それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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普段怠け者な子とかが実はすごい特技持ちとか心が踊らない?


昼寝マイスターの意外な姿

3月14日、とある国ではバレンタインデーの一ヶ月後に当たる今日にそのお返しをするという日『ホワイトデー』と呼ばれるその日のP基地の食堂に激震が走った。

 

時間にして13時、休日だということも手伝ってまだ昼食を食べてるものも居れば、もう食べ終わり仲間達との会話を楽しんでいるものが何時もならば居るこの時間、食堂に居た面々は調理場に立つその人物に目を奪われていた。

 

「えっと、形から入るタイプだったっけあの娘」

 

ヴァニラが呟くがそれに答える声はない、だが少なくても自分達が知る中の彼女はそういった性格ではなかったと思うというのが総意だろう。そんな彼女達の視線の先に居るのはイソイソと道具を用意して調理の準備を進めている【G11】の姿、それだけでも十分に衝撃的だと言うのに彼女の今の服装はいつものダボッとしたあの姿ではなく、キチッとしたパティシエといった感じの服装。

 

基本的に休日といえば基地の各所で惰眠を貪って過ごしているはずの彼女が何で調理場に立っているのだ、あの服は何処からそれは出してきたのだとか、とにかく何がどうしてそうなったのだと言う疑問が場を支配していた。そんな空間にふらっと現れたのは彼女が所属する部隊の部隊長にして、保護者ともよく言われている416、彼女は食堂の妙な空気にどうしたのかと思うも調理場のG11を見て納得したという表情を浮かべていると近くに居たユノが

 

「ねぇ、G11って料理できるの?」

 

「まぁ普段を考えるとその反応よね、安心しなさい、スイーツに関しては私ですら両手離しで称賛する腕よ」

 

「え!?」

 

416の嘘を言ってるとは思えないほどの声で出された言葉に驚愕の声を上げてしまうクフェア、しかし誰が彼女を責められようか、寧ろ彼女が声を出さなくても他が出してた、その証拠に知らなかったんだけどそんな話とばかりの驚愕しているFMG-9が居るのだから。

 

「でも、あいつがあの姿で調理場に立つなんて珍しいのは確か、何があったのかしらね」

 

どうやら416でもそこまでは分からないらしい、一体彼女に何がありこうしてスイーツを作ろうとなったのかそれは昨日にまで時間が遡る。

 

午前の業務が終わりお昼も食べ終えて次の任務まで時間があるのだが寝るには不十分な時間をどうしたものかと歩きながらG11が考えている時、昼食後の食休みだろうクフェアと最近では付き添いとして側にいることが多くなったネゲブと遭遇、軽く挨拶をすれば向こうから折角だから少し話していかないかと誘われれば丁度暇潰しを探していたので喜んでと会話に参加、それから明日がホワイトデーだという話になり

 

「そう言えば、クフェアはバレンタインデーに何か送ったの?」

 

「用意しようとしたんだけど、ノアが無理しなくてもいいし、お腹の子が無事に成長してくれるだけでもアタシにとってはバレンタインデーって言ってね」

 

「あの娘、いつそんなキザなセリフ覚えてるのよ」

 

「いや、多分無意識だと思います」

 

嘘でしょとネゲブが声を漏らす中、ふとG11は思い出した、自分もバレンタインデーの日にリベロールからチョコを貰っていたなと、あの時は偶々作ったみたいな感じだったで自分もその日がバレンタインデーだということを頭からスッポ抜けていたしその後に416にそういうことでしょと言われて気付いたくらいなのだが

 

ともかく貰ったという事実があるのならば返さなければならない、G11という人形はこう見えても義理堅いのである、だが同時に彼女は何と言うべきか、それこそこの基地では珍しいタイプの鈍感だった。

 

「(友チョコにお返しってのも変かな?まぁ、うん、貰ったなら返す、コレは大事)よしっ、明日は頑張ろう」

 

彼女はあれを本命だとかは本気で考えていなかった、誰にでも渡している義理チョコ、そうじゃなくても友チョコと呼ばれるそういう方面のチョコだろうと、だがどうであれば手を抜くつもりはない、なので今から気合を入れるのだと呟くが事情を何も知らない二人はキョトンとした表情を晒してから

 

「ん?何を頑張るのですか?」

 

「明日を」

 

「いや、だから明日の何をよ」

 

悪いけどそれは明日の秘密であると押し通してから彼女は仕事に戻り、そして今日になる。一応、昨日の夜の時点で自分が使える材料はチェックしたし足りないものはイベリスとスチェッキンと交渉して用意した、この服にも久し振りに袖を通したがコレには特に深い理由はない、ただまぁ私服を汚すのは不味いからという理由である。

 

「……よし、作ろうか」

 

誰にでもなく呟いてからG11は昨日考えたレシピを電脳内で読み上げながら慣れた手付きで調理を始めていく、その姿は何度かスイーツを作ったことのあるユノも、カフェをしているイベリスも、メイドとして何度も作っており腕には自身があったG36も驚くくらいの手際であり、本当にあの調理場に居るのは自分達の知っているG11なのかと思わず言葉にしてしまいそうな光景だった。

 

言うなれば手品、いや、まるで踊るかのように調理を進めていくその姿は魔法でも見せられているのではないか、決して詰まる様子もなく、混ぜ加減も分量も最低限の確認で済ませ、包丁捌きも流れるように材料を切っていく。

 

「す、凄い」

 

「ふふ、私も初めて見せられた時は目を疑ったわ……」

 

いや、いつ作ってもらったんだよとM16が聞けば偶々彼女が一人でおやつが食べたいとかで作ってる時に出会したらしい、と会話をしている最中でもG11の手は止まることもなく、それにしても誰に為に作っているんだと誰かが疑問に思ったタイミングで食堂に入ってきたのは最早この基地の彼女の制服となっているナース服姿のリベロール、彼女は入ってきてから調理場を見れば

 

「げ、ゲヴェーア!?え、嘘、え!?」

 

「あ~、丁度いいタイミングだ、もうちょっとで出来るから此処に座って待っててね~」

 

どうやら招待したのはG11らしい、とそこでクフェアは昨日のことを思い出してポンッと手を打った、これはつまりバレンタインデーのお返しだと。

 

という訳でリベロールが座ってから数分としないで出てきたフルーツタルトケーキにリベロールは何度もそれとG11を見比べ、それからやっと今日が何の日だったかを思い出して

 

「もしかして、ホワイトデー?」

 

「そうだよ~、リベのチョコが美味しかったからそのお返し、久し振りだからちょっと腕が落ちてるけどね」

 

「えっと、い、いただきます」

 

周りの視線が非常に恥ずかしいが彼女はフォークを入れてフルーツタルトケーキを一口、その瞬間、彼女は腕の違いを見せつけられたと同時に幸せな気分が口いっぱいに広がった。

 

ただ一言、彼女が出せたのは美味しいと言う感想だけ、それを聞いたG11は良かったと安堵の息を吐き、その後は美味しさに無言のままケーキを食べ進めていくリベロールを黙って見つめるG11と言う光景に誰もが口を挟めるわけもなくただゆったりと時間が流れるのであった……

 

となれば何とも平和だったか、では最後にこんな場面を。G11が出したケーキをリベロールは自分でも驚くほどに速い、数分としない内に完食してから食後の紅茶を飲みつつ

 

「それにしても此処まで凄いお返しされるとは思ってませんでした」

 

「へへ、そりゃ【友達】から貰ったチョコだもん、お返しは本気でやるさ」

 

「……え?」

 

おっとこれは新しい形が来たにゃ。食堂で紅茶を飲んでいた恋愛相談窓口キャットの諦めにも似た声が食堂に響くのであった。




パティシエG11って言う何処から飛んできたのかわからない電波拾ったので使いました。

最後?まぁほら、彼女は運命から逃げられないんやなって……

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