それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
運も実力の内、そんな言葉があるように戦場では実力だけでは説明がつかないような現象で勝利をもぎ取る存在が世の中には少なからず居る、そういった意味では指揮官であるユノも割と幸運で生かされている場面があるのであながち間違いではないだろう。
だがこの狭いようで広い世界、彼女のそんな運の良さを鼻で笑うような運の持ち主が世の中には存在する……それはそう、基地の休憩場に
「いやぁ、結構いろんな人形を見てきたけど初めて見るわねこんな特性持ちは」
「と言うか特性で片付けて良いんですか相棒、何がどう働いたらそんな特性が生まれるんですかね」
ヴァニラとFMG-9の視線の先にはテーブルの上にバラ撒かれている10枚のコイン、しかしよく見ればその全てが『表』になっている。これだけを見れば誰かが表に配置したのではとなるだろう、だが違う、このコインは配置したのではない、一人の人形が無造作に放り投げた結果である。
そして放り投げた当の本人というのが今回の話の主役である【R93】とある事情持ちでこの基地に来た彼女なのだがその事情とは何かという話を休憩所でしたところ、実演を交えて説明するとなり、今の場面になる。
「すっげ、なぁ、もう一度やってくれよ!」
「良いですよ~、じゃあ行きます……エイッ!!」
ノアからのアンコールを受けてR93がそのバラ撒かれたコインを両手に持って、また無造作に放り投げる、勿論テーブルから落ちないようにとの計算はされているだろうけどそれ以外は何も考えなしの投擲、普通に考えればコインは裏表バラバラに落ちる筈……筈なのだが音を立てて落ちてきたコインは全て『裏』
何よりこれは『三度目』のコイン投擲で、三度とも全てのコインが裏か表で落ちてきている、これはもう偶然などで片付けられる現象ではない、勿論だがコイン自体も休憩室に居た者たちから借りているものなので細工があるわけではない。
「強運の持ち主、って感じかしら」
「これだけじゃなくて、サイコロでも複数投げると同じ数字だったり、福引とかでも一等ばっかり当たったりします、まぁ欲しいのは三等とかだったりするんですけどね」
「とんでもない幸運ですねそれ……じゃあ戦場でも?」
日常でこの結果となれば戦場じゃ何が起こるんだよという感じにFMG-9が聞いてみれば、R93は話してくれる。これだけの幸運の持ち主となれば確かに戦場でも有利に働くことは多々あった、例えば狙撃の際に基本的に風が止まない地域だと言うのに彼女が狙うというタイミングで都合よく風が収まり簡単に狙撃できたとか、例えば狙撃に気づかれ回避されたと思ったら跳弾で撃破できたり、と此処までは彼女曰く比較的に良かった幸運。
だが次から出てきたのは幸運ではあった、だけどそれは
「あ、これ死んだなって戦いでも私一人だけ生き残ったりは当たり前、と言うよりも……どんな作戦でも私以外は死んでいって残りのはいつも自分だけ、幸運ではあるよね、でもある日から言われるようになったよ、私が周りから運を吸って他が不幸になっているんだってね」
「論弁ね、でも周りはそれに流される」
ヴァニラがそう告げたようにその噂がグリフィン中に巡ればR93はある種の疫病神のような扱いを受けるようになる、基地に配属が決まってもその個体だと分かれば拒否される、その中でもそんなわけ無いと向かえてくれた基地がまた壊滅すれば噂が更に強固になる。
結果としてこの基地に流されてきた、そう語った彼女の眼には半ば諦めに似たものが込められていた。寧ろ彼女はこの基地に来てまだそこまで経っていないがこんな良い基地が自分のせいで滅びることがあるくらいならば自分を追放したほうが良いとすら思っているフシもある。
が、そんな事をこの基地が良しとする訳がない、何故ならば
「ま、だったらこの基地に来たのはR93にとって不幸でもあり幸運でもあるわね、つまりプラマイゼロよ」
「え?」
「まぁ能天気バカ自体が不幸と幸運を行ったり来たりするからな、あいつ何度命狙われて、その上で生還してんだ?」
そう、この基地に限ればもうはや運がいいとか悪いとかの領域は過ぎ去っている部分が強い、確かに個人の運の良し悪しがあるかもしれないが、個人の運が基地全体に適応されるとすればもう既にこの基地は無くなっているだろう。
つまりは、彼女の心配というのは杞憂なものである。そんな感じのことをヴァニラが説明すれば、R93はキョトンとした表情をしてから
「私は、居ても大丈夫なのでしょうか」
「出てけって言うやつは居ないわよ、そもそも他の基地だって貴女が原因なわけ無いでしょうに、ねぇアリババ」
「軽く調べてみれば単純に当時の戦況が悪いって感じですね、寧ろこの状況から生き残れたR93のタフネスが凄いってまであります」
確かに運が良かったというのもあるだろうが戦場はそれだけで生き残れるほど甘いものではない、そんな所で一度だけではなく何度も生き残っているとなればそれは彼女が運がいいだけではなく、実力も確かにあるということに他ならない。
R93にとってそこまで言われたのは初めてだった、自分でも他人も彼女がその状況下で生き残れたのは運が良かったから、そうとした言われなかったから、だが此処では違う、貴女は確かに実力があるのよと言われた。それによって気付けば彼女の中でなくなりかけていた自信、前向きな思考が蘇った気がした、だからだろうついこんな言葉出てきた。
「ありがとうございます」
「んあ?どうしたんだよ突然、礼なんて」
「いえ、何でもありません、所で実はですね、その、私ってこんな感じに幸運だったりするんですけど、その、振れ幅ってのがあるんですよ」
振れ幅、このまま良い話で終わらせるのも悪いし、自分が運が良いだけじゃないってことも伝えておこうという事で語り始めたそれに寧ろそっちの方が怖いんだけどとなった。
曰く、先ほど語ったみたいに驚異的なまでに強運な時があるのだが、それがある日突然、そっくりそのまま反転する時があるらしい。今回みたいにあコインを投げても全く揃わなかったり、福引で何故か何も当たらなかったり、そして一番酷い時は
「戦闘中に突然、銃身が弾けたことがあったり……」
「え、整備不良とか敵の攻撃が当たったじゃなくて?」
「はい、事前まで不具合一切なしで、こう、なんか原因不明でボンって、寧ろよく生きてたなぁって今思ってます」
テヘヘと笑い話のように語るR93、彼女は後にこの基地ではこう呼ばれる【きょう運の天秤】と。
なんかまた元の人形tp性格が若干?違う子が来ましたねこの基地……
所で運って話を聞くとギャラクシーなエンジェルのミルフィーユさんが出てきてですね(今回の話の大元)