それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
作戦が完了し、キャロル達も無事に現実に帰還した整備室なのだがその空気は作戦の成功を祝うという感じではなかった。
かと言って何か問題が出てそれで深刻な空気になっているというわけでもない。
「えっと、その、ごめんなさい?」
「何故疑問符なのだ貴様、と言うか私はあの時、この指揮官に負けたというのか?」
はぁとユノの疑問符付きの謝罪にため息を吐くウロボロス、その彼女はと言うと今現実に居ない、ユノが謝罪した先にあるのは一つのモニター、そうウロボロスは未だ電脳内にいるのだ。
勿論だが今も眠っているVectorの電脳ではない、ここは彼女のためにとアーキテクトが急遽用意した電脳空間、そこでソファに腰を掛けてユノに対してマジカよという感じの表情を晒している、彼女としてはあの日の戦いで自分があそこまで良いようにされた指揮官がこんな子供だとは思わなかったらしい。
はっきり言ってしまえば彼女の素体は用意されていなかった、そもそもにして何故ウロボロスが復活したのかすら知らないのだから当然といえば当然であり、ナガンが代表して聞いてみれば
「ウィンチェスターと言ったか、あいつの素体に私のが使われているのは知ってるか?」
「まぁ、話だけは聞いておる、だがあくまでボディだけではなかったのか」
「あぁ、だが私自身、ようはAIの部分か、それも回収されていてな。今の今までこいつの中に居たというわけだ」
続けて言うのならばウィンチェスターが電脳に繋がりさえすれば直ぐにでも出てきてやろうかとも考えていたらしいが今日まで彼女が電脳に行くこともなく、かれこれ二年近くを暇に過ごしていたらしい。
こんな事ならばペルシカとか言う博士に回収された時点で協力するとでも言って自由を得れば良かったとどこから取り出したのかマグカップに入ったコーヒーを呑むウロボロス。
「ん、じゃあ今まで何してたんですか?」
「ネットワークを漂い人間どもが生み出したサブカルチャーなるものを漁っていた、中々に良い暇つぶしだったぞ」
いやはや、ああいった遊び心は大事だな。と答えてからあれが良かっただの、コレを再現できないかとかをべらべらと喋りだす、どうやら一人で暇潰しは出来たとは言え会話には飢えていたらしい。
ともかく、彼女がどうしてあの場に居たのかは大体把握できたが次に思うのは今後の事、さっきの戦闘では確かに協力してくれたし、今から敵対するとは考えられないのだがとは考えているがユノはまだしもナガン達は分かりましたと頷くほどに甘くはなく、思いっ切りリラックスしているウロボロスに、ナガンがこの後はどうするのかと聞いてみれば
「ふむ、先程も言ったが私はあくまで協力者という立ち位置で収まるつもりだ。人類云々は正直に言えばどうでもよいと思っている」
「協力者というのならば何をするつもりじゃ」
「AI技術の協力やシミュレーター系列の強化、他にも電脳の守備も承ってやろうか?」
鉄血のAIとなればアーキテクトは居るのだが彼女はそこまで得意とも言えない、なのでそこの技術となるとD08との協力が必要不可欠になっているのがこの基地の現状である、なのでウロボロスの提案は確かに助かるといえば助かる。
のだが勿論、ウロボロスが無償でそれらを行う筈がなく、但しと彼女は話を続ける。
「こちらから交換条件として現実で自由に動ける素体を貰いたい、いや、安心しろ、何か怪しいことをするわけではない、ただ暇つぶしできるとは言えやはり電脳だけというのは窮屈でな」
「素体か……そればかりはペルシカに相談せねばならぬから、この基地の一存では出来ぬ」
そもそもにして丸々とハイエンドモデルの素体がこの基地で作りましたとなると本社からの反発が少なからず出てくる可能性が否定はできない、なのでよしんば作れたとしても弱体化しているのものである可能性が高い。
という事も伝えるとあからさまに嫌な顔をしてから少し考えて
「まぁ、他の者と会話などを楽しめれば文句はない、まぁ文句は言えない立場だがな」
「じゃあ今日か明日には確認するね、で許可が降りたらアーちゃん頼める?」
「任せなさーい!要は怒られないくらいに弱体化したボディを用意すれば良いんでしょ?」
ならば考えはもうあるのだとアーキテクトは設計図を書くために整備室を出ていった。それを確認してから未だ眠っているVectorの側にユノが近づき、不安そうに手を握る、彼女はこの基地の中では古参の一人、何かとサポートしてくれた彼女がこうして眠っているというのは始めてのことなのでやはり不安なのだ。
「Vector、大丈夫なんだよね?」
「異常は見られないのでご安心を、余程負荷が強かったので再起動に時間がかかっているのかと思われます」
結局一時間程待ったが、彼女が目覚めることはなく、ユノ達は一度解散となったのだがウィンチェスターだけは様子を見ていると残り全員が出ていったタイミングで
「起きてるんでしょ、先輩」
「……バレてたの」
「ま、妙に分かりやすくなった思考のお陰よ」
そう、Vectorは全員が電脳から帰還したタイミングで起きてはいた、がわざと寝ていたのだ。別に起きても良かったのだが起きなかったのは一つに戸惑い、二つに不甲斐なさからの不貞寝である。
まさか自分を乗り込ませることが罠だったとは考えていなかった、本来であれば警戒するべきことだと言うのに電脳から好き勝手されてたことに腹を立て、動いてみればこのザマというのは裏で動いてた彼女としては
「情けなさすぎるわよコレ」
「貴女って妙に感情的な部分多いわよね、それもあれ、コアが特殊だからとかそういうの?」
「さてね、でも普通のVectorとは違うというのは思ってるわ……それにしても、本当に何も『読み取れ』なくなったのね」
FMG-9はこう説明していた、彼女をエルダーブレインからの介入から救うのに特殊なネットワークから切断したと、その代償というべきか今の彼女は今までのように全ての人形の思考を読み取るということが出来なくなっていた。
今日まで聴こえ続けていた街中の雑踏のように入り乱れていた思考が一切合切無くなっている、その感覚に慣れなかったからというのもあの時起きなかった理由にある。
「とりあえず今日は寝てるわ……じゃあおやすみ」
「はいはい」
という事で翌日、目が覚めたとVector本人から通信が入り整備室に集まって貰ってから自身の今の状態を説明してから最後にユノ達に深々と頭を下げて
「今後、こういう事がないようにするわ、本当に申し訳なかったわね」
「大丈夫だよ、それにエリザちゃんとも話せたからまぁ悪い結果じゃないと思うし」
にへらと緩い笑顔を浮かべそう告げたユノに、Vectorは普通ならそんな顔しないと思うのだけどと思いながら微笑みを返すのであった……その外で妙に幼いウロボロスの声と追いかけられているのだろうかアーキテクトの声がした気がするが。ともかく今回の事件は幕を閉じるのであった。
はい(はい)という訳で今後はVector姉貴は例の特殊能力は使えなくなりました、まぁ元々そこまで描写してなかったし問題ねぇな!
明日の話は最後の一文が答えじゃないかなって
あ、ラクーンシティは今日終わらせました、楽しかったですまる