それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
スチェッキンは唐突に呟いた、困ったと。別に資金繰りがとか、商売に失敗したとかではない、寧ろ改良レーションもいい感じに開発が進み後はコストとどう売り出すか、グリフィンにはどんな感じに売り込むか、繋がりのある別PMCにそれとなくレシピを流すのも悪くないかもとか考えるくらいには全てにおいて順調である。
では何に困ったのか、それは彼女が行っている【スチェッキンさんの移動式屋台】についてである、では人員の問題かと思えば、確かに最初の頃は自分とトンプソンだけでも余裕で捌けていたが此処最近では人気になったのもあり何処の街に顔を出しても結構なお客の数にそろそろ二人だとキツイかなとなっているのもある、だがこれはダミーを使えば良いだけなのでコレもそこまで深刻な問題ではない
じゃあ何なのかと言うと彼女は思った新しい売り場を作るとなると欲しくなるのは
「マスコット、そろそろ欲しいな」
今まではこういう時のマスコット役と言えばユノだったのだが勿論今の彼女をその理由で連れ出すのは無理である、出産後だって子育てがあるので出来ないだろう、寧ろ是非とも子育てに専念してスクスクと育ってほしいものだと彼女は思っている、だがマスコット役は欲しい、という事で冒頭の彼女の言葉となる。
無難に行くとすれば人形の誰かを、特にG41なんかはマスコット役としては非常に優秀だろう、しかし彼女では気付けば居なくなっていた、と言うレベルの好奇心と落ち着きの無さがあるがために即決というわけには行かない、他の誰かも何かと忙しいということも多い、特に人形達はこの基地じゃ兼業として働いているものが大多数なので屋台にともに出れると言うほどに暇だというものが少なかったりする。
はてさてどうしたものかと悩んでいるとふと閃いた、正確には目の前から来た二人組みを見て閃いた。
「(しかし問題は彼女が暇ではないという部分か、休日なら或いは?)やぁ二人共……何と言うかもうその移動方法がデフォなのかな?」
その二人とはキャロルとFive-seven、最早当たり前のように抱き抱えながら移動しているFive-sevenにスチェッキンは呆れ気味に言えば向こうの反応はそれぞれ違った。
「む?まぁ俺は楽できるからな、こいつが嫌な顔しないし良いだろうと思ってる」
「ふふ、抱き心地いいわよ~、まぁ私だけの特権だけど」
まだ頬ずりとかするとビンタが飛んでくるけどねとニコニコ笑顔で言うFive-sevenに当たり前だろという表情と視線を飛ばすキャロル、そのやり取りにこいつ此処まで駄目な人形だったかなと引き攣った笑みを浮かべそうになるスチェッキンだったが気を取り直してから、二人に本題を切り出す。
「ところでだ、次の休日は暇かな?」
「次の?まぁ多分暇だとは思うけど……何企んでるの?」
「俺はラボに籠もる、用があるのならばオートスコアラー達を頼れ」
言外に暇じゃないとキャロルは告げる、がそこでスチェッキンは即座にアーキテクト達に裏で通信を繋いで彼女が急いで終わらせなければならない仕事はあるのかと確認、無いと言質を取ってから
「そう言わずにさ~、ちょっとその日だけ頼みたいことがあるんだよ、割と大事なことではあるんだ」
「大事なこと?……はぁ、分かったその日だけならば付き合おう、57はどうするんだ?」
「勿論キャロルが行くなら付いてくわよ、で何をするのかしら?」
それは当日の楽しみにとっておいて欲しいなと適当にはぐらかしてからスチェッキンはやったやったと笑顔で次の移動式屋台に出す品物の選定をするために基地の様々な部署へと顔を出して用意を進めていく。
はぐらかされた二人、キャロルはと言うと大事だと言いながらはぐらかすとはどういうことだと疑問に思い、Five-sevenは久しく感じてなかった嫌な予感に勢いで承諾したけど聞き出すべきだったと後悔しつつも少なくとも悪い事ではないだろうと切り替えてFALとのお茶会の場にキャロルを連れて行くのであった、しかし彼女は聞いておくべきだった、そうすれば良かったと次の休日の日に彼女は深く後悔することになる。
否、訂正しよう彼女は現在進行系で後悔していたりする、それはキャロルも同じのようでギロッという視線でスチェッキンを見てから
「おい、これがお前の言う大事なことなのか?」
「勿論、此処での売上が基地での運用資金の一部になってるからね、超大事だよ、なぁトンプソン」
「え、ま、まぁ、ほら、お客はみんな可愛いって言ってるから良いんじゃねぇかなぁって……」
彼女達は今、スチェッキンさんの移動式屋台で言ってしまえば客寄せをしていた、勿論キャロルは外出用の可愛らしい服装で何時もの自身をただの人間として反応させるペンダントを首掛けて立て看板を手に持ち立っている、実際トンプソンの言う通りお手伝いしている可愛らしい少女ということで受けは良かったりする。
そしてFive-sevenはと言うと何時ぞやの謎のフェレットの着ぐるみ姿で風船の束を片手に同じく客寄せをしていた、本人的にはこれを着ることには非常に不満ではあるが来てしまったからには仕事を真っ当する姿はある意味でプロと言えるだろう。
「……と言うかこの着ぐるみは何だ」
「さぁ?何時だったっけ、去年とかに突然この姿に変わってある日脱げるようになったとかだっけか」
「モフッ」
肯定の意味だろうフェレット57が一つ鳴けばブフッとトンプソンが吹き出す、しかし馬鹿にしてはいけないこのフェレット57は子供たちには非常に人気でありキャロルとセットになれば集客率は相当なものになる、なっている。
「まぁいい、偶には外に出ろと妹たちにも言われてはいたからな」
「だろ?それにしてもオートスコアラー達、彼女達がついていくって言わなかったのは予想外だったな」
「あいつらは確かに俺をマスターと慕ってはいるが絶対に側に居ろとはもう命令していない、みんなには自由に過ごしてもらいたいと思っているからな」
その時の顔はその服装では正直似合わないほどに優しい表情をしており、スチェッキンは本当に見た目と中身がいい意味で釣り合ってない娘だなぁと笑いながら
「さぁさぁ、どんどん買ってってくれ、どれもお得で自信ある商品、今日を逃すと次があるかは分からないからね~!」
「何を言っている、どれも量産体制は整っているではないか」
「あ、いや、今のは謳い文句みたいなもんで……」
ちょっとだけ、彼女を連れてきたのは失敗だったかな、そんな事を思ってしまうのであった。
折角、57ネキには着ぐるみあるんだし使わないとなぁ?と言うお話である。
因みにこんな感じにスチェッキンさんは色んな所に移動式屋台を出店してるらしいっすよ?