それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
ジュ~と何かが焼けているいい音が食堂に響く、そして調理場には日本組を除くとあまり見慣れない調理器具を使ってその何かを焼いている一〇〇式の姿。
となれば、その正体が分からずともその作っているものが何処の国の物なのかは理解できた、どうやらまた材料が揃ったのか彼女達の故郷の料理を作っているらしい。
「甘い匂い、スイーツなのかな?何か知ってる、クリミナ」
「いえ、今あたくしも作ってるのを知ったばかりですから、ですが匂いを考えれば甘い物であるのは確かですわね」
そしてさも当たり前のように食堂に現れているのは食ということならば絶対に食い付くユノである。あれからまた大きくなったお腹、PPSh-41の見立てではやはり7月か8月が予定日になるだろうとのことで今では彼女が移動する際には必ずクリミナかG36が側に付いているようにとお達者が来ている。
また同じ席にはユノよりも更に大きくなったお腹のクフェアも居り、となればノアも当然ながら居る、と言うよりもノアがユノと同じ様に食に関することで食い付かないわけがない。
「だと思います、さっきは生地と思われる物を作ってましたから」
「あ~、何だろうな。アタシはまだしもクフェアも食べれるやつなら良いんだが」
しかし、彼女達も一〇〇式達が作っている料理の正体は知らない。日課の散歩をしている最中に匂いにつられて来たというのだけなので当然といえば当然なのだが、またこの場に居る人形達も同じである、彼女達も食堂から漂ってきた甘いいい匂いに釣られてきているだけなので彼女達が作っているものが何なのかは分からないでいた。
そんな食堂の空気を察したのか顔を出してきたのは89式、彼女がざわついてきた食堂の様子を見てみれば予想外の人数に驚いてから調理場に引っ込んで、それから材料の準備をしている式自と63式、それから真剣な眼差しで焼き加減を見ている一〇〇式に
「何だかすごい人数集まってますよ!」
「まぁ、何か作ってると噂になれば集まるでしょうね、それよりもエンゲル係数係は?」
エンゲル係数係、一々誰がとは言わずとも分かるだろう、その言葉に89式が改めて食堂に顔を出してからしっかり確認、それから諦めが振り切れたという清々しいほどの
「……フルメンバーです!」
「やっぱりね、62式、一〇〇式、第一種戦闘配備!!」
「だろうと思ったよ、でも餡は足りないからカスタードとかがメインになるな」
「【天然物】じゃ間に合いません、すみません89式【養殖物】をお願いできますか!?」
「了解です、任せて下さい!」
覚悟を決めるわよ、式自の言葉に全員が頷く、これよりこの調理場は修羅場となる。がそんな決意を食堂で待ってる彼女達、更に言えばユノが知ってるわけもないので今か今かと待っていれば式自が大皿を持って出てきて、皿の上には彼女が見たこと無い、だが匂いからお菓子とかの類だと分かる焼き物が、コレはなんだろうかと聞く前にVectorが唐突に口を開いた。
「あら、【たい焼き】なんて今日は何かめで【たい】日だったかしら?……ふふっ」
「定番のギャグありがとうございます……」
「タイヤキ?これってタイヤキって言うの?」
Vectorの言葉にユノが改めて聞いてみれば式自は彼女のギャグで若干固まった空気をわざとらしい咳払いで戻してから説明を始める。
「Vectorが先程も言いましたがこれは【たい焼き】と言う日本で作られていた和菓子です、見ての通り中に具を入れて焼いた生地を今一〇〇式と89式が使っている焼き型と呼ばれる器具を使いこのような形に焼いたお菓子ですね」
「また珍しいものを作っておるの、それとあのような専用の焼き型なぞ、何処で見つけてきたのじゃ」
「前回の過激派の襲撃の際に撃破した戦車の装甲を使いアーキテクトに作らせました」
戦車の装甲が平和利用された瞬間であった。確かに使い道が無かったと言えまさかそんな形で再利用されているとは思ってなかったらしく質問したナガンはそれがツボったのか笑い出し、一頻り笑ってから
「なるほどの、まぁ良いのじゃ、して指揮官、味は……聞くまでもなかったようじゃな」
「ん~、美味しい~、餡こだけじゃなくてカスタードとかもあるのが面白いね!」
「流石に餡だけで全員を賄えるほどに量は入手は出来ませんでしたからね、一応スリーピースが言うにはこの基地での栽培と、D08にも送ったので向こうでも行われるだろうから成果を楽しみにとのことですよ」
尚、この庵を作る用と栽培用の物を用意するために飛んだお金を聞くと一〇〇式の眼から光と感情が消える、つまりはそういう事である。が今はそんな事を忘れて作ったものを楽しんでくださいと一〇〇式は【一丁焼き】と呼ばれる方の焼き型を使って一つ一つを丁寧に焼き上げている、決して現実逃避ではない。
それは置いておき、急遽始まったタイヤキの実食会とも、パーティーとも言える催し物に基地の面々が集ったり、警備に出ている人形には誰かしらが送り届けたりと賑わうその一角で
「おかわり!」
「私も!」
「あ、こっちもお願いします!」
「すまない、私にも頼めるか」
エンゲル係数達の愉快な食事会が開かれており、大皿に乗せていたはずのたい焼きがたった四人の人形達によって消えていく様は笑いしか出てこないと言う光景である、だが見てるだけならば笑えるで済ませられる、もしこれを作る側となれば、想像すらしたくないだろう。
「ええい、遠慮ってものを知らないのか!?89式、急げ!!」
「これ以上の速度は無理ですよ!?ひゃ、一〇〇式先輩、一丁焼きじゃなくて連式に変えましょう、このままは私が持ちませんよ!?」
「え、うわわ、確かにそうですね!」
彼女達はエンゲル係数組が絶対に来ることは分かっていた、だからこそ別で生地を用意してたし連式もアーキテクトに作ってもらっていた、が彼女達は予想を遥かに上回っていた。
ユノ達に説明を終えて大皿の一枚が空になったので片付けに来た式自がその調理場を見て、次に言った一言は
「……G36とネゲブ呼びましょう」
彼女は入って早々に未来予知を使った、いや、使いまでもなかったのだがともかくこのままでは間に合わなくなると二人を呼ぶことになった、が
「お嬢様の席が空になりました、追加を!」
「シャフトのエンジンが入ったわねあれ、急ぐわよ」
「それにルピナスちゃんもステアーちゃんもアニスちゃん達も甘いものは大好きですからね、沢山食べてますよ」
「微笑んでないで手伝って頂戴、M590」
彼女達の頑張りによりたい焼きパーティーは盛況の内に幕を閉じるのだが、今回の事で一〇〇式達は思った、今度はもうちょっと手軽に大量に作りやすいものにしようと。
「何でアイツラはあんなに食べれるのだ……ングッ」
「餡が口元に付いてるわよキャロル」
「ハグハグハグ」
「ジャウカーン、アンタは落ち着いて食べなさいっての」
「それにしても何故、魚の形に焼こうと思ったのでしょうかね?」
「その辺りはきっと適当な理由でしょ」
因みにキャロル達も勿論ながら居たのだがこちらは平和だった
正直に言えばこの基地で食べ物系のイベントするだけで調理側は修羅場にしかならないという、一部人形もそうだけどユノっちとノアちゃんが食べるからなぁ