それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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最後かも、しれぬからな……


時が背中を触れる前に

この世界にも勿論ながら墓地、というものは存在する。例えこんな世界になろうとも死後の世界には安らかに逝って欲しい、そう願う人達は常に一定数は居るということである。

 

そして、今その墓地の入口に止まったミニクーパーから降りた人物のその一人だというわけである。もっとも、今から向かいその墓の中に眠るべき人物の身体は埋まっては居ないのだが、無論その人物がそんな事を気にするような質ではないので門を潜り目的の場所へ徒歩を進める。

 

手には花束と掃除をするつもりなのだろう水が溜まっているバケツと綺麗な布を持って向かった墓石に書かれていたのは【レイラ・エストレーヤ】

 

「よぉ、来てやったぞ」

 

彼女の墓の前でそんな事を言う人物は唯一人、彼女の元副官であったナガンM1895であり、彼女は挨拶代わりにそんな事を呟いてからしゃがみ花束を墓に添えて手を合わせ、それからヨイショと立ち上がってから布を水に濡らしてから拭いてやるかと墓石を見て思わず、その汚れ具合にバツの悪そうな顔をしてしまう。

 

「すまんな、あまりに暇が無さ過ぎたとはいえ、些か放置しすぎたなコレは……」

 

最後の墓参りからざっと数えてもコレはもう放置されたのではと言われてもおかしくはない程の墓参りには来れなかった。言い訳をするならばナガンの言葉通りに基地は常に大忙しではあったのだが、それでも暇な休日はあったのだから来ればよかったと思いながら墓石を磨く。

 

磨きながら彼女は今日までの事を報告するように話しかけていく、この手の世間話にはネタに困らないほどには様々なことがあったと

 

「おぉ、聞け。お主が育てた人形を覚えているか?そうじゃよ、アナがウチの基地に来たのじゃ……まぁ、あやつが持ってきた情報で大騒ぎになったがな」

 

その彼女だが本当ならば今日、共に来るつもりだったのだが今朝、ナガンが墓参りに行くぞと伝えるとアナは剣の素振りを止めてからしばし考え

 

「すみません、私は全てを終えてから、報告に上がります」

 

としっかりと自分を見据えて断ってきた。なので今日は居ない、堅いやつじゃよとナガンはまた呟きながらも彼女がそう断ったということには納得もある、と言うよりもナガンも今日ここに来るかどうかはギリギリまで悩んでいた口だからだ。

 

だが結局墓参りに来た理由は彼女達が追っている組織の情報が、漸くアンジェリカから情報部に上がったのだがそれを聞いたナガンは、彼女にコレを伝える為だ。

 

「この大馬鹿者が」

 

相手は彼女達の予想通り正規軍、そして首謀者はあのAR小隊が見つけた研究室で出てきた情報と同じく【ヨゼフ・アルブレヒト】それなり、いや、かなりの地位の科学者のようなのだがアンジェリカが言うにはかなり真っ黒な噂しか出てこないらしい。

 

しかも、何やら怪しい動きを正規軍内部でしているようで現状国家安全局でもカーターと呼ばれる軍人と同じくマークしている存在らしい。ともかく、レイラは生前、しかもグリフィンに所属してからもヨゼフが行っている計画と実験を止めようと動いていたのを逆に察知され、殺された、だからこそナガンはレイラに告げる

 

「馬鹿者が、何故頼らんかった……そうじゃなくともユノを守るための手段なぞ、いくらでもあったじゃろうて」

 

汚れを拭き取りながら、老婆が孫に優しく促すような声でそう告げる。無論、レイラは自分たちを巻き込みたくなかったというのもあれば、グリフィンにも奴らの手が回っているかもしれないと考えての行動だというのも理解できている、がそれとこれとは別だと、ナガンは説教のようなそれを続けていく。

 

が、もう既に死んでる彼女に余り長々と告げても仕方がないかと思いというのと、これから自分たちが、しかも今度はユノとレイラにとっては知らぬ間に増えていた娘たちとともにその闇に挑もうとしているのでこれ以上はわしがお主にとやかく言われそうじゃなと止めてから綺麗になったレイラの墓の前で

 

「許せとは言わん。わしとて隠そうとしたのだがなお主の娘たちは察しが良すぎて困る、故にお主に成そうとしたこと、お主の後悔、わしが、儂らが全てに方を付けてやるのじゃ」

 

アンジェリカが言うにはもう少しで踏み込める所まで来ていると言う話。だがこの作戦はグリフィンからの支援は殆ど受けれないだろうという、その説明を聞いてナガンはだろうなと笑ったほどだ。

 

真相がどうであれグリフィンと正規軍が繋がっていない訳がない、これでもしグリフィンが今回の事に首を突っ込みましたとなれば正規軍から何を言われるか分からない、それでも黙認で済まされているというのは向こうとしてもヨゼフの計画が危険だと認識しているのかもしれない。

 

「基地が、即日解散にならないだけマシかも知れぬがな……」

 

「それはないでしょうね」

 

突如聴こえた女性の声にその方向に向けば、居たのはアンジェリカ、その手には花束があり墓参りに来たというのが分かる。

 

だが、誰の?と思っていると彼女はナガンの隣に来てその持っていたそれを添えてから

 

「これでもまぁ、彼女が正規軍に居る時に知り合いだったのよ……と言うよりも彼女のお陰でヨゼフの計画が分かった、と言うべきかしらね」

 

「スパイの真似事までしてたとはな、もはや馬鹿者だとかそういう次元ではないのじゃ」

 

「そう言ってあげないでよ、まぁそれでも今日まで影すら掴めなかったけどね。でもそれも後少し、正直空にそんなの飛ばされたら困るのよ」

 

衛星兵器、唯でさえ航空戦力は貴重でしかも自由に使えるわけではない世界でその更に上を取られるというのは常に命を脅かされていると同じであり、グリフィンに限らず正規軍だってそれをされるのは困るという言葉が出てくるほどだ。

 

故にこの計画は早期に阻止したい、だからこそ国家安全局も彼女達に協力し、グリフィンもP基地をどうこうしようとは考えていない。

 

「期間はあとどの程度じゃ」

 

「断言はできない、でも一週間しない内に、何事も無ければが付くけど。っとと、あまり此処で油売ってるとうるさいのにどやされるからね、私はコレで失礼するよ」

 

アンジェリカはそれだけを言うとナガンの言葉を聞かずに背を向けて帰っていく、その後ろ姿を見つめながらナガンはさっきの彼女のセリフを思い出して、目を細め

 

「何事もなければ、か。嫌な言い方をしよる」

 

まるで、向こうがその間に何もアクションを起こすはずがないと断言しているかのような言葉に、不安を覚えるナガンだった。




あと二話くらい挟んだらいよいよかなと。

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