
「遠い場所に雨雲が掛かってるのは確かなんだ、でもそれの規模が分からない。小雨か、嵐か、雨が降るのは確かだってくらいしか」
「聞くけど、それが悪いことなのかどうかは分かるの?」
「……多分、良い予兆では無いと思、ごめん本当は断言したいんだけど指揮官の占いって私でもキチンと見通せないんだ」
目を閉じて開いたタロットカードに手を翳しながらそう語る彼女。曰くどうにも見えるのは見えるのだが曖昧だったり、遠すぎたりだったりと具体的なものが拾えないらしい、ではあのユノの暗殺事件の時は拾ってたのではとイベリスが当時を思い出して聞いてみるのだが
「あの時は指揮官が刺される直前だったからね、つまり当日だったり数時間前だったりが限界だってことさ……何だろうね、指揮官にはなにか特別なものがあるのかもしれない」
「その時になるまではどうしようもないってことか、歯痒いけど仕方がないか」
「まぁほら、私が言うのの可笑しいけど所詮は占いさ、当たるも八卦当たらぬも八卦、気にし過ぎても良くないってやつだよ」
「いえ、貴女のですから気になってしまうのですが……」
おや、随分と信頼度が高く見られてるようだねと驚いたような表情になるK5にどれだけ自分の占いを低く見てたのよと呆れるヴァニラ、だが彼女は別に自分の占いの的中率を低く見ているというわけではない、寧ろこうして言葉にすることで少しでも外れてくれることを祈っているのだ。
よく当たるとこの基地に来る前から言われてたからこそ、そして彼女たちには言わなかったが席に座ってから占いを始めてから直ぐにほんの一瞬だけだが『視えて』しまったのだ、しかし問題がそれにもある『視えた』のが誰のものなのかがはっきりしなかったのだ。
最初はユノのことを占ったのだから彼女だろうと考えるもどうにも写った光景が彼女に関するものではなった気がした、何と言うかあの場面は基地でのことではなかったのは確かだと。
(それに、何だか苦しんでいた、出産間際に何かが?いや、それとはまた別だった気がする)
もしかしたらまた視れるかもしれないと再度タロットカードに手を翳してみるが何も映らずに、その曖昧な結果を彼女に知らせるだけ、そう都合良くは視せて来れないかと溜息を吐いてから、気分転換に未だ不安げに見つめる二人に視線を向けて
「そうだね、気にし過ぎても仕方がないし、ヴァニラのことでも占ってしんぜよう」
「げ、何時だったか言ったけど私あまり占いって信じない質なんだけど」
「まぁまぁ、良いじゃないですか。それで何を占うのですか?」
「そうだね、折角だし恋占いをタロットカードでやってみようか……さて、始めるよ」
何時ものようにタロットカードを並べ、集中しながら一枚一枚開いていけば、こちらはすぐに、そして鮮明に結果をK5に知らせてくれたのだがその内容に思わず苦笑を浮かべ
「まぁその、あまりイベリスを怒らせないようにね」
「待って?なに、何が視えたの、え?う、浮気なんてしないわよ私は!」
「信じてますからね、私」
視えてはいない、だが占いの結果はこう告げた、彼女は遠くない未来、人形を連れ込んでくるだろうと。
最後の語りはまぁその、今週のピックアップで引ければ書きたいなって、でも引けなくても書いていいかなって(震え声
K5さんは、誰の未来が視えちゃったんやろなぁ