それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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腕に自信があるものがお金欲しさに侵入することが稀にあるらしい


深夜のP基地

深夜、基地の屋上よりも更に高所の通信塔の上に一つの影が降り立つ、その影が装備していたゴーグルを起動させると彼女に視界には基地のそこら中から赤外線センサーや電磁波、更にはどこを誰が通ったかという痕跡までも詳細に表示させている。

 

それらを見つめてから、影が基地の内壁に目を向け、流れてきた情報を見た時、その影の空気が冷たいものに変化、耳元の通信機のスイッチを指で起動させてから

 

「来てる」

 

《へぇ、この基地って名ばかりの要塞に侵入してくるやつって居るんだ、顔を拝みたいものね》

 

影、【ルピナス】が淡々とした声で報告を上げれば通信相手【トゥーマーン】がケタケタと笑いながら答える。ココ最近ではヴァルター家の長女として賑やかに、そして子供らしく生き生きと過ごしていたので忘れられてそうだがP基地の『P7』ルピナスは通常の個体とはかけ離れている存在である。

 

人格を司るデータ等を全て失っていたのを指揮官からの愛情だけで埋め、ユノを大事に思う気持ちは下手をすればG3のそれと性質が近いのではないかと言うほどを持ち合わせている彼女。故にユノを悲しませる存在にはいっそ冷酷なまでに残酷になれる、それの一つとしてあげられるのはこの基地に仕掛られた罠。

 

少し前のでも侵入した者は等しく平等に生きて帰さない、何が何でも殺す、ユノの目には触れさせないというレベルのものだったそれ、しかし過去には隣のB基地の【死神】と呼ばれていた老人に突破されてからは更に改装を加えて、それでもトゥーマーンにも突破されて、だが彼女が復帰してからアドバイスを元に更に改良、結果として

 

《ま、この様子じゃ直ぐにでも仏になるでしょ》

 

「二人」

 

《は?あ~、なるほどね、一人を壁にしたってわけか》

 

確かにその方法ならば過剰とも言える罠を超えられるだろう、しかし発動してる時点で侵入はバレているというのにここからどうするつもりなんだかとトゥーマーンが述べているがルピナスの耳には半分も流れていかない。

 

それよりも早く死体を確認するのともう一人を始末しなくちゃとゴーグル越しで痕跡を辿っていく、動きからしてユノを狙っているわけではない。裏側の外壁から続く痕跡は指揮官の自室がある建物ではなく、ラボの方面に向かっている。

 

《ってことは狙いは技術方面ね、あと一人は見つけたわ……あ~あ、可愛い子だったのでしょうにサイコロステーキになってちゃ分からねぇわ》

 

「人形?」

 

《いんや、生身……ってことは侵入したのは人形ね》

 

人間よりも人形を優先とする、どうやら送ってきた相手はそれなりに考えているらしい、確かに人形ならば資料を見ただけでもデータを送ることは出来ただろう……この基地がそれを考えていないわけはないというのに。

 

即座に基地の内部に設置された監視カメラとセンサー類全てを確認、そこから更に痕跡を辿り、下手人を見つけた。見つけたのだがそこはダミーラボと呼ばれるルピナスとトゥーマーンが発案した侵入者用の袋小路部屋、しかも運が悪いのか良いのか、どうやら基地を練り歩いていた(迷 子)ウロボロスと出会ってしまったようで、侵入者を前にウロボロスは仁王立ちして余裕そうな空気を醸し出しているが

 

《いや、今危ないのアイツじゃない》

 

「直ぐに始末に向かう」

 

それだけを告げて向こうからの返事は聞かずに彼女はそこから飛び降りた、一方その頃、侵入者である人形とばったり出会ってしまったウロボロスははてさてどうしようかと思考を回していた。

 

どうせ暇だしと出歩いてみればこれである、そして悲しいことにこの素体では戦闘は全くできない、幸いにして向こうは自分がハイエンドモデルだということを知っているのか、それとも該当データにない人形だから警戒しているのか攻撃を今すぐにしてくる様子がない。

 

「何の目的でこの基地に来たのかはまぁ分からんでもないが、悪いことは言わないからさっさと帰れ、なぁに雇い主まですっぱ抜かれて貴様のクビが飛ぶだけだからな」

 

「……」

 

「無口だな、本来の【P90】は割と騒がしいという人形のはずだとデータにはあるが」

 

スッと目を鋭くしとある一点を見つめればウロボロスはなるほどなと納得する、侵入者であるP90の首元に妙な機械が取り付けられているのだ。

 

となれば必然的にそれが妙に無口な理由だろう、だがもし彼女の考え通りに洗脳などの類であればこうして警戒するということはありえない、そもそもにしてデータを誤魔化しているとかではないので向こうからは自分が弱いことはすぐにでも分かるはずなのだがと首を傾げる。

 

それに今の自分は割と隙だらけ、だと言うのにそれでも動こうという空気も感じられない、はてさてどういう事だろうかと言う所でガコンと天井のタイルが外れ降りてきたのはルピナス、彼女はついさっき此処に到着してすぐにでも殺そうと考えたのだが、来てみて様子を見れば何だか妙な感じがしたので普通に降りてきたらしい。

 

「……何が起きてるの?」

 

「さてな、お前が今こうして降りてきても反応がない、とするならば機能が落ちてるのか?いや、だが先程までは動いてたぞ」

 

「機能が停止、でも動いてた」

 

うーんと考えてからもう一度基地の罠の起動状況などを確認、そこでこのダミーラボに新たに配備した罠の存在を思い出す。この基地の人形には悪影響を出さずに外壁などのところから来た明確に侵入者と分かる存在に対して発動するドールジャマー、確かそれの試作品が出来たとかでアーキテクトが配備してたようなと。

 

「ドールジャマー?しかしこんなにはっきりと動きが止まるのか?」

 

「そんな事ない、あれは稼働率を物凄く下げるだけだから……」

 

とりあえず警戒しながら手を降ってみれば反応無し、となれば今目の前にいるこの人形は機能を完全に停止しているということになる。どうしよう、ルピナスの思考はそれに染まる、これがもし動いてましたとか敵対してましたとかなら容赦なく首を跳ねていたかもしれない、でも無抵抗な人形となると話が変わる。

 

「ふむ、ならば一度キャロル殿と副官殿に通信を入れてから決めるのが良いだろう」

 

「うん、そうする」

 

という事で二人に通信を入れ、警備部隊も到着してからキャロルがラボにて検査してみると、ウロボロスが始めに見つけた首の機械はどうやら洗脳などとかではなく、これによって制御されていたようで人形としての意識は既にない状態だったらしい。

 

では完璧に死んでるのかと言えばそうではなく

 

「簡単に言ってしまえば無理やり寝かせられた状態で第三者がこいつを操っていた、しかしドールジャマーの効力と元々張られていた通信妨害用のジャマーのお陰で制御そのものが切れたんだろうな」

 

「ふむ、ではこいつ自身の意思で来たというわけではないという可能性が高いということか」

 

「恐らくは、ともかく起こしてみないと何とも言えんな、今やるか?」

 

頼むとナガンが答えればキャロルが機械を操作、それから程なくしてP90の意識が回復して頭が痛むのか起き上がってみれば迎えたのは銃口の数々

 

「へ?」

 

「所属、指揮官、目的、そしてお主の意思、全てを吐いてもらおうか」

 

「え、何の、話?」

 

後に判明したことは彼女は基地の所属ではなく、先に発見されたサイコロステーキにされた女性によって野良人形だった彼女は操られていたようで彼女が死に、更に二種のジャマーの結果、あの場所で機能停止していただけだったとのこと。

 

なので翌日にはユノに話が通されてグリフィンとの協議の結果、やはりと言うべきかP90はこの基地の所属となることになる、が彼女の趣味は変装なのだがやるたびにユノに見破られては悔しがる彼女が居たとか居なかったとか。

 

これまた余談なのだがクリミナ相手にしかもユノの変装をした時の事を後にP90は語った。

 

「やばいレベルで命の危機を感じた、バックアップから復活しても殺すという意思すら感じた」




久し振りに黒アサシン状態のルピナスちゃん書いたな……

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