それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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TAC-50ちゃん命がけのリアル鬼ごっこ


鬼ごっこ 道中

爆発炎上した車、それを囲むように立っているのは5人の人、その誰もがマスクを装着し素顔は分からず、だが体型から何まで奇妙なほどに同じ、手にはM16A3、その銃身の下部にはM203グレネードランチャーが装備されている者も居り、車を爆破したのはそれだろうと推測ができる。

 

炎上する車、コレには先程までターゲットが乗っておりそれの始末をせよという任務を受けて待ち伏せをし逃げる隙きも与えずに攻撃、事前のシミュレーションではコレで確実に殺せると出ていたのだが5人の内の一人、マスクの色が一人だけ違う個体がふと何かに気付き炎上している車の反対側、位置で言えばリアガラスのある位置に回り込み地面を見れば、点々と付いている血痕、それはつまり

 

「対象の生存を確認……了承、これより追撃に入ります」

 

聞こえた声はユノとよく似ており、彼女がそう告げたと同時に周りの個体も動き始める、一切の乱れなしに、逃げた対象を追い込み殺すために……

 

一方、TAC-50はと言うと血が流れる右腕を抑え、路地裏を逃げていた、だがその顔には額から流れるを拭う余裕はなく、息も乱れに乱れている、しかしそれでも彼女はこうして逃げれていることに安堵の息を吐きたい気持ちではあった。

 

(ハァ、ハァ、全くもうこれでアーキテクトには足を向けて寝られませんね)

 

彼女が生き延びれた理由、それは昨日のこと、急にナガンから執務室に来るようにと呼び出された彼女が向かえば、早速切り出された話題にTAC-50は驚愕することになる。

 

それは自分を此処に配属させた委員会が

 

「……偽物だった?」

 

「うむ、いや、委員会自体は存在するしお主が話した構成員もきちんと現実に居る、が」

 

「情報部からの話だと、TACちゃんを送ったっていう記録がないみたい」

 

ユノの言葉に更に驚愕の表情を隠せないTAC-50、では何時ものように定例報告をしていたあの相手は誰だと、それに自分は確かに委員会の面々から直接言い渡されたはずだと、その疑問に答えたのはやはりナガン、彼女は今回、内部の情報が漏れていると言う話でTAC-50の事を疑っていたのだ。

 

その疑いを持った理由がAUGがこの基地に配属された時、彼女はTAC-50の話を聞いてこう呟いたのだ。『自分以外にも委員会から送られてきた人形が居たなんてね』と、何故態々近いタイミングで、しかも何も知らせずに配属を?と疑問に思ったナガンが情報部の急ピッチに、しかもネクロノミコンの使用まで許可させて集めさせた結果出てきたのが、ユノの言葉になる。

 

「どうやらお主は記憶処理をされていたと言うのが情報部の考えじゃ、そして受け答えしていたのは委員会の者をコレ以上ないほどに再現したAI、これにはヘリアンですら騙されたという完成度故にお主が気付けなくても無理はない」

 

「じゃあ、私が今まで行ってた定時連絡とかは今回のクローンを量産して計画を進めている組織に情報を流しているだけだったってことですか?」

 

「そうなるな、そして奴らが動き出した、となれば」

 

「私は用済み、消しに来ますよね」

 

大して考えなくとも分かることである、それが何時来るかはわからない、だけど自分をこのままにしておくほどに向こうは有情な連中ではないことは確かだ、でなければクローンに自爆機能なんて付けないのだから。

 

「大丈夫、先にこの事が分かったから対策は取れるよ」

 

だがこの基地が何も対策を施さないわけがない、とばかりにユノが伝えてからヨイショと取り出したそれが、今日、今まさに彼女の命を救ったものだった。

 

爆発などでボロボロになった上着の下、そこにあるのは着込んだ一着のボディアーマー。これこそが彼女の命を救った、元々はユノの為にとアーキテクトが作成した『てっぺきちゃん』これは今彼女が装備しているMkⅤの一つ前、MkⅣである。

 

コレによって銃弾と爆発の衝撃は何とか殺せて逆にその衝撃のままリアガラスをぶち破ってから逃走して今に至る、だが彼女はコレで逃げ切れたなんて露とも思っていない。

 

「こちら、メープル『スズメバチ』に襲われました、現在逃亡中、ナデシコ指示を」

 

《_______!!》

 

「え、ちょっと、何も聞こえません!」

 

《___!》

 

嘘でしょと呟くと同時に背後から数人が走ってくる音が聴こえ、彼女は痛む身体に鞭を入れて走り出す、本来であればナデシコからのナビゲートで迎えが来るはずの地点まで逃げる手はずだったのだがどうやら先の爆発の衝撃で通信機が故障したらしい。

 

てっぺきちゃんがあったとは言え無傷ではなく、ナビゲートがない状態、しかも今のTAC-50には武装はサイドアームとして持ってきていたG18一丁のみ、これで追手と戦闘になれば一瞬で彼女はお陀仏である。

 

(楓月も持ってきてないし……どうしようかなこれ)

 

あぁ、いよいよ覚悟決めなきゃ駄目かなぁ。現状を冷静に分析した電脳が導き出した生存率は数えるのも馬鹿らしいほどの小数点以下のあとに付いた1、その結果にTAC-50は思わず笑ってしまった。

 

どうやら自分は、死にたくないと思っているのだなと、でなければ無慈悲に0%と表示すればいいのに態々1を付け足しはしないだろうと、だからこそ彼女は足音だけを頼りに逃亡を開始、幸いにして通信は信号も送れるし一方通信ならば出来るので、彼女は救難信号を出しながら

 

「こちらメープル、これより独自で合流地点に向かいます」

 

ビリっと自身の服の裾を破って右腕の傷に包帯代わりに応急処置として縛り、額の傷にも同じように処置をしてからG18を構え、走り出す。

 

廃ビルを、路地裏を、表通りに出てしまえばとも考えたが、あの時は気づかなかったが此処はどうやら廃棄された都市だったようだ、こんな事だったら移動中に外でも眺めて異変を察知するべきだったと後悔しつつ足を止めずに逃げ続ける。

 

向こうは探索という経験がないからなのか、それとも別に策を練っているのか、逃亡開始から数分経っても接触はなかった、コレならば何とか逃げ切れるのでは、TAC-50の気持ちに余裕が若干生まれつつも油断せずにまた路地裏を逃亡していた彼女だが、その足は急に止まった。

 

路地の出口、そこから二人ほどの足音が聞こえ、このままじゃと引き返そうとすれば後ろからも一人、また別の所からも一人の足音、TAC-50は即座に他の逃げ道を探し、唯一残ってた逃げ道に逃げ込むがその先で彼女が見たのは

 

「……所謂コレって袋小路ってやつだよね」

 

どうやら廃ビルの裏側に追い込まれたらしい、しかしまだ裏口と思われる扉があるからと開こうとするが無情にも鍵が掛けられており、押しても引いてもびくともしない、その間にも追手は迫ってきて、遂には

 

「対象を発見、小隊長の指示を待ちます」

 

「ああもう、開けっての!!」

 

「了承、排除を開始します」

 

その言葉に振り向けば構えられたM16A3の銃口、此処までか、だがとG18を構えた彼女を襲ったのは扉が開かれる音とグイッと首を掴まれて後ろに引っ張られる感覚、そして耳を劈くような音と閃光だった。




COD的なノリをイメージしながら書いてみたかったけどこれが中々難しいねんなって……

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