それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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無慈悲な現実


ディープダイブ Session2

彼女達が入った部屋、そここそが自分達があの日の任務で来たという研究室であり、M4はその部屋を見てただ一言呟いた。

 

「……嘘で、あって欲しかった」

 

「だけどこれが現実よ、調査を開始しましょう、こちらAR-15、目的地に到着したわ、今から調査を始める」

 

《こちらナデシコ、今おまえ達が居る所がそうなんだな?》

 

《駄目だ、こっちからじゃ反応すら拾えない、かなり強めのジャマーが働いてるのかも》

 

通信に作用しないのはここから他への連絡を維持するためかなとオモイカネの報告を聞きつつ、各自は警戒しながら部屋の探索を始める。

 

M4も気を取り直して行動を開始、あの時見たものを頼りにその部分を探ってみるがやはりと言うべきか衛星兵器の資料などは勿論ながら、クローンについても存在せず、ただ例の培養槽だけは残っており、それはつまりここで行われていた事を静かに物語っていた。

 

彼女はそのうちの一つをゆっくりと覗き込むが中には誰も入ってはおらず、調査のためと近くの端末を操作して蓋を開けてみたM4はふと何かに気付いてしゃがみ込んで培養槽の底を指で拭えば、粘液質な液体が指に着いた

 

(液体が乾いていない?つまり、つい最近まで此処に入ってた?)

 

「どうしたM4って、これがお前が言ってたやつか……ん、なぁおい、水分が付着してんぞ」

 

《何だと?全員、そこの培養槽全てを調査しろ、それとM16、その水分を採取してくれ、こっちで成分を調べてみたい》

 

「了解、まさか最近まで稼働してたのか?」

 

M16がそう言うが、それにしては綺麗に何も無さすぎると考えるM4、推測するとすれば稼働してたのは数ヶ月前くらいまでかもしれない、という所で別の部屋で捜索していたRO635からまだ生きているPCBを発見したという報告が上がり、向かえば中身の復元作業を行っている彼女が現段階で判明したことを話していく。

 

曰く、ここは数ヶ月前までは稼働していたということ、実験の内容は言わずもがな、なのだがそこに追加するとすれば

 

「スペクター、つまりノアちゃんの量産計画も行われていたようです。正確には量産型ルーラー計画が成功したから、らしいのですが」

 

「確かAK-12がそうだって話だよな」

 

「人形で適合が成功したのになんでまたクローンを?RO、そこらへんは?」

 

「すみません、やっては見ますが出るかどうかは……」

 

「ねぇねぇ、それよりも首謀者とかわかんないの?」

 

SOPから出てきた言葉にあぁと全員が声を合わせて答える、寧ろそれが一番大事だったと、なのでRO635が改めて復元を試みてみれば、出てきた、初老辺りといった年齢の男性、名前は

 

「【ヨゼフ・アルブレヒト】、名前だけですね、それ以上は復元できませんでした」

 

「いいえ、名前だけでも収穫です。こちらM4、一部ですがデータの復元に成功、これより無線で」

 

《いや、無線で転送するな、万が一があるからな。復元できたデータ全てをメモリーに移して持ち帰ってきてくれ》

 

万が一、それは確かにそうだと頷いてからメモリーにデータの吸い出しを始める、その間もアナログな資料などは存在しないかなどを引き続き調べていくが、著しい成果が上がることはなかった。

 

しかしだと、捜索の途中M4は考える。妙に情報が残っているなと、始まりは此処を見つける時に使った司令部、確かにこの隠し倉庫や研究室は難しくても存在するというデータは消せたはず、此処だけとっても不自然な部分があり、先程のPCデータだってそうだ、此処で行われていた細かな実験などは綺麗に、しかも復元すら不可能なレベルに消去されているというのに大雑把なことは残してあり、しかも首謀者の名前が残っていた、記録を見れば集団のはずなのに他の者達の名前は一切なしだと言うのに。

 

此処まで綺麗に証拠などを消せるような者たちが復元できるような物を残すだろうかと。その不自然なまで残し方、しかし自分達はそれに喰らいつかないといけない、そのジレンマに思わずため息が漏れてしまう、まるでこうなるように誘導されているみたいだと。

 

「データの吸い出しが完了しました、M4?」

 

「っ、あぁ、すみません少し考え事をしてました。もう一度全部屋を調査、それから帰還しましょう、どうでしょうかナデシコ?」

 

《それで構わん、欠片も見落としてくれるなよ?》

 

「勿論です、聞きましたね。再度徹底的に調査します」

 

それが終わったのが数十分後、やはりと言うべきか、PCデータ以上の情報は出てこず、寧ろ結果としてM4が思った疑惑が更に強いものになる、やはり何かおかしいと、とりあえず戻ったら情報部とキャロル達には相談しておこうと考えながら行きと同じく陣形を組んで階段を上がり、倉庫から出たタイミングでナデシコに通信を繋げる。

 

「ではこれよりランディングゾーンまで向かいます、AR小隊これより行動を《待て、アンノウン反応が接近!》っ!?」

 

「アンノウン!?ナデシコから見てもそうだってこと?」

 

《でなければアンノウンだと言わん、何だこの速度、まるで飛行ユニット……ちっ、AR小隊戦闘態勢を取れ、この速度は逃げ切れん!》

 

《反応は5つ、接敵まであと、30、いや、20秒!》

 

ナデシコから矢継ぎ早に飛んでくる報告を聞きつつAR小隊が戦闘態勢に入る、と同時にこの小隊で一番目が良いAR-15がその姿を捉え、言葉を失う。

 

そしてその姿はっきりと見えた時、AR小隊全員がその姿に、何よりも装備されている物を見て、SOPが全員の気持ちを代表するように告げる。

 

「あれってさ、色が違うけど、どう見てもノアの飛行ユニット、だよね?」

 

「……ナデシコ、何か分かることはないかしら?」

 

《こちらからは依然としてアンノウン反応だ、だがおまえ達の反応から察するに、そういうことなんだろ》

 

《ざっけんなよ、量産だけじゃ飽き足らないってのか!!!》

 

オモイカネの憤怒に似た叫びが通信機から聞こえ、AR小隊全員が【アンノウン】に銃を向ける。少なくとも友好的な存在ではないのは確かだろう、その証拠に彼女達はガトリングを3つ合わせたようなそれを向けてきている。

 

今この場にユノが居ないのは幸か不幸か、いや、遠からず彼女も知ることになる、妹たちとも言えるクローンが牙を向けてきたということを

 

「対象確認、消去します」

 

「私の後ろに!!!」

 

感情も何も乗っていない、機械的な声、それを聞いたM4は先頭は回避できないと判断、即座に義手を構え前方に広域な壁の形でディストーションフィールドを展開すると同時に5人からの弾幕の嵐がAR小隊を襲った。




目標 敵小隊の撃滅

イメージ的には【とある】のシスターズだし、でも敵対するのはアストラルチェインの終盤だったり。

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