それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
ある日の朝食、モグモグと相変わらずな量の料理を美味しそうに平らげていくユノを見てクリミナはふと疑問が浮かんだ。
そう言えば此処数日で彼女が悪阻で戻してるとも辛そうだという話を本人からも、副官からも、G36や娘たちからも聞いてないなと、なので何気なく話を投げかけてみる。
「(もぐもぐもぐ、ゴクン)そう言えば、そうかも?」
「えぇ……ペーシャの話ですと悪阻は16週までは続くはずでは?もしや、本当に軽くなってるだけなのでしょうか?」
「うーん、でも吐き気とか無いんだよね、言われると。あれ、と言うよりもどのくらい前から普通に食べてるんだっけ私」
今の今まで悪阻というものを忘れてましたという声と表情から、それを思い出そうと思考を巡らすユノを見つつ、自分でも心当たりを探してみる。思えば一週間くらい前から落ち着いていたような気がすると、いや、もしかするとそれよりも前、だがと思考の沼に沈み始める。
更に言えば悪阻を聞かなくなってきてからというもの彼女の食欲が加速したような気がしないでもなかった、事あるごとにお腹が空いたと、それでも規則正しい食事にしているのだが一度の食事量は増えたような気がすると。そこまで考えれば思わず不安になる、何かしら異常が出てしまっているのではないかと。
なれば相談相手は自ずと決まる、勿論この基地の名医であるPPSh-41だ、彼女は食事の後に相談事があると医務室に来た二人からの話を聞いて、ふむと話を纏めたノートのページをボールペンの先端でトントンと叩きながら思考を巡らし、まさかと思い至る
「……悪阻が治まった?」
「え、でもまだペーシャちゃんが言った週には一月あるよ?」
「えぇ、ですから少し分からないんですよね、ですが聞いた感じではクフェアさんと同じ様な感じであり、食欲もほぼ同じ、とすれば治まったと考えるしか無いんですよね」
どういう事だと彼女にしては珍しい難しい表情で呟いてから先ほどと同じ様にトントンとボールペンを叩く、その様子にSOCOMもノートを覗き込んでから二人に向き合い
「指揮官は、妊娠11週目の筈よね」
「ふえ、えっと……うん、そうだね」
そうよねぇとあまりに早い悪阻の落ち着きに疑問符が浮かぶ、これは医療組の二人でも初めての話、ともなればこれが彼女の正常と考えるべきか、もしくは何かしらの異常が起きているのか、少し考え診断だけでは情報が足りないと判断したPPSh-41は一度検査してみましょうとなり胎児の状態も確認する形で検査してから、結果と胎児の状態の写真を二人で診てみれば、分かった。
「ねぇ、これって」
「あぁそうか、私達は根本的に勘違いしてたのか……」
「え、な、なにかありましたの?」
不安が交じる声でクリミナが聞く、隣ではユノも言葉にしなくとも何かしらの異常があったのかと言う表情で二人を見つめている。
これにはPPSh-41とSOCOMは少しばかり迂闊な声を出してしまったと謝罪してから
「異常はありません、胎児は順調に成長してますよ、でその成長が悪阻が早期に落ち着いた理由に繋がるんですよ」
「まぁ言っちゃえば、早いのよ成長が、そして指揮官の体もそれに適応しきってしまった、だから悪阻の期間が過ぎて食欲が増し始めた、それが答えよ」
ん?とユノの頭上に疑問符が浮かび上がる、いや、言ってることは理解できている、だがそれではまるで自分もクフェアやD08の彼女たちと同じではないかと思いつつも、だがそれにしては少し遅いしと言う感じに。
クリミナもユノと同じところまで思考は巡ったのだが、しかしならばどうしてそうなったのかまでは行くことは出来ずに難しい顔を晒しているとPPSh-41から、だが彼女もあくまで推測になりますがと前置きをして
「先ず、指揮官の体は少々、いえ、かなり特殊です。勿論、人間という部分はありますが各種様々な部分で人形と近い処置をされているのは知ってますよね?」
「確か、ハイエンド化もその一つだっけ?」
「えぇ、ですので正確には指揮官は人間と人形の間の子、という形になっています、そこに今までは【エアハルテン】というナノマシンが体を維持し、そこからアーキテクト達が作り出した【リバイブ】というナノマシンを投与と治療による急成長と、後者は今でも体内に残りサポートをしています」
ペタペタと紙を貼りながら説明を続けているPPSh-41、彼女の見立てでは、この指揮官の特異体質と、過去に一度治療前にクリミナとの性行為、そしてリバイブによる治療、これらが原因ではないかという事らしい。
勿論、悪い意味ではない、胎児はキチンと育っているし母体である指揮官に悪影響が出ているわけではない、ただですねとPPSh-41は……
「ってことで、出産予定が早まることになったみたい」
「それは、子に悪影響は無いのじゃよな?」
「無いって、寧ろすくすくと育ってて二人共驚いてた」
ならばよいかとその日のオヤツの時間、ナガンと二人でお茶をしている時に今日の事を話し、母子ともに影響はないということを話せば安心したように息を吐いてからペルシカから送られてきた饅頭を食べる。
彼女も確かに言われてみれば落ち着いてたなと思い出しつつ、それはてっきりそういう体質だと考えていたのだが、まさかユノの様々な要素が理由で成長が早まり、それに応えるように彼女の体も成長していて、だから悪阻が治まるのも早まっていたとは考えてもいなかった。
「となると、これからお主もお腹が出てくるということじゃな?」
「そうなるね、重くなり始めるから気をつけるようにって念押しされたよ」
「当たり前じゃろうて、ふむ、それにしてもナノマシンがのぉ、アーキテクトも知らぬことじゃろ?」
「アーちゃんにも話してみたらビックリしてたね、D08のドリーマーさんも多分予想はしてなかった効果じゃないかって」
リバイブは元からユノの体をサポートするためのナノマシン、コレによって彼女の体は年相応に成長し、子を宿すことも出来たのだがどうやら更に宿した命にもサポートを働いているらしく結果として全体が少しばかり早まったらしい。
まだ絶対に安全と断言できるわけではないので週に一度は検査を受けることにはなったが、ユノは思う。
(貴方と会える日が早まって、嬉しいな)
愛おしそうにお腹を擦る彼女の姿にナガンは優しい顔で見つめるのであった。
要は出産予定日が早まったよということである、まぁほらユノっち色々と特殊だからね、うん