それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!! 作:焔薙
鉄血本拠地跡地を調査、その後ランページゴースト帰還、だが彼女達に休める時間はないとノアとアナは他の隊員に待機命令を出してから、特殊戦術室に向かい、入室した彼女達に先ずユノが出迎える。
「お疲れ様二人共、それとノア、大丈夫?」
「全部治癒した、それよりもだ、アイツ等は衛星兵器なんて何時上げたんだよ」
「あれだけのものを、誰にも悟られずに上げるなんて不可能の筈です、国家保安局がなにか掴んでたのではありませんか?」
二人の懸念はその国家保安局が裏切ったのではないかということ、でなければあんな派手なものを見逃すはずがないと。だが通信を繋いだままであり今の言葉も聞いていたアンジェリカは顔色一つも変えずに反論、曰く
《こっちでも全く掴んでないわ、誓っても良い》
「だが事実上がっている、それとも俺たちが本格的に動く前に既に上げてたとでも言うのか?」
《カーターが暗殺された所を見るとそれもあり得なくはないけどね……ねぇ、さっきの戦場での調査で何かしら分かったことはない?》
素直に話して良いのかよとノアが周りに目配せすれば、ナガンが頷く、どうやら彼女達も同じ懸念は浮かんでいたようで既にその辺りのやり取りも済まされ、その上でアンジェリカは白だと判断していたらしい。
なので二人もあの場の調査で分かったことを全て話していけば、途中でアンジェリカから
《待って、正規軍も巻き込まれていた?》
「あぁ、つっても分かるのはかろじて残ってた残骸からだけどな、その中から死体を見つけろ言われても無理だからな」
《そう……》
何か気になることがあったようなのだがそれをキャロルが聞く前に打ち切り、報告を続けてほしいと促されれば、とりあえず話していく。
その途中でもアンジェリカは通信の向こうで指示を飛ばしているのか、見える映像では何かの作業を止めずに続けている、そして報告が終われば
「これが現地で判明したこととなります、私からの補足を加えるのならば正規軍側に残骸に特別な物はなかったというところでしょうか」
「一般的兵力のみ、という事か。まぁそれでも鉄血からすれば脅威だろうがな」
「ねぇ、えっとその、ネーヒストちゃんはどんな感じだったの?会話はできたって言ってたけど」
ちゃん付けかよとノアが呆れたのは無理もないだろう、だが彼女のブレないその姿勢にナガンは軽く笑ってしまえば、特殊戦術室の空気も、そして不思議とアンジェリカの方の雰囲気も少しだけ軽いものになる。
どうやら全員が余裕を失い始めていたらしいのだが、ユノに救われたらしい。
「ねぇ、何で私笑われてるのかな」
「テメェで考えやがれ。で、ネーヒストだったな……正直分かんねぇ、でも希望は下手に持たないほうが良いと思うぞ」
「そっか……うん、そうだよね」
《本当にペルシカの娘にするの勿体ない娘ねってちょっとごめんなさい》
向こうで新たに情報でも入ったのかアンジェリカが一時的に席を外す、これでなにか良い情報でも入ればいいがなとナガンは思うのだがどうやらそうではなかった。
いや、もっと言えば更に彼女達を混乱させる情報が入ったと言うべきだろう、映像に戻ってきたアンジェリカは訳がわからないと呟いてから
《ヨゼフが、カーターに属していた者たちの粛清を始めたらしいわ》
「不思議ではなかろうて、やつと敵対してたのならば不安材料は潰すに越したことはなかろうて」
《ただ粛清してるだけならね、だけど奴は自分の元に降ろうしてるのも潰しているのよ》
彼女が言うにはカーターの存在は非常に大きく、もしその全てを粛清しようというのならばそれは正規軍を半ば半壊させるに近い行動だと、なのに向こうはそれを行っている。
考えられるとすれば、半壊させることが目的、もしくは
「カーターに味方するものはもう既に少なかった?」
「だとすれば余程長い間手回しを続けていたのだろう、しかもそれを敵にバレないように……」
《もしそうだとすればとんでもない人物ね》
彼女の言葉に全くじゃと答えるナガン、ともかく一度これで解散、国家保安局、それとP基地でもネクロノミコンを使用しての情報収集をしてくれとアンジェリカから頼まれ、そして翌日、彼女はこちらに来ると伝えてから通信が終わる。
その後は、保護したエルダーブレインとエージェントは整備室でヴァニラが面倒を、諜報部は情報収集を、他の基地の面々には警戒態勢を維持しつつ部隊は何時でも出撃できるようにと通達をしてから、持ち場へと戻っていく、まぁユノは
「という事で次に安全な医務室でゆっくりしてろと言われました」
「今日だけでも相当消耗してますし、あたくしも今日は一緒に居ますから」
「まぁ、大きな戦いになったらナデシコと接続すると考えるとそれが妥当でしょうね、後まだ検査の途中ですから動かないでくださいねノア」
「ぐっ、平気だっての……あぁ、分かった、分かったからそんな眼でアタシを見ないでくれクフェア!」
「もう、心配したんですからね」
二人のやり取りを眺めつつベッドに横になりながら、考えるのはネーヒストとアレスと名付けられた彼女達のこと、今何処で、どうしているのだろうと思いながら、P基地は忙しなく一日を終えていく。
カツンカツンカツンと靴音を立てながら立派な建物の廊下を歩くのは茶髪のセミロングの少女、体型を見れば誰が見ても子供とも言える彼女は扉に前に到着、それからノックをすれば返ってきたのは初老の男性の声、それを聞いてから
「失礼します。ネーヒスト、及びアレス1から4、只今帰還しました」
「では今回の作戦の報告を頼むよ」
いかにもな席に座っているのはヨゼフ・アルブレヒト、彼はネーヒストからの報告をただ黙って聞いているのだが、その時の空気はまるで孫の話を聞く祖父を感じさせる物だった。
「以上が今回の報告となります、申し訳ございませんマスター、貴方の指示を遂行できませんでした」
「いや、今回は挨拶みたいなものだから遂行できなくとも問題はない。それに君たち全員が生還という報告のほうが価値がある、他の個体は既に打ち上げ準備にある故に動けるのは君たち5人だけだからね、今日はもう休みたまえ、また指示があれば呼ぶよ」
「分かりましたマスター、では」
ペコリと頭を下げてからネーヒストは部屋を出ていく、それをヨゼフは見送ってから少しすればまた扉がノックされ、入ってきたのは一人の白髪の軍人らしい体型の男、ヨゼフは彼を見据えてから穏やかな笑みを浮かべてただ一言
「君がきちんと働いてくれて助かったよ……エゴール大尉」
「……」
「正直な話、君がカーターを裏切ってくれるとは思ってなかった、それは過去の過ちを償いたいからかな、それとも過去を消したいからかな?」
男、エゴールはヨゼフの言葉に何も答えない、だがそれは決して洗脳されているとかではないだろう。
だって、彼の目には確かな光があったのだから。
舞台は少しずつ整ってきてる、後は次の幕を上げる時間を待つだけかもしれない。
これもう(どう話を持っていけば)分かんねぇな?