それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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敵の目標は?


ディープダイブ Session3

「凄い……」

 

展開したディストーションフィールドとアンノウン達のガトリングによる弾丸の嵐が衝突、だが一発たりともフィールドを貫くことはなく、何より驚いたのは全く掛からない負担だった。

 

MP5を始めとするフォースシールド持ちは少なからず展開中は負担が掛かっていき、最長でも三秒までしか展開できない代物、しかしこの義手に組み込まれたディストーションフィールドはと言うとこのままでも数十秒、いや、数分だって維持できるくらいの負担に驚いて思わず出たのが上記の言葉である。

 

しかし、防いでるだけでは状況は変わらない、向こうだって効果が認められなければすぐに手段を変えてくるだろう、なので

 

「姉さん!!!」

 

「くっそ、初めての感覚で違和感つえぇな……ロック、ファイア!!」

 

コンテナを担いだM16が叫ぶと同時に両サイドが展開、そこから小型マルチプルミサイルがアンノウンに向けて飛んでいく、無論向こうもそれを迎撃するのだがあれは攻撃のためではなく、体制を立て直すために放った物であり、迎撃されたそれは大袈裟なほどの爆発と爆煙を撒き散らし更には

 

「反応ロスト、チャフと断定、爆風にて解除を試みます」

 

一人が爆煙を晴らせば、AR小隊は誰も居なくなっている。その彼女達はと言うとRO635がジャミング装置を起動しつつ倉庫近くの森林に身を潜めながら空中に留まっているアンノウン達を監視しつつ、ナデシコへと通信を繋げてみれば向こうから来た第一声は

 

《単刀直入に聞くぞ、話は出来そうだったか?》

 

「それは……」

 

言い淀んでしまう、M4としてはユノのように出来ると言いたかった、しかしその判断はAR小隊の隊長として出来ない、一瞬とは言え見てしまったあの表情、瞳を見て全てを悟ってしまった、もう感情は欠片もないということを。

 

だけどそれを言葉にしてしまえば、そんな彼女の迷いを感じ取ったのかM16が答えた。

 

「無理だな、あれは、アイツラの目はもう……その領域を超えちまってる、お前やノアの時みたいに対話ができるとかそんなんじゃねぇ、完璧に道具としての存在になってる」

 

《……そうか》

 

もしかしたら心の何処かで希望を持ってたのかもしれなかった、だからその報告を聞いたキャロルから出た声は悲痛な想いを秘められているものに感じられた、しかし彼女はすぐに割り切り

 

《AR小隊からナデシコへ、アンノウン小隊を撃破せよ》

 

《キャロル……指揮官にはアタシが伝えておくから》

 

「良いのね」

 

無慈悲に、だがどこか彼女達に、知らずに作られ、こうして敵対してしまった彼女達に謝るような声で指示を下したキャロルにAR-15が優しく確認をする、コレで指示が変わるとは思わないが、それでも聞いておかなくてはいけないと思ったようだ。

 

《あぁ、M16がそういうのならば俺でも、ユノでももう無理なんだろう、ならば終わらせてやるしかない》

 

「こちらRO635、もうじきにジャミングが効力を失います、行きましょう」

 

「よし、まっかせてよ!この私が、私が……」

 

ポロッとSOPの目から涙が溢れる、敵である彼女達をこれから倒す、今まで鉄血相手にやってたことと同じように倒す、と考えてもユノとノアと同じ顔である彼女達に銃を向ける事がSOPには辛い話であり、それでも彼女は頭を振るって涙を拭いてから自身の新たな義手の拳を握りしめて

 

「大丈夫!」

 

「貴女はやっぱり強い子ですね。ふぅ、AR小隊……これよりアンノウンとの戦闘を開始します!」

 

「ってことで挨拶は任せろっての!!」

 

コンテナを担ぎ上げたM16が、今度は慣れた感じに照準を合わせ、小型マルチプルミサイルを発射、向こうは当然ながらそれに反応して迎撃と回避をし、彼女達を見るや今度は無言でお返しだとばかりにガトリングを掃射を始める。

 

ガトリングが3つくっつけたようなその銃から解き放たれる弾丸の嵐は遮蔽物にしようとした木々を紙のように食い破り続々となぎ倒していく中をAR小隊はM4のディストーションフィールドを壁にしながら動き回り、フィールドの内側から反撃を行う、のだが

 

「っても当たらないな!」

 

「機動力は圧倒的に向こうが上なのだから当然といえば当然だけど、あの機動力で射撃精度も高いとか、ノアを本気で相手にするとこうなるのね」

 

「ダララララララ!!!」

 

「SOP、無駄弾はあまり撃たないでくださいよ!?」

 

此処までの銃撃戦で分かるのは向こうは戦闘経験があまり無いのではということ、恐らくは決められた戦闘方法でしか戦えないからなのか、ノアだったらフィールドで防がれると分かれば即座にクロスレンジでの戦いに持ち込んでくるのだが彼女達は射撃に拘り、フィールドに向けて撃ち続けるだけ、そこから更に分かるのは

 

(思考すら制限されている?いえ、回避と会話はしているので完璧に制限はされてないとは思いますがだとしても)

 

それでは戦力としては人形よりも劣るのでは、思わず思考の海に入りそうだったのを何とか押し留めて、弾幕を防いでいき、今はその弱点を何とかつけないかと思考を巡らす。

 

しかし、彼女達の動きも決して無駄というわけではない、このまま射撃に専念していたとしても向こうは弾数はほぼ無限、に対してこちらは有限、どっちが先に力尽きるかなんて言うまでもないのだから、しかしそんな機械的な判断しか出来ないのならば、M4の電脳に閃きが走る、前の自分達だったら無理でも今の自分達ならば出来る手段が生まれ、フィールドを維持しつつ小隊全員にそれを提案すれば

 

「可愛そうとか言ってられないか、いいわ、任せなさい」

 

AR-15は自身の二丁の銃を構え、悲しい瞳をしながら呟き

 

「終わらせてやろうぜ、いや、この場合は眠らせてが正しいか」

 

M16は彼女達を生み出し、あまつさえ戦場に駆り出すような真似をした奴らに怒りを覚えながら、彼女達を見据えつつ答え

 

「そうだね、お休みの時間だって言ってあげよう」

 

SOPはいつもの笑顔を浮かべながら、優しい物が含まれた声で彼女達に伝えるように告げて

 

「M4、何時でも大丈夫ですよ……もう、こんな事しなくて良いんだって、教えてあげましょう」

 

RO635は自身の切り札、オルギアの起動準備をしつつ、覚悟を決めたという眼でM4を見つめる。

 

全員が思ってることは唯一つ、未だ生み出しているであろう者たちを見つけ出し、終わらせること。だけど今はその段階ではない、まずは目の前の彼女たちを眠らせてあげよう、その決意でM4は叫んだ。

 

「SOP!!!!」

 

「鉄拳制裁、アンカークロー!!!」

 

フィールドの内側から真っ直ぐに飛んできた紅い拳を、アンノウン小隊の一人が迎撃しようと動いたと同時にRO635がフィールドから駆け出す、がよく見れば彼女の身体からは蒸気が発生しており、耳の機械が音を立ててフル稼働しているのが確認できる。

 

これが彼女の切り札【オルギアモード】これによりさっきまでとは打って変わった機動力にアンノウン達は即座に対処ができずに偏差射撃が遅れ、向こうからの射撃は命中、致命打にもならないが怯みはすればアンカークローが直撃し吹き飛ぶ、突然事態が動いたことによって更に反応が遅れ、結果として真下にまで接近していたAR-15に気づかず、彼女が構えた二丁のアサルトライフルから放たれた徹甲榴弾を回避することは出来ずに

 

「安らかに、眠りなさい」

 

此処で漸く事態を把握できた残りの三人が動きを見せようとするが遅い、そこには義手を接続したコンテナを構えて既にチャージを終えたM4とM16の姿

 

「わりぃな、コレくらいしか一瞬で眠らせる方法が浮かばなかった、だから動くなよ、外れたら痛いからな!」

 

「私もですよ、グラビティブラスト、発射!」

 

これで終わりだとばかりに三人を襲ったのは赤と目視できない重力波の暴力、だが次に驚愕するのはM4とM16だった、あのタイミングであれば回避できないと思っていたそれをたった一人は無傷でやり過ごしたのだ

 

「嘘だろオイ、あれ回避したのか!?」

 

「違う、私のディストーションフィールドを、再現して防御した?」

 

「作戦目標の達成を確認、副目標の達成は困難……了承、撤退します」

 

「逃がすかァァァァァ!!!」

 

驚愕する二人を尻目に彼女がその場から撤退しようとするのを防ごうとSOPが改めてアンカークローを飛ばすが当たる直前にフィールドを展開し弾いて撤退を開始。

 

「ナデシコ、直ぐに追って下さい!!!」

 

《やって、ロストだと!?》

 

《そんな、さっきまでは追えてたじゃん!》

 

その報告にM4の脳裏に嫌な考えが浮かんだ、さっきまでは素人というか、決められたことしかやらず、武装を変化させることもしなかった彼女が最後に見せたディストーションフィールドと、ナデシコからの眼を掻い潜ったという事実、まるでそれは

 

「成長、している?」

 

もし、もしこの経験値が新たに生まれるクローンたちに適用されたら、そう考えた時点で戦慄を覚えた。




一人でも撤退すれば勝利、経験値を積むことが必要なことだった。

まるでパルヴァライザーみたいだぁ(絶望

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