それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
ここはヴァニラの職場でもある人形達を整備するための部屋、ここでは戦闘での損傷、定期的なメンテナンス諸々を承っているというのは言うまでもないとは思う。
そこに今日はアナが居た、とは言っても何処か不調があるとかではなく、この体に使われている技術のレポートを纏めるのをヴァニラに手伝ってもらっているだけである。
「すみません、急に手伝ってくれなんて言ってしまい」
「暇してるからコレくらいならお安い御用よ。にしても、貴女は最近ちょっと働きすぎなんじゃない?」
唐突にヴァニラからアナに向けられたその言葉に彼女は作業の手を止めて考え込んでしまう、そう言われることには心当たりは当然ある。
だが今動かないでどうするのだというのもまた事実だと思っている、遂に動き出した自分が追い求めていた黒幕に一刻も早く辿り着かなければならない、そのためにも2度現れたというユノのクローンを見つけ出して何とか捕縛しなければ、そんな思いで彼女は時にランページゴーストと、時には単独で外の哨戒任務に日夜出ているのだ。
しかし結果は空振りの連続、TAC-50の襲撃以降はぱったりとその出撃が途絶えてしまい、それが募れば今度は焦りが生まれ、気付けば……
「結構部品一つ一つが摩耗してる、一応こっちでも出来る限りのメンテナンスはしてあげたけど、二三日は休暇を取ることをオススメするわ」
「そんなに酷い状態ですか?」
「えぇ、唯でさえデリケートな技術使ってるんだから気を付けないと駄目よ、まぁ焦るのも分からなくないけどね」
はっきりと告げられれば、ウッという表情を晒すアナ、しかしヴァニラも彼女が思っていることは分からない訳でもない、今の今まで影も形も見せなかったアナからしてみれば仇とも言える組織が急に動きを見せて、クローンまで引っ張り出してきた。
正直に言えば、ヴァニラもこの先、時間を掛ければ掛けるほど良くないことになるような気がしている、しているのだがだからといってアナのように我武者羅に動いたとしても結果が出るような相手ではないだろうと考えている。
「今は耐える時よ、それにアリババや国家保安局とかが情報収集にあたってる、焦らなくても辿り着けるはずよ」
「……」
「確かに貴女は独りで今まで戦い続けてたかもしれない、だけど今はもう仲間が居る、指揮官ちゃんを、レイラさんの忘れ形見とも言えるあの娘を守りたいっていう気持ちはわかるけど、無理をしてその時が来た時に戦えない身体にしたくないでしょ?」
「そう、ですね。すみません、思ったよりも思い詰めすぎてたようです」
「分かれば良し、っとほい、今回分のレポートよ」
差し出されたそれをアナはお礼を言いながら受け取り、中身を読んでいく、自分が書いたそれをペルシカ達が分かりやすいように修正されたそれは恐らくは技術屋が読むとそうなのだろうという内容に流石科学者だった人ですねと感心、一通り読み終わってから
「助かりました、正直、私は苦手なんですよねこう言うの……」
「フフッ、良いじゃないの苦手の一つや二つ、そういうのがあったほうが可愛らしいってものよ」
「それ、マスターに言ったほうが良いですよ、私に向けられてもちょっと複雑ですから」
褒めてるだけなんだけどと彼女は言うのだが人によってはそのセリフは色々と誤解を生みそうなのでぜひとも止めて欲しい、もし間違ってイベリスの耳に入ろうものならば露骨ではないが可愛らしい嫉妬を向けられることは間違いないのだから。
とはアナは思っていてもヴァニラには中々伝わらないというもの、なのでとりあえずそれだけを伝えてから彼女は改めて礼をして整備室を出て、そのままの足でアーキテクトのラボに向かえば、丁度良かったと彼女に案内されたのは武器製造部屋、通された先で台座に安置されるように飾られていたのは一本の高周波ブレードと飛行ユニット、それとまるで余りで作りましたという高周波ナイフが数本、どれも共通しているのは青をベースに白いラインが入っているという事。
「これは?」
「何時だったかほら、MSFからの依頼を受けた時に報酬貰ったじゃん?それを使って改良した飛行ユニットのセットさ」
元々は飛行ユニットだけのつもりだったのだが、あの戦闘で高周波ブレードにも破損が見つかれば折角だからと全てを一度改良、そして生まれたのがこれらしい。
試しに高周波ブレードを持ってみれば以前よりも更に軽く感じよく見れば刀と呼ばれる極東の剣のような反りも確認できる、アーキテクトの説明だと切れ味も耐久も段違いに上がっているらしい、また高周波ナイフも同じ製法で作られているのでリーチが違うだけで性能は変わらないとのこと。
次に飛行ユニットは出力の向上は勿論のこと、耐久面や前回出た問題として耐熱性、だけに留まらずあらゆる耐性を跳ね上げさせて、以前よりも更に頑丈に、軽く仕上げたことで飛行能力も合わせて向上、機動力だけで言えばノアにすら匹敵することも可能という所まで上げたらしい。
「まぁ、飛行ユニットの方はキャロルんが言うにはちょっとばかり慣れが必要になるかもってのと、アタシから言わせるとじゃじゃ馬がすぎるかなぁってのはある」
「ですが、使いこなせればコレ以上無いほどの装備ですね、ありがたく頂戴します……所で名称などは?」
そう聞いたのはアーキテクトは事あることに開発品には名前をつけることが多いと聞いていたから、前回の飛行ユニットと高周波ブレードはペルシカが担当してたので特に名称はなかったのだが今回のはアーキテクトがメインで作り仕上げた、ならば何かあるだろうと聞いてみれば
「よくぞ聞いてくれたね!では先ず飛行ユニットから紹介しよう、この子の名前は【シューティングスター】直線での速さが売りだからね!大丈夫、燃え尽きたりはしないから」
「いやまぁ、速すぎて燃え尽きても困りますからね……」
「そもそもそこまでの速度は流石に出ないからね~。そして高周波ブレードが【アメノハバキリ】これはRFBが考えてくれたんだ、いい響きだよね!」
尚、RFBが直近で見てたアニメは言うまでもないだろう、因みにだが高周波ナイフの方には決めていないらしい、というのも投げナイフとして使うことも想定されており消失の可能性があるからとのこと。
だが新たなこの力を手に入れた彼女は改めて決心する、時が来たらこの力を持って彼女達の未来を切り拓こうと。
防人さんの歌は慣れないと歌いにくいけど好きだよ(唐突