それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
珍しく指揮官はその日夢を見ていた、それは彼女の数少ない過去の記憶
「お手伝いさん、今日も来てくれたんだ!」
「静かに『お嬢様』またあまり長くは居られませんがお話相手に、それとこちら焼き立てのパンとミルクでございます」
「えへへ、ありがと!」
彼女が歪みきらなかった善意の存在、もし居なかったらもっと歪んでいた彼女を繋ぎ止めたとあるメイド、真っ暗な粗末な小屋に押し込められた少女を気遣い、そして最低限の食事では足りないだろうと雇い主の家族の目を盗み焼いたパンとミルクを毎日のように持っていき話し相手になってくれた優しいお手伝いさん
だけどそのお手伝いさんはある日、来なくなった。そして偶々聞いた話で彼女が追い出されたと聞き、何故?と疑問が頭を埋め尽くす、
そこで指揮官の目が覚めた、なんだから随分と懐かしい夢を見たなと思いつつ起きて何時も通り朝の準備を始め、M1895にそんな夢の話をしつつ朝食を食べ、執務室にて今度は今日の予定などを確認する、とここでM1895が一枚の書類を読んだ時におお、と声を上げた
「どったのナガン」
「喜べ指揮官、いやこの場合は【G36C】もか。今日の配属予定の中に【G36】の名が入っておるぞ」
「本当!?」
G36Cにも後で伝えてあげなきゃと喜ぶ指揮官、だがM1895はその書類を読み続けてふととある文章が目に付いた
尚、今回の配属は該当戦術人形からの予てからの要望である。その一文だ
(予てからじゃと?G36Cが居るからというのではなさそうじゃがだとしたら何故此処に?)
だが考えてところで出てくる訳でもないのでそこで打ち切り、未だはしゃぐ指揮官を宥めてから時間まで仕事を開始することにした
別段何かあるわけでもなく寧ろ配属にG36が来ると知ってからはいつも以上の速度で午前の業務を終わらせ、いよいよ彼女が来る時間となり現在はヘリポートにて待機している
「……毎度思うのじゃが、執務室で待つだけでは駄目なのかのう」
「駄目、だって折角来てくれるんだよ?一番に迎えてあげなきゃ!」
まぁ、お主がそれで良いのなら構わないのじゃと諦めの声を漏らした時、メインローターの音と共にヘリが来た
そしてハッチが開かれ、そこから現れたのは若干ミリタリー風に改造されているメイド服の女性。彼女はヘリから降りてからパイロットに頭を下げヘリが去っていってから指揮官達の方を見る、そして指揮官の顔を見た瞬間、口元が確かに良かったと動きカツカツと二人に向け歩いてくる
(良かった?)
「本日よりこちらの司令部に配属となりました【G36】ございます……そしてお久しぶりです『お嬢様』」
「へ?」
「は?」
配属の挨拶をしてから跪きそう告げるG36に指揮官も、そしてM1895も驚きを隠せずに呆然とする。だが指揮官は彼女を少し見つめているとふと影が重なる、あの小屋で焼き立てのパンと共に現れては話し相手をしてくれた、そう
「もしかして……『お手伝いさん』?」
「はい、あの時のお手伝いでございます」
(……なるほどのう、だから予てから、か)
一人納得するM1895、その間にも指揮官とG36は互いに懐かしみながら昔話を進めていく、がこのままだといつまでも外で話していそうだったので
「積もる話はあるじゃろう、が執務室でも良いのではないか指揮官よ」
「あ、そ、そうだね。っとと、改めてようこそ私の司令部へ、こっちが副官の」
「ナガンM1895じゃ、これからよろしく頼む」
「G36でございます、こちらこそよろしくお願いいたします」
握手を交わす二人、指揮官はうんうんこれから仲良くやってこうと言った感じに頷いてからあっと思い出したかのように声を上げ
「ごめん、二人共先に執務室に向かってて、ちょっとG36C探してくる!」
二人の返事を聞かずにバタバタと走り去る指揮官に思いっ切りため息をつくM1895、それから
「あ~、すまぬな、どうにもテンションが上っとるらしい」
「いいえ、私としては寧ろお嬢様があのように笑顔でいられる場所で良かったと思っております」
「そうか、歩きながらでよいか」
「ええ、構いません」
ならば行こうかと執務室に向けて歩を進める二人、その間、G36にはこの司令部のこと、そしてこれまでの指揮官のことを大雑把に説明していき、終われば今度は逆に当時の指揮官の事をG36から聞いていく
大方の話が終わる頃には執務室に到着、だが肝心の指揮官はまだG36Cが見つからないのか戻っていない、やれやれとM1895は自席に座った所でG36が突然頭を下げる
「副官、お礼を申し上げます」
「お礼じゃと?はて、言われる覚えは無いのじゃがな」
「お話を聞き、貴女と会えたからこそ今のお嬢様がございます。私はあの日からずっと後悔しておりましたから」
あの日、彼女のお嬢様を常時外に出して欲しいと言う懇願がしつこく、いよいよ我慢の限界に来た雇い主から解雇を言い渡された日、彼女は悩んだこのままお嬢様を連れて逃げてしまおうかと、しかし自分すら危うい状況下で彼女を連れて行くのはあまりにも危険だと判断し挨拶もせずに行ってしまったこと、それだけが今の今までずっと彼女の中に残り続けていた
だが今日、漸く要望が通りこの司令部に来て彼女を見た時、残っていた後悔がゆっくりと溶けていくのを感じた、そしてそれが目の前に居る副官のお陰だとG36は改めて頭を下げる
「……頭を上げとくれ、それにわしだけではない、司令部の皆とそもそも指揮官を拾ったペルシカのお陰じゃよ」
言われた通り頭をあげれば優しい笑みを浮かべたM1895の姿、だが顔は多少赤い所を見るとお礼を言われたことに小恥ずかしくもあったらしい
と丁度、二人の会話一段落したタイミングで執務室の扉が開き指揮官が申し訳なさそうに入ってくる
「む、G36Cはどうしたのじゃ」
「いやぁ、ごめんG36、ついさっき巡回任務に出ちゃったみたいで……」
どうやら入れ違いで出てしまったらしく暫くは帰って来ないんだと頭を下げる指揮官にG36は上げてくださいと伝え
「大丈夫ですよ、此処に居れば何時でも会えるのですから」
「そう言ってもらえると嬉しいよ。あ、ねぇG36いきなりなんだけど一つ良いかな」
「はい、何なりと」
「またあの時のパンを焼いてほしいな、ナガンも食べてみてよ、本当に絶品なんだから」
「ほう、それは楽しみじゃ」
はにかみながら指揮官が頼んできた内容にG36はゆっくりと礼をしてからすぐに取り掛かりますと告げるが私達も付いていくと指揮官とM1895も食堂へ向かう、その足取りは何時もと同じように軽いものだった
簡易キャラ
G36
戦術人形→民間自律人形→戦術人形と言う結構異例な人生を歩んで司令部に着た戦術人形。指揮官との出会いは本編の通り、因みに本来は民間から戦術の場合は浄化と言うメモリーリセットをされるのだが彼女は指揮官のことだけは忘れなかった。これはペルシカ曰く稀にあることらしいが原因は不明、なので経過観察の為に彼女の司令部に送られたとのこと
と言う訳で一言、何だこの話(大混乱)まぁお嬢様呼びなのは民間からの癖ということですよはい
あ、G36姐さんは表側です。カウンター組ではなく抑止力として指揮官を守ります
……何か文字数気にして書きたいことが上手く掛けなくなってるな、でも下手に長くなりすぎるのもなぁって言う最近の悩み