それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
タンッ!タンッ!タンッ!と小気味よい射撃音が響く、ここは射撃訓練所。と言っても殆どの戦術人形は訓練で使うというよりは自身の調子を確認するために使うのが殆なのだが
その射撃訓練所で現在ターゲットに射撃をしているのは【M9】更に数発打ち込んでからモニターでターゲットを見ればどれも納得の行く着弾点で満足気な笑みを浮かべ
「ふふ~ん、今日も絶好調なのぉ!」
どうやら本日も調子はすこぶる良いようでテンションが上っていく彼女、だが誰かが射撃訓練所に入ってくる気配を感じ他の人形が来るなんて珍しいの!と振り向けば
「……指揮官?此処に来るなんて珍しいなの」
「や、やぁ、良かったM9で」
「私で良かった?もしかして会いに来てくれたなのぉ!?」
「ああ、まぁ、その……ちょっと相談があるんだ」
遠慮気味にだったが最後は真剣な顔でM9に告げれば彼女はこれは何かただ事では無いのでは?と考えて指揮官に向き合う
「私に、銃の撃ち方を教えてくれないかな?」
滅多に此処に来ない指揮官が来たという事はもしかしたらそんな相談かもしれないとは考えていたが実際に言われると衝撃が来る
彼女は自分からそういった荒事に首を突っ込む少女ではない、なのに今真剣に撃ち方を教えてくれと言ってくるのは余程の何かがあったのか、それともふと思い付いてしまったのかと考え
「どうしてか教えてほしいの、それに私としては指揮官には銃を握ってほしくないの」
「うん、みんなそう言うと思ってる、でもね、万が一が遭った時に撃てないじゃ駄目だと思って」
万が一、そういった事態にならないためにも戦術人形の彼女達が常に気を張っているがそれでも綻びは出てくる、それを理解しているM9だがだからと言って彼女の相談を簡単には認めるわけには行かず
「そうならないようにするのが私達の仕事なの……それに副官達も許さないと思うなの」
「勿論、皆を信頼してるよ、でも絶対は世の中にはないからさ。それに実はカリンちゃんには相談したんだ、凄い顔されたけど。それで一度握ってみればってその時どう思ったかでもう少し考えてみてって言われてさ」
当たり前なのとは言わなかったのは彼女の優しさか、それとも当たり前過ぎて呆れたのか、しかしこのやり取りで思ったより指揮官の決意が固いのが分かり更にカリーナもそう言ったと聞いてM9は悩んでしまう
なのでとりあえずカリーナの言う通り一度試射してもらってから考えようと結論を出し
「分かったの、そこまで言うのなら私がしっかり教えてあげるから一度だけ撃ってみるといいなの」
「本当!?うん、よろしくねM9ちゃん!」
嬉しそうな指揮官にこれ本当に教えて大丈夫だろうかという不安が募るがとりあえず一体のダミーから銃を貰いそれを指揮官に渡す
渡された指揮官はズシリと言う意外に感じた重みに驚く、あまりに皆が軽々と扱うのでそこまで重くないのかと思ってたらしい
「重い……これが銃なんだ」
「私のはまぁ確かにちょっと重いかもだけどそれでも軽いほうなの」
とにかく構え方からレクチャーするのぉ!とそこから時間を掛けしっかりと銃の構え方をレクチャーしていき数十分後、そこにはゴーグルを掛けてイヤーマフを着けた指揮官が的に向けて銃を構えてる姿があった
「よし、じゃあ教えた通りに撃ってみるなの!」
「……うん」
スゥッと息を吸って集中、そして銃爪を引く本当にその瞬間、指揮官は強烈な違和感に襲われる。視界が必要以上に鮮明になり感覚も鋭くなり、更に勝手にこれでは当たらないと頭が判断、身体が動き出し微調整され発砲、しかもド素人のはずの指揮官が反動の衝撃を綺麗に受け流し、放たれた弾丸は吸い寄せられるように円形のターゲットのど真ん中に穴を開けた
「嘘、ど真ん中なの……」
それをモニターで見たM9は意外すぎる結果に驚きの声と顔を隠せずにいるとゴトリと言う音が聞こえそっちを見れば顔を真っ青にしてしゃがみ込む指揮官の姿
何事かと直ぐに駆け寄り指揮官の容態を確認する為に声を掛ける
「指揮官、大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫……じゃないかも、ウップ」
「ふえええ!?ま、待つの!もう少し耐えて欲しいなの!?」
今にも吐きそうな指揮官に慌てふためくM9、兎に角と用具入れのロッカーに入ってたバケツを急いで持ってきて指揮官に渡せば背中を向け、年頃の少女が出しちゃいけない声と音を射撃訓練所に響かす
M9はそれを聞かぬふりで背中をゆっくりと擦り指揮官が落ち着くのを待つ、と同時に何が起きたかを冷静に考えてみるが
(さっぱり皆目検討もつかないの、あとで副官には報告を上げておくけど指揮官に銃は撃たしちゃいけない気がするの)
「うぅ……口の中が酸っぱい……」
「落ち着いたようで良かったなの、でも何があったか教えてなの」
「分かんない、撃つって思った時に凄い違和感に襲われて、なんだろ身体が確実に真ん中に命中するように動かされたって感じかな……それでこうなった」
「それ確実に危ないと思うなの、原因がハッキリ分かるまでは銃を握るのは止めたほうが良いの」
うん、そうしておくとまだ少々辛そうな顔で答える指揮官、流石に撃つ度に吐いてはいられないので当然といえば当然なのだが
後に報告を受けたM1895はペルシカにも伝え、そこで彼女はこう答えた
「もしかしたら『目』が悪さしてるのかもね」
「目、じゃと?あの鉄血の話か」
「そう、あれ自体は人形用、だから本来であれば生身の人間用に調整ないしオミットするはずの射撃時のアシスト機能が残ったままになってて」
「人形用のアシスト機能が故に、人間である指揮官は射撃時に凄い違和感、という事か……分かった指揮官には今後も撃たせないように話しておこう」
「頼むよ、調整してあげれればいいけど資料も専用の施設もあの事件で消えちゃったからね、それに彼女には目のこと話してもないからね……」
その後、指揮官が銃を握る機会はほぼ無くなった、もし握るとすればそこまで切羽詰った状況になるだろう、最も彼女達がその状況になるのを許すかは別の問題なのだが
指揮官は ゲロインの 属性を 手に入れたぞ(クーリングオフ不可
『目』が指揮する際のレーダー意外はデメリットしか無いなこれ(今更)まぁでも指揮官のとってはナガンおばあちゃんとかに会えたから一重にデメリットでもないんだけど
リアル司令部 春田さん専用の徹甲弾を入手したぞ!