それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
特殊戦術室、ではなく通常の作戦室、そこに暗部の彼女達は集まっていた、しかもフルメンバーと言う豪華っぷり、最近ではユノの側だからと呼ばれることもなかったクリミナとルピナス、そしていつの間にか暗部のメンバーになっていたらしい【ステアー】ここでは【ローズマリー】と名乗るらしい彼女も来ており、更にはピヴワヌことカリーナも来ているとなると一体何が始まるのかとすら思う。
ともかくそんな彼女達は先ほどから真剣な表情を崩さず、最後の一人であり暗部の長であるナガンが入室、そして
「集まってるな、では作戦会議を始まるぞ、アリババ」
「はいはい、目標ですが現在移動中、約30分後には目的地に到着すると思われます」
作戦室に置かれているテーブル型の投影モニターのスイッチを入れればブオンと浮かんだのはその目標が向かっている街【ガーデン】の地図、見れば二箇所に赤い点が点滅している。
片方はグリフィン所有の駐車場、そしてもう一箇所はリポスティーリオ、コレを表示させてからFMG-9は更に操作をすれば今度は駐車場側の赤い点から複数本の線が伸び、それらは最終的にリポスティーリオに着く
「これが我々が予測したルートです、ですが目標の性格からしてこの路地裏はほぼありえないと思われます」
「まぁ確かに考えられないわね、それで言ったら何かがあったと同義だと思うわ」
グローザの言葉にその場の全員、いや、一人を覗いて頷く、そしてその一人は真面目な顔をして頷き会議をしている面々を見て思わず口角を引き攣らせていた。
一体何をこんなに真剣に会議してるんだこの人達、と。正直に言えば彼女【SuperSASS】は少し前まで基地の監視塔からの任務に就いていて暗部用の通信機から緊急招集という事で来てみればコレである、勿論この会議の題目は知っている、寧ろ知ったからこそ何で此処までマジになってんのこの人達という感情が強い、なのでこのままだとこの空気のまま任務が始まりそうな面々に遠慮気味に手を上げてから
「あの~、確認ですけどメメール」
「何じゃ?」
「コレって言うか、この会議ってその、シャフトちゃんのお使いって話ですよね?」
P基地が誇る暗部、本日の緊急招集のお題は【シャフトの初めてのお使い】暗喩でも何でも無い、文字通り、始まりは今日の朝、ユノが自室でコーヒーを飲むときなどに使うマグカップをうっかり割ってしまったという話から始まった。
別段思い出があるとかいうわけではないが、部屋に置いてあるマグカップはあれ一つしか無く、何処かのタイミングで買い直さなきゃなと言う事を朝食の時に聞いた娘組、その中でもシャフトが何を思ったのか、彼女にしては珍しく
『あの、私がま、街に買いに行きます』
これはシャフトなりの自分が変わるための一歩だと言う考えからの発言だったのだが夫婦は、いや、シャフトを除いた一家全員が驚いた顔でシャフトを見るほどの衝撃が走った。
しかし、そんな空気になっても彼女は一歩も退かず、ルピナスとステアーが一緒に行こうかと言えば、今日は一人で頑張ってみたいと初めて聞く決意表明に更に驚かされた。なので勢いに負けた夫婦はならばお願いできますかと頼んだのだが、そこは少しばかり過保護な二人、と言うよりも今の今まで誰かと一緒じゃないと街に行けなかった彼女がたった一人で街に出て大丈夫なのかという不安もあり、それをナガンに相談した結果がコレである。
「ガーデンは確かに治安が良いが、完璧ではないからな、警戒は大事じゃろうて」
「いやまぁ、そこは理解できるんですけどね?その、過剰じゃありません?」
はっきり言おう、過剰である。ガーデンはナガンが言ったように治安は他の街に比べると非常によく、裏路地にでも行かなければ犯罪に巻き込まれることなんて滅多に無く、その裏路地も警邏の人形にC-MSの部下達、コレは彼女達が知らないことだがG3の信者たちだって目を光らせているので正直気暗部がフルメンバーで監視に着く理由はあまりない。
無いのだが、いや、無いはずだと断言できるのだがそれを良しとしない、と言うよりもそれでも不安なんですというのがクリミナ
「しかし、少し前にもキャリコが警邏中に誘拐事件未遂を見つけ乱闘騒ぎになりましたわ、もしシャフトがそんな輩に絡まれでもしたら……」
「過保護か!!!」
SASS、遂に吠える。いや、分からないでもないけどさ!と思いつつもだからって暗部丸々動かすヤツ居るのかと周りの反応を見るために視線を送れば、FMG-9は笑いをこらえているので向こうはオフザケで本気でやっていると思われる。
ウェルロッドやグローザはまぁそうよねと思いながら互いに紅茶とコーヒーを飲み、G3は何を言ってるのですか貴女はとこっちが冷や汗をかきそうな視線をSuperSASSに浴びせ、ルピナスとステアーはクリミナと同じ様な表情で
「でも、シャフトは色々と流されやすいし……怖がりだから途中で動けなくなりかもだし」
「も、勿論、お使いは成功するって信じてるわ、信じてるけど、ほら、あれよ!」
と妹の初めての単独行動にとにかく不安なんですというのを隠せてない様子で告げ、その言葉にSuperSASSはこの様子だと指揮官も同じ考えなのかなと思ってしまう。なんて思われていたユノだがこの件について、会議後にSASSが聞いてみれば、母親らしい微笑みを浮かべながら
「全く心配じゃないかって言われると嘘になるけど、でもあの娘なら大丈夫だと思うよ、だって結構しっかりしてるし、やるって決めたらやる娘だからね」
「ですってよ旦那さん」
「うぐっ」
思わず胸を抑えるクリミナ、それを見てユノはでも皆の心配は分からなくもないから、今回はお願いできるかなとニコリと告げられればSASSもならばと任務に向かう。
しかし、こんなゆるふわな内容に反していざ監視の任務を始めようと考えると実は難易度は高いものだと彼女、いや、暗部全体は考えていた、と言うのもシャフトはどういう訳か気配に非常に敏感なのである。
更に言えば視線というものには更に敏感であり、誰かに見られてると直ぐに感じやすい、コレの有効範囲は未検証なので分からないのだが過去にモシンナガンが基地での監視の任務中、監視塔から結構離れていたはずのシャフトをスコープ越しに見つめ暇潰しをしていた時に何と彼女はしっかりとモシンナガンの方を見てから隠れたらしい。
(……結構難しい任務ですね、気合い入れ無いと直ぐにバレそう)
《こちらアリババ、【赤ずきん】が到着、各員任務を開始せよ》
チラッとスコープで数秒だけ駐車場を見れば気合十分ですというシャフトの姿と送迎役のG36、遂に
「じゃ、じゃあ、いい、行ってきます!」
「はい、お気をつけてシャフトお嬢様」
シャフトの初めてのお使いが幕を開けた。
ヴァルター家末っ子のお使いに暗部フルメンバーで監視に着く基地があるらしい。
次回、シャフトちゃんの初めてのお使いです。