それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:鮪薙
それは唐突な頼みだった、何時ものように彼女のラボに向かったFive-Sevenを迎えたのは何時も通りの仏頂面からの溜息ではなく、丁度良かったという顔をしたジャージ姿のキャロル。
今までで初めての表情を向けられて若干ゲージが振り切れそうになるのを抑えつつ、何時ものように挨拶をすれば
「あぁ、57、少し頼みがある」
「あらあら、良いわよお姉さんに出来ることなら何なりと」
嬉しいという表情を全く隠さずにそう告げるとキャロルは早速その内容を話してきたが、Five-Sevenが先ず行ったのはジャージ姿のままそれを行おうとした彼女を着せ替えする事だった、これにはキャロルは何故と不満げだったとか。
そんな事があったのがついさっき、そして今は二人は【ガーデン】に居た、車からヨイショなんて掛け声が聞こえそうな感じに降りるキャロルとまさか彼女からこんな頼みをされるとは思わなかったという感じにまだ驚いているFive-Seven、なので街に着いて早々なのだが彼女は聞いてみることにした。
「それにしても、キャロルから街に出たいなんて言い出すなんて驚いちゃったけど、どういう風の吹き回しなのかしら、お姉さんに教えてほしいな」
「只の気分転換だ、ここ最近はゴタゴタしっぱなしだったしな、それに、想い出は作れる時に作りたいしな」
「キャロル?」
Five-Sevenの耳にははっきり、ではないが確かにキャロルが理由を話した後に何かを呟いたのが聴こえた、何だかとても不穏で、嫌な感じがするその呟きについ聞き返してしまえば向こうは聞かれたとは思ってなかった感じの眼を一瞬だけしてから
「何でも無い、それよりもだ、俺はこの街のことは正直そこまで知らなくてな、案内を頼めるか?」
「……えぇ、お姉さんに任せなさい、お姫様が十分に満足できるように案内してあげるわ」
「お姫様言うな、それと抱きかかえようとするな!!」
「やーだ、コレは報酬よ」
アガァァァとジタバタ藻掻くがそれでどうにか出来るわけもなくキャロルはFive-Sevenによって街の住人に抱き抱えられて運ばれるところを目撃されることになる、基地でならばまだしも街で、しかも知らない住人たちにコレを見られるのは流石に堪えるものがあるらしく急速に目が死んでいくのを感じ取ったとか。
そんな罰ゲーム染みた事をされつつも街の案内はきちんと行うFive-Sevenに強く言えるわけもなく、次第に慣れていけばやれやれという感じに楽しむことに思考を動かしていく、それから数十分と抱き抱えられたままガーデンを案内された彼女は、今はオススメだというクレープ屋で買ったクレープを公園のベンチに座り食べているところである。
「ふむ、悪くはないな、ただもう少し甘いほうが俺は好きだ」
「キャロルって結構甘党よね~、実は苦いのは好きじゃないとかある?」
「……コーヒーをそのまま飲める奴の気がしれん、眠気が覚めるとかペルシカは言っているが苦いだけだろあれ」
彼女の言葉にキャロルはコーヒーは絶対にミルクと砂糖が必要だものねと思いながら笑みを返せば、向こうはそれをどう感じ取ったのかは知らないが曖昧な表情を浮かべてクレープに齧り付いて食べ進めていくのを眺めればFive-Sevenは本当に可愛らしいわねこの娘はと微笑みを浮かべる。
そんな周りから見れば仲のいい姉妹と言った感じの二人の空間は丁度キャロルがクレープを食べ終えたタイミングで乱入者によって崩れることになる。クレープを食べ終え、次はどうするかと、そろそろあの雑貨屋に顔を出すかとか話していると偶々二人の後ろを通り掛かった一人の女性がピタッと止まってから後ろ姿とは言えキャロルと見つめて
「もしかして、キャロルちゃん?」
「誰だって……お前、ロペラか!?」
「うっわ~、キャロルちゃんだ!!ちょ、ちょっと待っててね、直ぐにフトゥーロも呼んでくるから、待っててよ!!」
「あ、ちょっと待てって、はぁ、相変わらずなようだなアイツは」
特徴的な癖っ毛を跳ねさせながら走り去っていくロペラの後ろ姿を見つめてキャロルはどことなく嬉しそうに呟けば、Five-Sevenは対象的につまらなそうな表情を浮かべてから
「さっきの娘は、誰なの?」
「まだ俺が旅をしていた頃に、三日ほど世話になった者だ。どうせ戻ってくるからその時に紹介してやろう」
「ふぅん(まぁ、友人って感じでしょうし、向こうも妹をって感じだから大丈夫そうね)」
数分後、フトゥーロを連れて戻ってきたロペラが自分たちの自己紹介をしてから、次に別れてからの自分の事を話してから最後に隣で何故か見定めるような視線を二人に送っているFive-Sevenを紹介しようとすれば彼女から一歩前に出て、右手を差し出し
「S09P基地所属のFive-Sevenよ、気軽に57と呼んで頂戴な」
「ロペラです!」
「フトゥーロと言います、でもそっか、キャロルちゃんも元気そうで良かった」
互いに握手をしてからフトゥーロがポツリと呟く、彼女達としては別れてからキャロルのことは割と気がかりであり、旅先で話が出てこないかと情報を集めたこともあって、こうして無事に再会できて安堵の息が漏れてしまう。
逆にキャロルは二人が何故此処に居るのかと言う疑問になり聞いてみれば
「私達、此処で腰を据えようかなって、実はやりたいことがあってね、旅をしてたのはその準備だったんだ、それでこの街の町長さんに話をしたら此処で土地も用意してくれるって言われて」
「まだこれから準備に入るから直ぐにって訳じゃないけどね~」
ほぉとキャロルは感心したように声を漏らし、何をやるんだと聞いてみるがそれはまだ秘密とのこと。
それから四人で雑談を楽しんでからロペラとフトゥーロは今日の夕食の買い出しに、残された二人はその後も軽く街を散策し、リポスティーリオにも顔を出せば
「久しいな店主、変わりはないようだな」
「おや、キャロルちゃんじゃないかい、それとそっちはFive-Sevenであってたかしら?」
「えぇ、お久しぶりね、お婆ちゃん。相変わらず歳に似合わない雰囲気よね~」
「呵々、コレでも衰えてる方なんだけどねぇ」
こうしてキャロルは残りの時間をフィオリーナとの会話で費やしてから、基地に戻ることになる、その帰り道、助手席で窓から見える景色から目を逸らさずにキャロルから唐突に
「57、今日はすまないな、こんな事を頼んで」
「いいえ、楽しかったから大丈夫よ、それで良い息抜きにはなったかしら?」
「あぁ、十分に気分転換になったよ」
ありがとう。小さくそう告げればFive-Sevenにはしっかり届いたようで嬉しそうに笑みを零しながら帰路への道を走らせていくのであった。
こうして過去のキャラがちょいちょい出るとなんかこう、感じるものがありますよね!
え、ぽっと出のキャラじゃなかったのかって?まぁほら、最終章だしええやろ