それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
防ぐ間もなく襲った劈くような音で耳が聞こえない、目を焼くような閃光のお陰で視界は真っ白のまま、だが誰かに引っ張られてる感覚はする、次第に聴覚が戻り始めると
「じゅう……50!TAC-50、聴こえてる!?」
「ス、トーム?」
「ああ良かった、聴覚がイカれたかと思ったわ。流石に対ハイエンドモデル用の試作品のフラッシュバンを使ったから不安だったのよね」
次に視覚が戻り始めればTAC-50はやっと今の状況の把握を始める、追い詰められて駄目かと思えば後ろの扉が開き、今は【Px4ストーム】に引き摺られる形で丁度廃ビルから脱出したところらしい。
だが、まだ逃げ切れたとかいう状況ではないなと判断、ストームに声を掛けて自分も立ち上がり、走り出したタイミングで恐らくはストームが細工をして直ぐに開かないようにしてたであろう扉が吹き飛び、現れた彼女達にストームは舌打ちをする。
「チッ、思ったよりも復帰が早い。こちらヤーナム、メープルと合流、直ぐに救援を寄越して!!」
《今エアレーズングを向かわせた、二分で着く》
「二分ね、一分もあれば私達はスクラップよ」
「とりあえず、逃げましょう!」
吐き捨てるようにストームが言うが、向こうも全速で来ての時間だとは分かっているので何とか逃げ切る手段を模索しながら後ろをチラッと見れば隊長格と思われる一人が他の個体へと指示を出しているのか手を動かしているのが見えた。
そう、指示をしている。しかも声を出すではなくてハンドサインだけで行っているということにストームはまた成長しているのではと考えるが、向こうからの射撃と他の個体が自分たちを囲むように動いていることからそんな事を考える余裕はないと近場の路地裏に逃げてから
「ナデシコ、一人だけ動きと装備が違うのが居る、そっちから何かわからない!?」
《少し待って……ビンゴ、そいつ前にAR小隊と戦って生き残った個体だ!》
《とすると、他の個体へはその時の経験値は受け継がれていないのか?いや、それにしては動きが良すぎる……》
「にゃろ!!」
味方と合流できたことで若干心に余裕が生まれたTAC-50が、だったらと隊長格の個体に発砲、しかしそれは不可視の壁に防がれたよう目前で停止、重力に従って落ちていくのを見た所でM4の防御技術が吸収されてたことを思い出して苦い顔を晒す。
そこで、何か疑問に思ったストームが他の個体、上空を移動して丁度自分たちを撃とうとしていた個体に発砲すれば、難なく【回避】される。
「……フィールドを使えるのは彼女だけ?って考えてる場合じゃないわよね、ナデシコ、サポートお願い!」
《勿論だ、それと勝手に出撃してたやつが居るらしいな》
キャロルの何やってるんだアイツはという声と同時に二人の耳に聴こえたのはスラスターの音、だがそれは追手の彼女達のものではない、現れたのは好みの色だからと紅に染め上げたヘッドギアと武器と飛行ユニット
「無事か!?」
「ナイスタイミングよ、イチイバル」
「ハァ……ぜぇ……あとは、任せますよ?」
聴こえた声は、今この場においてだと何よりも安心できる、ノアの登場である。彼女は二人が何とか無事だということに安堵してから目の前に視線を向ける、向けて辛そうな表情を浮かべてしまう。
自分の前の前に居るのは彼女達だと分かる、分かるから今こうして相対しているという状況が胸を締め付けるような痛みを発する。
(んなの、分かりきってたことだろうが!!)
ギリッと歯を食いしばる、彼女達が現れて仲間を襲っていると報告を受けて彼女はキャロル達に指示を仰がずに此処に来た、後でしこたま怒られるだろうけどそんな事関係なかった。
もし、これでTAC-50が、ストームが殺されたとなれば自分が許せないだろう、ユノにもショックが大きく掛かるかもしれない、だがそれ以上に、彼女達に意思もなく罪を犯させたくないという感情が強かった、だからこうして飛んできたのだと自分を叱咤してから20mmバルカンを構え
「ここはアタシに任せて逃げろ!」
二人からの返事は聞かない、とばかりにスラスターを吹かせて目に見える範囲に居た二人に掃射、無論狙いも何もないそれはあっさりと回避され反撃が来るがそれを回避しつつ、今度は別の三人に狙いをつけて掃射、とにかく自分を目立たせるように動き回りながら彼女達を相手取る。
TAC-50とストームもそれを確認すること無く走り出す、ナデシコからの情報だとこの先の空き地にもうエアレーズングを乗せたヘリが来るとのことなので時間が地味にないのだ、なので二人は彼女の無事を祈りつつ走る。
《ったく、命令違反だぞイチイバル》
「わかってらぁ!どっちにしろコイツラ相手にできるのはアタシくらいしか居ねぇだろ!」
《時間稼ぎだけでいい、倒そうとは思うなよ、二人が離脱した時点でお前も撤退しろ、これは指揮官代理としての命令だ、良いな》
「……あぁ、分かった」
本当に分かってるんだろうなとキャロルは思うが最悪クフェアを引き合いに出せばいいだろうと考えて戦いを見つめる、流石というべきか今までの戦闘経験の差があるからなのか、5対1にも関わらずノアが若干圧倒している、が逆にキャロルはそれが怖かった。
今コチラの手札で彼女達と真面目に戦おうと考えると確かにノアが一番の手札となっている、次点でランページゴーストだろうか、ともかく即座に動けるとなると彼女を頼るしかないのだが
(もし、向こうがとんでもない勢いで成長でもされたら……)
何れはノアでは抑えられなくなる、相手の目的が現状わからないのに勝ち目がなくなるというのは最悪すぎる展開だとキャロルは考える。
だから今回彼女には時間稼ぎに徹底させる命令を出した、少しでも持っていかれる経験値を抑えようという試みである、コレが何処まで効果的かは分からないがやらないよりはマシだろうと。
「だらっしゃぁ!!」
一方戦場ではノア優勢で戦いが進められてはいた、が彼女は何か違和感みたいなのを感じ始めていた、少し前、それこそ数秒前の動きと、今の動きがなんと言うべきか、少しずつ
(良くなっていってやがる?)
始めは大きな回避だったのが段々と最小限の回避になり、今では回避と同時に反撃まで飛んでくるように。なるほど、これがM4が言ってた急成長かと納得、このままではマズイと判断した彼女は飛行ユニットから小型マルチプルミサイルを放ち、わざと撃ち抜いて爆破。
爆炎に紛れる形で突っ込んで隊長格の個体に接敵、貰ったとばかりに右手にPythonを構え銃爪を引こうというタイミングで、今まで無表情、無言だった彼女がはっきりとノアを見つめて
「オネエ、チャン」
「っ!?」
怯んでしまった、感情なんて無いと思われていた彼女が発した声に、自分を見つめる目に、躊躇が生まれ、だが罠だろコレと思考を無理やり戻したと同時に右肩に鈍痛が走った。
ノアちゃん、また負傷してる……