それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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偶にはこういうお話でも


この基地の評判は?

ここは本社がある街のカフェテリア、そこのとあるテーブルで如何にも記者ですという姿と仕事に燃えてますという瞳と表情をした少女が同じ向かい側の席に座っているS地区のグリフィンの指揮官に対して取材をしていた、だがその内容はS09地区P基地について聞かせて下さい、それを聞いた瞬間男性の顔は苦虫を噛み潰したようなものになりそれから

 

「あの基地について?あ~、嬢ちゃんってもしかして新人か?」

 

「え、えぇはい、つい先日入社しまして、それでネタを集めてこいと言われましたので、ならばと」

 

「だったら悪いことは言わねぇ、そこだけは止めておけ」

 

男性はグリフィンの指揮官を務めてそれなりの存在だが彼よりあとに出来たあの基地については様々な噂を聞いているし、何だったらその一部が本当だということも知っている。

 

だからこそ目の前の希望に溢れる新人記者に警告をする、あの基地には触れるなと。だがそれでハイ分かりましたとなるならばこのご時世で記者になったりはしない、なので彼女はそこを何とかと食い下がるが

 

「知らなくても良いことがあるんだ、そこは嬢ちゃんだって分かってるだろ?それにネタだって他にあるだろうに」

 

「むぅ、そこまで言われると増々気になってしまうのですが……まぁ分かりました、貴方の善意を不意にするような真似も宜しくないですからね。ってことで変わりってわけじゃないんですけど、貴方から見てあの基地ってどういう印象なのですか?そこまで言うってことは良い印象は持ってないようですけど」

 

「嫌にあの基地に拘るのな、それくらいなら良いけどよ。そうだな……聞いてる限りじゃ【不気味】の一言だな」

 

不気味、その言葉を手帳に書き記しながら彼女は聞く、何がどう不気味なのかと、その際に自分でも調べられたことを提示していくのを忘れない。

 

確かにかの基地は少し探っただけでも黒い噂は絶えない、だが同時にあの基地の待遇は破格であり、決して悪いだけの基地ではないという話も聞いていると話せば

 

「俺もその辺りの話は聞くには聞くが冷静に考えて皆、一基地にしちゃ過剰なまでの戦力、話じゃ問題児な人形を送られているのにその後は問題が起きずに、更には鉄血のハイエンドモデルも鹵獲して技術協力まで付ける。しかも散々襲撃されようが人的被害は殆ど出やしねぇ」

 

「確かにそう言われると割と不気味ではありますね……」

 

「だけど一番不気味なのは指揮官だろうな、前に一度だけ会ったことがあるがありゃ何を見てるか分かりやしねぇ」

 

彼はそのたった一度の、しかも会話をしたわけでも何でも無くただ会釈をした程度の接触で見た彼女の眼に恐怖を覚えた。自分を見て会釈しているはずのその瞳に自分が写ってるようには見えなかったからだ、しかも会釈前までは付き添いできていたのだろうナガンM1895と楽しげに会話をしていたというのにその一瞬だけは

 

「表情が削ぎ落としたような顔をしてやがった、はは、こんなおっさんがまさかガキ一人に恐怖を覚えるとは思わなかったな」

 

「極度の人間不信、ですかね?」

 

「知らねぇよ、でもまぁその後に人形と話し始めたからそうなんじゃねぇか?それ以降は会ったことすらねぇけどな……あ~、そういや他のやつが何時だったか見た時にガキじゃなくて美少女だったぞとか言ってたかな?」

 

思い出したとばかりにその話を出されたので、詳しく聞こうとするが聞いただけだからそれ以上はと返される。なのでそれ以外に何か無いかと聞いてみれば考える素振りを見せてから、根は恐らくは良い人なのだろう、悪い印象だけは良くないとでも思ったのか

 

「だけどあの基地のお陰でウチの地区は楽させてもらってるのも事実っちゃ事実だな」

 

「早期警戒管制基地、何でしたっけ、何か凄いレーダー施設を持っているとか何とかで鉄血の動きが丸裸、でしたっけ?」

 

「何でそこは曖昧なんだよ、いや、まぁ俺も詳しくはないがな。凡そそんな認識で合ってるとは思う、そのレーダーのお陰で鉄血の奴らがそこに襲撃をしようとしてるのか、何処に防衛線を作れば良いのか、どんな編成なら苦戦せずに倒せるか、とにかく聞けばどんどんと情報が出てくるから大助かりってわけだ」

 

最悪、向こうから援軍も来るしなと笑いながらお茶を飲み、記者の少女はなるほどと手帳に情報を纏めていく、その際に見えたページには今の取材と他にも彼の前に数人から貰った話を纏められていた。

 

内容は大体が先ほどと同じ感じでありながら、一部の人形からは実は洗脳されてるのではないかと言う噂が上がっているとか、P基地に救われた他の基地の指揮官からは命の恩人であるとか、とにかく片っ端から集められる情報、評価が書き記されていた。

 

「では最後に、人形の練度、と言う部分では何かありませんか?特に貴方の基地とP基地は最近模擬演習をして完封されたと聞きましたが?」

 

「容赦なく切り込んできやがったな、ああそうだよ、完敗だ。俺はあそこの指揮官よりも前から指揮してて経験を積んでるつもりだったが怖いくらいに完封されたよ」

 

曰く、その時はレーダーの使用は禁止の条件で純粋に練度と指揮での戦いだったのだが開始から押されに押され自分の部隊の動きができずに敗北したらしい、その時の様子を思い出しているのかまた苦虫を噛み潰し多様な表情を作ってから、こう語る。

 

「練度で言えば向こうの方が段違いで上だ、しかも人形自体が指揮官からの指示で動いてるだけじゃなくて考えてやがる、自律行動って言えば伝わりが良いか、とにかく指揮とその自律行動が恐ろしいくらいに噛み合って動きが読めねぇんだよ」

 

「ふむふむ、伊達に数々の作戦と襲撃を退けてるわけではないってことですかね」

 

「ざっくり言っちまえばな、で、他に何かあるか?」

 

「えっと……あ、もう無いですね。本日は貴重な時間をいただき有難うございました」

 

席から立ち上がり綺麗なお辞儀をすれば向こうも別に良いが下手なこと記事にするなよ、消されるかもしれねぇからなと告げてから席を立ちカフェを後にする。こうして新人記者の少女の初めてのネタ集めは終わりを告げた……なんてことはなくP基地の執務室、そこに先ほどの新人記者がソファに座って今回の取材をFMG-9とナガン、それとユノに話していた。

 

「って感じですね」

 

「まぁ大体想定通りの評判ですね、あと何時まで変装姿で居るつもりですかG17」

 

「え~、結構似合ってると思いません、副官、指揮官」

 

「似合ってると思うよ、ていうか言われなきゃG17だって分かんないかも……」

 

「む?まぁバレなければ良いのではなかろうか?」

 

新人記者、もといG17は二人の評価にまだまだ腕は落ちてませんからねと自慢気に語るのであった。




何だかんだ言われてるけど結局は防衛の要だしで言われるだけであるし、少しずつだけど認められているような気がするのがP基地だったりするのかなって

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