それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!   作:焔薙

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始まりは何時だって、悲劇から


光が落ちた日

《光が、落ちてったぞ》

 

この通信が来る少し前、彼女はランページゴーストを率いて哨戒任務似当たっているのだがそんな中で普段と変わらない、だが何かしら異変が起きてもおかしくないという空気をノアは感じていた。

 

何かが、何かが違うと。しかし周りの景色も、ナデシコからの情報からも特におかしな事はない、なのに

 

(なんだこのピリピリした感じ……クローンの事を考えすぎてんのか?)

 

と考えてみるが、それとも何かが違う。拭えないこの嫌な感じ、もしかしたら他の奴らも感じてるんじゃと思いランページゴーストの面々に通信を繋げて聴いてみるのだが返ってくるのは

 

《いえ、そのような感じはしませんが……》

 

《そうだね~、隊長は何か感じてるの?》

 

アナとRFBからの返答はこれであり、機甲部隊の隊員からも同じような返答、これを聞けばノアも気にしすぎてるのかもしれないなと思い始め、とりあえずそれを思考の片隅に片付けてから哨戒任務に集中するかと思考を切り替える。

 

ここ最近は常に彼女達のことを、敵対組織のことばかりを考えていたからだろう、その時彼女はそう思っていたし、周りもきっとそうだろうと考えていた、それくらい今回の件が大きいものだと認識になっている。

 

「とりあえず隊長、考え過ぎはあまり良くありませんからね」

 

「わかってるっての、んじゃランページゴースト……っ!?」

 

任務を継続するぞ、そう告げようとした時、その感じていた何かが膨れ上がる感覚に囚われて思わず振り向いた時、彼女達は雲が何かに貫けれ円形に広がる瞬間を目撃した。

 

空から雲を貫き、地表へと落ちるように現れたのは光だった、見ようによってはケルベロスのレーザーにも見えなくはないがそれよりも遥かに太く巨大な、いうなれば光の柱のようなものが音もなく彼女達の遥か先に現れ、そして地表へと落ち、相当な距離があると思われるというのにその衝撃と爆風が空中に居たノアの頬を、いや、地上に居るランページゴーストの面々を撫でた。

 

「……」

 

全員がその光景に言葉を失う、見たことない光景に、何が起きたのかすら理解できずににいた。ただ分かるのは今の光は遥か上空から降り注いだということ、そして地上への攻撃だということの2点。

 

そして、攻撃だということを即座に理解できたノアは即座に通信を繋げるも出てきた言葉は冒頭のそれ、勿論ナデシコに居るキャロルもオモイカネも今の光は見ていた、いや、もっと言えば彼女達よりも少しばかり情報が分かっていると言うべきか。

 

《イチイバル詳しく話せ、光とは何だ》

 

「光は光だ、なんだあれ、明らかに攻撃だろ!?」

 

「こちらシンデレラ、分かるのは上空からその高熱源、こっちからは光の柱が確認後、地表に衝突、爆風と衝撃が分かるほどの威力です」

 

上空から、そして光の柱、この二つの言葉を聴いた二人が次に行ったのは、攻撃されたと思われる地点の情報収集をしてみれば出てきた地点に言葉を失う。

 

その地点とは、鉄血の本拠地、もっと言えばエルダーブレインが居ると思われる地点、つまりあれは

 

《鉄血を狙った攻撃?いや、それよりも上空からってこれって!!!》

 

《あぁ、ほぼほぼ間違いないだろう、例の衛星兵器……ん?》

 

まさかの事態にどうしたものかとキャロルが思考を巡らせていると、その攻撃された地点に鉄血の反応を確認、あれを生き残れるとはどんな幸運な人形だと流そうとするのだが、オペレーターアバターが出してきた反応の名称に驚愕することに。

 

反応を検索、結果『エルダーブレインとエージェントと断定』と言う報告、それと同時に

 

《っ!その地点にクローンの反応、数は……1!》

 

「1ってことはアイツか!!ランページゴースト、直ぐにその地点に向かうぞ!」

 

悩むキャロル、向かわせるべきか否か、あれだけの攻撃でありながらエルダーブレインが生き残れた、そしてそれを分かっていたかのように現れた上位個体、罠とも見えなくはないが

 

(もしエルダーブレインの回収が目的だとすれば、安々と遂行されるのもマズイ、か)

 

「おい、キャロル聞いてるのか!!」

 

《ランページゴースト、攻撃された地点に向かい、エルダーブレインを回収せよ。ただし上位個体との戦闘はノアで行なえ、良いな》

 

「了解だ!アタシが先に向かってアイツの相手をする、アナ達はその間にエルダーブレインを回収しろ!!」

 

それだけを口早に指示してからノアは飛行ユニットのスラスターを全開にしてその地点へと飛翔していく、そんな姿をアナは見ながら自分たちも急ぎましょうと進軍を開始するのであった。

 

一方、P基地では衛星兵器の攻撃と鉄血の事実上の壊滅にざわついていた、FMG-9始めとする情報部はフル稼働で情報収集を、基地は警戒態勢に移行、ユノとナガンも特殊戦術室に向かい待機、そのタイミングでナデシコに通信が入る、その相手は

 

《こちら国家安全局のアンジェリカ、聴こえてるかしら》

 

「こちらナデシコ、指揮官代理のキャロルだ。それよりも不味い状況になっているぞ、衛星兵器が打ち上がっていて、今しがた鉄血の本拠地が攻撃された」

 

間髪入れずにキャロルがそう告げれば舌打ちをし、それからこっちでも実は不味いことが分かってねと苦虫を噛み潰し多様な表情のままアンジェリカが上げてきた報告に今度はナガンの顔が驚愕に染まる。

 

《これは本当に今入った確かな情報なのだけど……カーターがヨゼフ・アルブレヒトの手の者によって暗殺されたわ、しかもご丁寧に死体まで私達にバレる形でね》

 

「なんじゃと!?っ、よもや今この状況は!」

 

《えぇ、完璧に後手に回ったわ。どうやらヨゼフは念入りに手を回してあったようで、カーターが暗殺され、それと同時に衛星兵器による鉄血の本拠地の攻撃、奴は衛星兵器の有用性と今自分がそのスイッチを握っていると知らしめて、更には正規軍内部で自分に手を出せる奴を脅し、軍を意のままにしようって魂胆でしょうね》

 

完璧にしてやられたと悔しそうに声を漏らすアンジェリカ、こうして動き出したということは自分たちの目的が今バレようと問題ない所まで計画を進めていたということに他ならない。だがまだ手が打てないわけではないとキャロルは思っている、それが今さっきランページゴーストを送った箇所、そこにまだ生きているはずのエルダーブレインだ。

 

「どういう理由かは知らないが、奴らはエルダーブレインを求めている、ならばそれを阻止できれば」

 

《こちら、イチイバル!これより戦闘を、キャアアアアア!?》

 

ノアの言葉が途中でかき消え、代わりに聴こえたのは彼女の悲鳴と明らかに一人ではない銃撃と爆撃の音。確かにキャロルの考え通りにエルダーブレインを回収できれば敵の目的を遅らせたかもしれない、だがそんな希望を、敵は簡単に揺らがしてきたのであった。




全てが変わる日の始まりである。

という訳で開幕早々ですがホットスタートです、何かもうブレーキがぶっ壊れてますねこれ

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