それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

626 / 794
基本的に誰か居るからなぁここは


意外でもないけど退屈しない医務室の一日

凡そ6時といった時間だろうか、パチリと目が覚めて彼女自身でも驚くほどに大きくなりお陰で動くのも中々に苦労するようになったお腹に負担をかけない様に上半身だけ起こして、ふと隣を見れば椅子を繋げただけのベッドとも言えないそれに横になっているノアの姿、それを見たクフェアは困った感じの笑みを浮かべて

 

「もう、またそんな体制で寝てたのですか……」

 

クフェアが一人じゃ寂しいだろうからな、そんな事を言いつつも本当は自分も寂しいノアは彼女が医務室で過ごすようになったその日からこうして寝る時は彼女の側に居ることにしている、のだがやはり椅子を繋げただけのそれは如何なものなのかと言うのが本音だったりする。

 

実際、起きてから肩を頻りに回したりしているので決して楽な体制ではないのだろう、だがその事をクフェアが言うと

 

「ヘーキだって、それにほら、最近は敷布団も敷いてるから少しは楽になってる」

 

「そ、そう?でもペーシャさんとかに言えば、ベッドの一つくらいは使っていいって言ってますよ?」

 

「いや、病人でもねぇのに使っちゃ悪いだろ、よっと、んじゃ行って来る、何かあったらすぐに誰かに言えよ?」

 

「うん、行ってらっしゃい、ノアも気を付けてね」

 

クフェアの言葉にノアは背中越しで手を振ってから医務室を出て空中哨戒の任務へと向かった、此処最近は仕方のないことなのだがお昼のお弁当を用意できないことには若干申し訳ないと思っている彼女だったりするが、ノアはきちんと理解しているし、そんなことで怒ったりしないんだけどなとクフェアにも伝えているので問題はない。

 

「数値等に異常は無し、どこか違和感などはありますか?」

 

「いいえ、特にはっと、ふふっ、動く時は思いっ切りだね君は」

 

「赤ん坊の方も元気そうですね、この調子だと三週間前後が予定日で間違いなさそうです」

 

さて、この時間帯はノアを見送ってから、次は朝の定期診断、もう出産予定日まで一月を切っているので現在では朝昼晩の三回、きちんと定期診断を行うということ、それと念には念をということで出産、それと産後しばらくは絶対安静を言い渡されている。一応入浴だったりとかは出来るようになっているので不便とかはないのだが日課だった散歩なども出来ないので若干暇になってしまうことが多く、今の彼女の楽しみはと言うとM4とかが持ってきてくれる本を読んだり、お見舞いや医務室のスタッフである三人の誰かと会話を楽しんだりしている。

 

「それで、G11とはどうなのリベちゃん」

 

「い、一応こう、それとなく態度は見せてるつもりなんです、でも向こうはどうにも友人としてしか見てない気がして……」

 

その会話の本日の話題はリベロールとG11の話。クフェアもリベロールがG11にほの字だというのはあのホワイトデーの出来事で知っているし、その事を向こうに聞けば相談に乗ってくれないかと言われ、最近ではこのような会話がよく行われているのだが、どうやら成果はあまりよろしくはないようだ。

 

リベロール自身もそうなのだが、G11も彼女のことは趣味が合う親友という認識なので、彼女が言うそれとなくの態度ではやはり進みが悪い、なのでクフェアは

 

「だったら、素直にぶつけちゃえば良いんじゃないですか?」

 

「いや、それが出来たら苦労しないですからね?もう、クフェアさんとノアさん、指揮官とクリミナさんはそうだったかもしれないから分からないかもしれませんが、普通は好意を伝えるのだって一苦労なんですからね」

 

「そ、そうなのかな、そう、かなぁ?」

 

アハハと頬を掻きながら、何故か困るように笑うクフェアに、相談相手間違えたかもしれないと小さく溜息を吐いてしまうリベロール、だが不思議とじゃあもう相談しないのかと言われるとそんなことはないという感じにさせるのは、クフェアが持つ言葉に出来ないけどリラックスできる優しい空気のお陰なのだろう。

 

気付けばそろそろお昼という時間帯、昼食を持ってきたのはペーシャだった、彼女はクフェアが居るベッドの所まで行き、ベッドサイドテーブルに昼食を並べてから、側の丸イスに腰を下ろし、ふぅと息を吐く。何かあったのかなと思うがまずは食べてしまおうと昼食を食べ進め、きちんと完食してお茶を飲んでいるとポツリと彼女が呟いた

 

「指揮官の出産が予定よりも更に早まりそうです」

 

「……え!?」

 

「あぁ、と言っても早産とかではありません、ただなんと言うべきか、彼女はあまりに特殊すぎて予測が付きにくいんですよね、そろそろ安定してくれる筈なので予定日を出せるとは思うのですが」

 

お陰で私は新たな発見だらけでバタバタですよとペーシャにしては珍しい言葉にクフェアはキョトンとした顔をしてから、お義姉さんは不思議な人ですからと答えれば、確かにその通りですねと笑みを零しながら、では片付けてきてしまいますねと医務室を出た入れ違いで今度はSOCOMが現れ

 

「丁度お昼が終わったところだったかしら」

 

「はい、午後の担当は今日はソーコムさんですか?」

 

「その通りよ、まぁ暫くは平和だと思うのだけどね」

 

ヨイショと定位置の椅子に座ってから、彼女はクフェアを暇にさせないようにと雑談を挟みながら資料の整理を進めていき、こうしてお昼の時間帯は流れていく、そして夕方になれば、彼女の耳に聞き馴染んだスラスター音が届けばあぁと自然と口元に笑みが浮かび、偶々それを目撃したSOCOMが

 

「あらあら、どうやら旦那様がご帰宅したようね」

 

「え、あ、もしかしてまた笑ってました?」

 

「そりゃもうバッチリと」

 

このやり取りはかれこれ数度目なのだが、その度に今度はバレないようにするんだと決意するクフェアであった、なお、翌日もリベロールに指摘されて今度G11にリベちゃんが話があるってこと伝えておくねと返して、それだけは止めてと懇願する光景が見られた。

 

ともかく、それが聴こえてから数分とすればノックが一つされて扉が開かれれば入ってきたのは

 

「私だ、フフッ、良い顔だ、態々アイツの頼みを聞いてやった甲斐があったというものだな」

 

「う、ウロボロスさん?あれ、ノアは?」

 

「アイツならお前のために夕食を取りに行ってから来るらしい、それを伝えてくれと頼まれてな、折角だし同席してやろうと考えただけだ」

 

なぁ?とウロボロス、もといロリボロスが視線を向ければ三人分の夕食が乗った台車を押してきたノアの姿がそこにあった。

 

「おかえりなさい、ノア」

 

「おう、ただいま。それとわりぃなウロボロス」

 

「ふん、構わん。食堂で食べているとアーキテクト殿達が喧しいからここに来ているだけだ」

 

こう言っているがウロボロスは別に彼女達との食事が嫌だというわけではない、が向こうは適当に放置しても騒がしい、ここは誰か一人はスタッフが居るとしても二人っきりの食事、ならば一人くらいは増えたほうが良いだろうという彼女なりの気遣いだったりする。

 

今までは二人っきりの、最近ではウロボロスが混ざったことで彼女の話に相槌を打つ食事が終わり、入浴をノアとネゲブのサポートで済ませて、こうして彼女の一日が終わる、無論最後は

 

「ねぇ、やっぱりベッドで寝たほうが身体にも良いんじゃないかな」

 

「大丈夫だ、今日はなんかペーシャが簡易ベッドってのを用意してくれたからコレで普段と変わらないからな!」

 

「そ、そうだね。じゃあ、おやすみなさい、ノア」

 

「おやすみ、クフェア」

 

あ~、甘ったるい、ペーシャの言葉が聴こえたような気がするが二人は気にせずに就寝するのであった。




クフェアちゃんの出産はそろそろ、ユノっちに関しても割と変動するかもしれないというお話でもあったね!

……ここでぶっちゃけると、クローン計画戦線に入った時点で実はこの作品、最終章だったりする。多分、2周年怪しいなコレ!(その前に戦いが終わりそうまである

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。